『かなり』

すっかり夏。

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奇跡体験

どうも、坂津です。

お昼ごはんを食べにフラリと入った定食屋さんで、奇跡的な偶然を体験しました。

随分と混んでいた店内はカウンター席しか空いていませんでした。

その空席は2人組のお客さん同士が作るパーソナルスペースになっている谷間的な空間で、そこに座るのは若干の気まずさを伴いました。

しかし混雑時の飲食店など袖触れ合うのも通常運行と気を取り直し、私はその席に腰を下ろしました。

 

右客「じっくり時間をかけて準備しよう」

左客「それは焦り過ぎ。時間は必要だよ」

 

私は耳に入ってきた会話に「おや?」っと思いました。

左右別々の会話をしているハズなのに、私の両隣に位置する人が同じようなことを言ったのです。

 

右客「料理は下準備がすごく大切だから」

左客「相手に心の準備をさせなきゃダメ」

 

どうやら右側の二人組は料理について、左側の二人組は恋愛について話しているようでした。

 

右客「甘い味付けでも塩は必要だからね」

左客「駆け引きとして時には塩対応もね」

 

右客「温度が下がるときに味が染み込む」

左客「冷めた態度で気を引く手段もある」

 

右客「お酒を入れるだけで劇的に変わる」

左客「場合によってはお酒の力を借りる」

 

右客「味はもちろん食器の見栄えも大事」

左客「性格も大事だけどオシャレも重要」

 

別々の会話をしているのに、なぜか要所要所で内容が似通った発言のタイミングが合うのです。

それはこの位置に陣取っている私だけが味わえる奇跡の劇場でした。

 

右客「強い火力で一気に焼き上げるんだ」

左客「隙を見せたら多少強引でも一気に」

 

右客「でも焼き過ぎは厳禁。注意してね」

左客「でも拒否られたら即座に引くこと」

 

右客「タイミングを計って火からおろす」

左客「タイミングを見計らって家に招く」

 

あまりの面白さに昇天しそうでした。

私はどんな顔をして聞き入っていたのでしょうか。

そして最後の奇跡が起きました。

 

右客「煮詰まらないように気をつけてね」

左客「煮詰まらないように気をつけてね」

 

一語一句違わない言葉が左右から、少しの時間差で放たれたのです。

私の興奮は最高潮でした。

 

と、ここで私は、私がどんな顔でこの奇跡の劇場を楽しんでいるのか思い知ることになりました。

そしてこの奇跡の劇場を楽しんでいるのが私だけでないことも思い知りました。

カウンターの向こうで店員さんがすんごいキモいニヤニヤ顔でこちらを見ていたのです。

 

私と店員さんは目が合いました。

視線だけで頷き合い、心と心が通じ合いました。

こんな奇跡が在るんだなぁ。