『かなり』

干支に入れてよ猫

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広島のかたきを香川で討つ

どうも、坂津です。

子供の頃、夏休みと言えば爺ちゃん婆ちゃんの家で1ヵ月まるまる過ごすような時期がありました。

休みの始まりと共に両親に連れて来られ、終わりごろに迎えが来るという感じです。

いとこや親戚のおじさんおばさんも入れ替わり立ち替わりやってきて、お仏壇にお供えをしてお線香をあげて、それからお墓参りもしてましたね。

で、そのお墓なんですけど、お盆の時期には『先端にやたらと派手な飾りがついた棒』を立てる風習がありました。

墓地なんていつもは蒟蒻色ばっかりでそんなに色彩が豊かじゃ無い場所なのに、この時期になるとめっちゃ極彩色になるのが面白かったのを覚えています。

なんだかお祭りのような雰囲気になって気分が高揚したなぁ。

広島 盆燈籠』で検索していただければどんだけ派手な光景か分かると思います。

今ではそれが盆燈籠ぼんとうろうという名で、安芸の国に伝わるお供え物だと分かります。

しかし当時は小学校の低学年くらい。

それが地方独特の風習であるという知識などありません。

だから、珍しく田舎へ行かなかった夏休み、私はショックを受けたのでした。

 

両親に「じゃあお墓参りに行こうか」と言われました。

坂津家のお墓がある墓地に行くのはめっちゃ久しぶりです。

そして訪れたそこは、お供えの花々こそ色とりどりではあるものの、例の超派手な燈籠は見当たりません。

 

私「あれ?赤いヒラヒラのやつは?」

父「ん?何のこと?赤いヒラヒラ?」

母「もしかして、飾りの付いた棒?」

私「そう!赤いやつ!何で無いの?」

 

想像していた光景が見られないというのはそれなりにストレスです。

しかもそれが『華々しくカラフルな光景』⇒『墓地墓地しく寂しい光景』というギャップを伴っているのですから、それはもう心的ダメージは深刻です。

 

私「嫌だ!こんなのお墓じゃない!」

 

両親は仕方なく、駄々をこねる私を車に待機させ、手早くお墓参りを済ませました。

このときもしかしたら両親は私に、盆燈籠が広島でしか見られないものであるという説明をしてくれたのかも知れませんが、ちっとも覚えていません。

きっと不貞腐れていたので耳に入らなかったのでしょう。

そのため、夏休み明けにまた、ショックを受けることになるのです。

 

私「お墓に赤い飾りが無かったんだ」

友「は?なにそれ赤い飾り?呪い?」

私「違うよ!棒のやつ!長いやつ!」

友「お墓にそんなのねーし!変なの」

 

ご丁寧に絵まで描いて説明したというのに盆燈籠の存在が全く伝わらないという苛立ち。

今でこそ情報インフラが発達してるんで、きっとこんな状況になったら小学生でもググってみるんでしょうけど、当然ながら1990年前後の小学生がそんなこと出来るワケもありません。

 

そして時代は流れ大学生になった私。

香川県で一人暮らしをすることになった最初の夏休み、運命の出会いを果たします。

可能な限りギリギリまでバイトを入れていた当時、どこかに遊びに行くというようなこともなく、下宿先のアパートとバイト先のコンビニを往復する日々。

友人たちも帰省したり旅行したりしています。

そんな折、シフトの都合でぽっかり1日休みになったタイミングで、特に目的も無くドライブをしてみたのです。

そこで目に入った山間の墓地。

私は目を疑いました。

広島の爺ちゃん婆ちゃん家でしか見たことなかった盆燈籠が、お墓に供えられていたのです。

色や仕様は違いこそすれ、間違いなく盆燈籠でした。

 

あとで調べたら、広島特有の文化である盆燈籠が香川県の一部でも使われていることが分かりました。

思ってもみなかった再会に、ものすごいノスタルジーを覚えたのは言うまでもありません。