『かなり』

本当に怖いのは『レッテル』それに抗うのも、受け入れるのも、苦難。

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20数年前に録音したカセットテープが出てきた

どうも、坂津です。

私は高校時代、演劇部に所属しておりました。

演劇部時代のざっくりした流れはコチラ。

演劇部の開場

演劇部の開演

演劇部の第一幕

演劇部の第二幕

演劇部の閉幕

 

で、当時の私たちが夢中でやっていた遊びがありまして。

それが『ラジオドラマ収録』です。

要するにラジカセで声を録音するだけなのですが、これが完全アドリブなのです。

タイトルと配役とスタート時の状況だけを決め、録音ボタンを押したらあとはノンストップでアドリブの掛け合いを続けるのです。

 

ルールは簡単。

先に言ったモン勝ちで設定が決まる。

既に決定された設定を否定するのは原則としてNG。

羞恥心を廃棄してから臨む。

60分以内(120分テープの片面)に、タイトルに辿り着く。

これだけ。

 

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ちょっと前に実家で物置をごそごそしてたら、そのときのテープが数本出てきました。

怖いもの見たさ、いや聞きたさで、カセットテープが再生できるコンポを引っ張り出し、どうにか起動することができました。

恐る恐る再生すると、懐かしい声が耳に響きました。

 

 

■タイトル

『秘密のエルボー』

■登場人物

旦那様

ご夫人

召使い

行商人

ラクダ

■場面設定

何かの目的で砂漠を歩く夫婦と召使いがラクダに乗った行商人と出逢う。

 

 

