『かなり』

干支に入れてよ猫

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反省の夜

どうも、坂津です。

 

夜、家族みんなで入浴後、妻が息子を寝かしつけている間に私は夕食を済ませます。

そして食器洗いやら明日のお弁当の用意やらをし、洗濯機がピーピー鳴ったら洗濯物を干します。

 

が、この日は違いました。

 

夕食を済ませ、食器を洗い終え、弁当箱にご飯を詰めているときです。

どこからともなくバシャバシャと水が流れる音が聞こえます。

耳を澄ますと、どうやらそれは脱衣所のあたり。

嫌な予感がしてすぐさま現場に向かい、愕然としました。

私たち家族の衣類やタオルなどを一生懸命に洗ってくれているはずの洗濯機から、なぜか大量の水が噴き出し溢れています。

脱衣所は溜め池のよう。

洗濯機を緊急停止し、とにかくまずは池状態の脱衣所をどうにかしようと試みました。

このままでは廊下にまで水が流れ出し、河川を形成してしまいます。

 

私は戸棚から普段使っていないバスタオルを取り出し、池の中に放り込みました。

そして池の向こう側にある浴室の扉に手を伸ばして開き、たっぷたぷに潤ったバスタオルを投げ入れます。

バスタオル2枚とフェイスタオル3枚を投入し、ようやく私が足を踏み入れても溢れなさそうなくらいに水位が下がりました。

そのまま浴室に進入した私は、さっき投げ入れたタオルたちを絞り、再度池に投入します。

この作業を延々と繰り返し、やっと『水が溜まっている状態』から『床に水がこぼれている状態』くらいまで水が減りました。

そしてこの惨事の原因は、洗濯機の排水口の詰まりだろうと踏んだ私は、糸くずなどが溜まる排水フィルターが設置されている場所を開きました。

 

すると。

 

ザバァーーーーー

 

元の木阿弥とはこのことか。

まだ洗濯機内に残っていた水が全部流れ出てきました。

タオルで吸って絞って吸って絞ってを繰り返してようやく排水が終わった脱衣所が、また池になりました。

私は考えるのをやめ、一心不乱にタオル吸水&絞りを継続しました。

ここで後悔や自責の念に囚われてしまっては心が折れてしまいます。

思考を放棄して無心で作業に集中するのです。

 

ふと、白いタオルに心当たりの無い染みが付いているのに気が付きました。

赤い染み。

よく見るとタオルのところどころに付着し、水で滲んでいます。

ハッとした私が自分の指を確認すると、マメができて潰れたような傷がありました。

よく考えれば入浴後に食器洗いをした直後の手ですから、皮膚はふやふや状態だったのです。

そこへエンドレスタオル絞りをやったもんだから、私の脆弱な皮はいとも簡単に破れてしまったのでした。

小さな傷というのは、認識するまでは特に気にならないのに、いざ目で確認してしまうと痛みを鮮明に感じてしまうものです。

今まで淡々と続けていた作業が、途端に傷を庇うぎこちない動きになってしまいます。

 

ここで私は思い出しました。

これと同じ状況に陥ったことがあることを。

 

あれは大学生の頃、一人暮らしをしていたアパートで。

屋根の上に設置された貯水タンクの水漏れか何かで、私の部屋が水浸しになってしまったときのこと。

あのときも一心不乱に雑巾で水を吸って&絞ってを繰り返し、そして手が血まみれになったのでした。

そしてその時『今後このようなことがあったら無心で作業するのではなく、手に当たる部分を少しずつ変えながら皮膚に負担をかけず作業しよう』と心に決めたのです。

それなのに、そのことをすっかり忘れてまた思考放棄作業をしてしまった私。

過去の教訓をまったく活かせていないことを反省するとともに、次こそは同じ過ちを繰り返すまいと胸に刻みつつ、指に絆創膏を巻き付けた23時でした。