『かなり』

干支に入れてよ猫

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コンビニにて

どうも、坂津です。

たまに利用する会社の近くのコンビニは、お昼時に周囲の会社から押し寄せる買い物客でごった返します。

レジに並んでいる長蛇の列のせいで陳列棚の商品が取れないような状態になります。

最後尾は店内最奥のドリンクコーナーにまで達し、2台あるレジはどちらも2人体制で会計とサッカー(商品の袋入れ)を分業して対応しています。

店員さんは可能な限りのMAX速度でやってくれてますし、お昼のタイミングならこの店がこうなることは、常連客なら分かっていること。

なので別段文句も言わずイライラもせずに大人しく並んでいます。

 

しかし、そうじゃないお客さんも紛れたりするのです。

 

少し年配の、まだお婆さんとは呼ばないくらい妙齢な女性客でした。

欲しい物を手に持って最後尾に並んだ私の前にいた彼女は、それはそれはイライラとした空気を纏っていたのです。

手には電池式の簡易充電器が握られていました。

買い物はそれ1つだけのようです。

腕組みをして片足でタンタンと床を鳴らしながら、口の中で何かモゴモゴ言ってる彼女。

初っ端から険呑なオーラを爆発させている感じで近寄りたくない感じです。

行列はゆっくりと、しかし確実に前の客を処理して短くなっていきます。

ですが彼女には、それで心が安らぐような余裕は無かったようです。

待ち時間の経過に比例して殺気立っていくのが感じられます。

 

そして、ようやくその女性の前のお客さんがレジへ向かったそのとき。

 

彼女はササッとそのお客さんの前に回り込み、レジ台の上に商品をドンと置きました。

そして耳障りな大声でこう言ったのです。

 

「私たったこれだけなんだから先に会計してよ!気が利かないわね!」

 

割って入られたお客さんはもちろん、店員さんも私も、周囲のお客さんもびっくりです。

まるでザ・ワールド。

一瞬時間が止まったように感じました。

しかしそこはそれ、店員さんもバイトとは言えマニュアルが存在します。

 

「お客様、大変申し訳ございませんが、レジは順番となっております。もうしばらくお待ちください」

 

そりゃそうだと、周囲の全員が心の中で頷いたのが分かりました。

大丈夫だよ店員さん、みんなアンタの味方だよ。

苛々おばさんはやたら大きな声で「チッ!」と舌打ちをして、私の前に戻ってきました。

なんだ、大人しく引き下がる人間性がまだ残っているのか。

良かった良かった。

と誰しもが思ったそのとき。

 

「ななチキをください。あとおでんも良いですか?」

 

苛々おばさんに割り込まれたお客さんが店員さんにホットスナック類のオーダーを始めました。

 

「たまごと~、ん~、あと大根と~・・・」

 

これが普段なら特に何ともない日常風景です。

しかしさっきの一悶着が記憶に新しいこのタイミング、なんと言うか、うん。

たぶん周囲のみんなが思ったんじゃないかな。

 

(割り込んだババァも大概だが、前の客も前の客で性格悪ィwww)

 

その間に隣のレジで順番待ちをしていた別のお客さんが一言。

 

「あの、お急ぎでしたらこちらにどうぞ?」

 

自分の順番を苛々おばさんに譲ってくれようと言うのです。

なんという神対応

その人は列を外れて最後尾に並び直そうとしたのですが、後ろに並んでいるお客さんたちから「いいよいいよ」「大丈夫だから」みたいな温かい言葉に支えられてその場で待機。

たかだか数秒の間に全米が泣く感動ヒューマンドラマが繰り広げられました。

そんな善のエネルギーに耐えきれなくなった闇世界の住人、苛々おばさん。

予想外の行動に出ました。

 

「もう良いわよ!こんなもの要らないから!」

 

簡易充電器をスナック菓子の棚に押し込んでからドカドカと床を鳴らしての退店。

ここでそれを買わなかったら、割り込んでまで買おうとした行動も、今まで並んでた時間も、

順番を譲ってくれたお客さんの善意も、すべてが完全に無駄です。

彼女は一体何を守ろうとしてあんな結論を導いたのでしょうか。

素直に買えば良かったのに。

 

結局、お店としては充電器1個分の売上損失ということになるのかもしれませんが、きっとそれは大量のおでんで相殺されていると思います。