ご夫人「ねぇあなた、わたくし喉が渇きましたわ」

旦那様「そうだな。おい、水を出せ」

召使い「ありません」

旦那様「はぁっ!?」

ご夫人「無いってどういうコトよ!」

召使い「さっき飲んだので最後です」

ご夫人「さっき!?それっていつよ!私は飲んでないわ!」

召使い「私がさっき飲んだんです」

旦那様「お前かよ!」

召使い「喉が渇いていたもので」

ご夫人「もういいわ。お金をあげるからお水を買ってきてちょうだい」

旦那様「しかしお前、この辺に店なんて無いぞ?」

ご夫人「私は一言もこの辺で、とは言ってませんわ」

召使い「少なくとも半日は歩きませんと店はありませんよ?」

ご夫人「お前がお言いでないよこのロクデナシ!」

召使い「あれ?」

旦那様「どうかしたのか?」

召使い「あちらをご覧ください旦那様。行商人です」

旦那様「おお!なんという幸運か!お前、早く言って呼び止めてくるんだ!」

召使い「ですってよ奥様」

ご夫人「行くのはお前だよこのスットコドッコイ!」

召使い「へ~い」

ご夫人「ねぇあなた!あの召使い今すぐクビにしてちょうだい!」

旦那様「まぁそう言うなよ。あいつとは長い付き合いじゃないか」

ご夫人「いいえ!今日という今日は堪忍袋が燃え尽きましたわ!」

旦那様「そ、そうか・・・ではあいつが帰ってきたら伝えようかな」

召使い「おお~い」

行商人「まいどっ」

召使い「おい、水を売ってくれ」

行商人「そいつぁできねぇ相談だな」

召使い「は?」

行商人「その売るための水を、これから汲みに行くところさ」

召使い「なんだって。どこまで行く気だ?」

行商人「ここからラクダで丸一日はかかるオアシスさ」

召使い「なんてこった」

行商人「ま、だから諦めてくれ」

召使い「そうはいかん。このまま手ぶらで帰ったら俺が怒られる」

行商人「そんなこたぁこっちには関係ない」

召使い「いや、頼むからお前の口から水は無いと言ってくれ」

行商人「そりゃ構わんが」

召使い「と言う訳で旦那様、水は無いんだそうで」

行商人「そういうワケだから、諦めてくんな」

旦那様「しかしお前、ラクダで丸一日の距離をこれから行くんだろう?」

行商人「そうでさぁ」

ご夫人「だったらお水くらい持っているでしょう?」

行商人「これは俺が飲む水だ。売りモンじゃねぇんだよ」

旦那様「そうか、そうやって値段を吊り上げる気か!」

行商人「そんなこたぁ無い。いくら積まれたってこの水は売れねぇよ」

召使い「ではこうしましょう。奥様を差し上げますので水と交換してください」

ご夫人「はっ!?」

行商人「美女なら考えたが、コイツぁ要らねえな」

ご夫人「はっ!?」

旦那様「頼むから貰ってくれんか?」

ご夫人「はっ!?」

ラクダ「この状況における水の価値との比較ですから、そんなに気にすることないですよ奥様」

ご夫人「はっ!?」

召使い「お前しゃべれんのかよ!」

旦那様「ラクダお前しゃべるのか!」

行商人「お前は黙ってろラクダ!」

ご夫人「全員そこに正座しろ!」

ラクダ「えっ?私もですか?」

ご夫人「いいかてめぇら、コレが何か分かるな?フリントロック2バレルだ!死にてぇやつから前へ出ろ!」 

旦那様「お、お前・・・いつの間にそんなものを」

召使い「奥様落ち着いてください」

行商人「良く見たらあんた良い女じゃないか」

ラクダ「あの、私の正座、これで合ってます?」

ご夫人「黙れクソどもが!まず旦那ぁ!てめぇさっき何て言った!?」

旦那様「頼むから水を譲ってくれと言った」

ご夫人「あら?そうでしたの?私ったらごめんなさいっテヘ☆」

召使い「あー!旦那様ずっりー!」

旦那様「うるさい!この世は知恵と金だ!」

ご夫人「次はてめぇだ召使い!さっき何て言った!?」

召使い「奥様を差し上げるので水をくれと」

旦那様「そこは上手く嘘つこうよ!」

行商人「お前マジ不器用だな!」

召使い「私にはそれだけの価値が、奥様にあると考えておりましたので」

ご夫人「まぁ♪なるほど確かにそうね。ありがとう」

旦那様「おいお前やるなぁ」

召使い「へっへっへ。この世は機転と度胸ですぜ」

ご夫人「じゃあやっぱ死ぬのはてめぇか行商人!」

行商人「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ奥さん!じゃあナニ?俺は水とあんたを交換しても良いって言うのか?」

ご夫人「そうよ!水と私を交換するか、今ここで死ぬか、どっちなの!?」

ラクダ「あの、私そろそろ足がしびれてきたんですけど」

召使い「まだ正座してたのか」

行商人「仕方ない。死ぬよりマシか。いいぜ、ほら、水だ」

旦那様「やったー!」

召使い「ひゃっほー!」

行商人「じゃあ奥さん、これからあんたは俺のものだぜ」

ご夫人「仕方ありませんわね」

ラクダ「それは人としてどうかと思いますよ?」

行商人「黙れ動物!」

ラクダ「ひどい!」

召使い「じゃあ水も手に入ったことだし、帰りましょうか旦那様」

旦那様「ああ、妻とも縁が切れたことだし、帰るか」

行商人「ちょっと待った」

旦那様「ん?」

行商人「おいお前、名前はなんて言うんだい?」

ご夫人「エリスよ」

行商人「よしエリス、こいつらを撃ち殺せ」

旦那様「はっ!?」

召使い「ちょっ!えっ!?」

エリス「なぁるほど。ここでこいつらを殺れば水も失わずに済む。街に帰れば保険金も遺産も私のものだわ!」

行商人「おいおい、俺たちの、だろ?」

エリス「あらごめんなさい。うっかりしてたわオホホホ」

ラクダ「私の取り分も忘れないでくださいね」

行商人「うるせぇぞケモノ!」

エリス「そうよ!四足歩行にあげるお金なんて無いわ!」

ラクダ「ほほぅ・・・この砂漠で私に盾突くと言うのだな?」

行商人「え?」

エリス「な、なによ急に怖い声出して」

旦那様「うわぁ!ラ、ラクダが、巨大化していく!」

召使い「しかも変形している!せ、背中のコブが5つもあるぞ!」

ラクダ「え、私そんな姿になってるんですか?」

旦那様「なってるよ!怖い!」

ラクダ「浅ましい人間どもよ!その欲にまみれた面の皮が干からびるまでこの砂漠をさまよい続けるが良い!砂漠でラクダを敵に回すことがどれだけ愚かなことか、思い知れ!」

行商人「エリス!こいつを撃ち殺せぇ!」

ラクダ「遅い!ラクダパンチ!」

エリス「ああ!銃が!」

ラクダ「追撃のラクダキック!」

エリス「ぐぼあっ!」

ラクダ「あ、奥様に当たるのね」

行商人「俺かと思ったけど助かったぁ・・・」

ラクダ「安心するのは早いぞラクダエルボー!」

行商人「ぎゃあああ!」

ラクダ「悪の栄えたためし無し」

召使い「ラクダ殿、あなたのエルボーとは・・・どの部分なのですか?」

旦那様「ワシもちょっと不思議だった」

ラクダ「ここ、ここだよ」

召使い「あ~、そこ!そこがエルボーなのですか!」

旦那様「へぇー!初めて知った!すげぇ!ラクダのエルボー!」

ラクダ「皆には秘密にしといてくださいね」

 

 

ちなみに、私はラクダ役でした。