『かなり』

ハロウィンとクリスマスの移行期

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立場は変わる

どうも、坂津です。

私はよく『可能性がゼロでは無い妄想』をします。

買い物中に(もしこの店が武装グループに占拠さたら)とか、仕事中に(もしいま直下型の大地震が起きたら)とか。

普段からこのような妄想鍛錬もうそうたんれんを欠かさない私は、対人においても同様の妄想を繰り広げます。

会社の人に(もしこの人が親戚になったら)とか、取引先の人に(もしこの人が上司になったら)とか。

ポイントは、決して『可能性がゼロでは無い』というところです。

この妄想のお陰で私は人に強く出られないところがあるのですが、それはそれで良いと思っています。

 

ちょっと想像してみてくださいよ。

 

何らかの過失や非のある相手を口汚く罵倒したとしましょう。

後日病気なんかで入院したとき看護師さんがその時の相手だったら怖くないですか?

黙って点滴とか受けられます?

 

部下に対して過剰に苛烈に叱責したとしましょう。

その部下がいつの間にか出世して自分の上司になったらどうします?

素直に指示に従えます?

 

客の立場で激おこクレームを入れたとしましょう。

結婚を申し込みに行った先で彼女のお父さんがその時の店員さんだったら最悪じゃないです?

娘さんをくださいって言えます?

 

人が人に対して何らかのアクションを起こすとき、必ずお互いの『立場』というものが言動に影響を与えます。

特に『自分は悪くない』とか『相手に非がある』なんて場合は顕著です。

しかし、そこで熱くならずに深呼吸して、少し冷静になってみてください。

今の立場は絶対だろうか?不変だろうか?恒常だろうか?

 

この想像が全くできないと、手痛いしっぺ返しを食らうこともあるんです。

私が前職で経験したエピソードをご紹介しましょう。

 

私が勤めていた会社の上司と、その下請けの会社に居た男の子の話です。

 

今では『協力会社』なんて言い回しが好まれていますが、呼び名が変わっただけで実態は何も変わらないという企業も多いと思います。

下請け会社というのは基本的に、営業よりも実務にステータスを振った会社であることが多く、自分で仕事を獲得するというよりは元請け会社から仕事を回してもらうという色が強いです。

よって、下請け会社と元請け会社のパワーバランスは対等ではなく、仕事を回してやっている元請け会社の方が当然優位だという考えの人も少なくありません。

ただ実のところ元請け会社は往々にして、自社でこなせる以上の仕事を獲得しているので、下請け会社が協力してくれないと非常に困るのですが、それなのに下請け会社の重要性はなかなか理解されないもので。

 

さて、昔の上司の話ですが、彼は非常に仕事のデキる男でした。

ただしそれは営業という個人プレーにおいてのみであり、後輩に仕事を教えたり、部下に指示を出したりするのはすこぶる不得意でした。

しかし不幸なことに本人にその自覚は無く「なんで言った通りにできないんだ」が口癖になっていました。

いわゆる天才肌で、出来ない人の気持ちが分からないというやつです。

しかも指示内容も「そこは適当にやっといて」とか「あとは臨機応変に」みたいなアバウトさであり、親切さも丁寧さも全くありませんでした。

それでも人柄が良ければ「まぁあの人は住む世界が違うから」で済ませられていたのですが、なんと病的なまでに性格の悪い人だったのです。

 

人のミスを大声で指摘して公開処刑するし、注文にならなかったお客さんの悪口を平気で言うし、そして、下請け会社の人に対して非人道的な言動を繰り広げるし。

 

「お客様の為なんだからさ、そのくらい融通できるでしょ?」

「下請けに休みなんて要らないよね?」

「寝ずにやれば間に合うんじゃないの?」

 

詳細は割愛しますが、まぁ本当にヒドかったんです。

で、この上司からよく標的にされてたのが、下請け会社で窓口業務をやっていた男の子。

元請けであるうちの会社との連絡は全てこの男の子を通して行われるので、上司からの暴言を受け止めるのもその子の役目になっていました。

 

時間は飛んで1年後。

 

「は?何?あいつ辞めちゃったの?使えないなぁ」

 

例の上司は相変わらずでした。

しかし数日後、事態は急変します。

 

「おいっ!せっかく獲れた受注なのに、出来ないって何だよ!」

 

上司の怒声が響きます。

そもそもがキャパの奪い合いである繁忙期に、自分の売上欲しさで無謀な受注をしてしまった上司。

いつものように下請け会社に無理を言えばなんとかなると高を括っていたのです。

しかし付き合いのある全下請け会社も既に手一杯の状態で、どこもこれ以上の受注はできません。

とにかく手当たり次第に請け負ってくれる会社を探しますが、業界全体が忙しいこの時期に普段の付き合いが無い新規の案件なんて、やってくれるところはありません。

途方に暮れた上司は仕方なく事情をお客様に説明。

すると、責任問題を追及するためにお客様が来社されることになりました。

経営者の同席も求められています。

上司は渋々社長に相談し、とにかく火消しに努めることに。

 

で、お待たせしました。

例の男の子の登場です。

なんと、お客様として来社したのは、下請け会社で窓口役だった男の子。

転職先が大口のお客様の会社だったようです。

この時の上司の顔はご想像の通りです。

 

ただ、想像に反していたのは男の子の方。

私は「ああ、この子すげぇな」と素直に感動しました。

 

「上司さん、あなたが常にお客様第一で頑張ってらっしゃるのは重々承知しています。だから今回もあなたに注文を出しました。しかし、我々が購入したいのは『正規の商品』です。決して『多くの犠牲を払った血まみれの商品』じゃないんです。我々はあなたと共犯にはなりたくありません。ですから、今回の注文は無かったことにしてください」

 

的なことをサラッと言ったんです。

簡単にパーテーションで仕切られただけの応接で交わされる会話は事務所に筒抜け。

私を含めて全員が小さくガッツポーズをしました。

本来であれば発注した商品を用意できないという状況は、莫大なペナルティを課せられても文句が言えない状態です。

しかし男の子は『注文を無かったことに』してくれました。

つまり責任の追及も賠償も無いということです。

 

会社としては大喜びな結果です。

注文を納品できないペナルティ分を損害賠償しなければならない状況から一転、無罪放免になったわけですから。

しかし上司にとってみればこれは暗に『莫大な貸し』を受け取った状態です。

面目もプライドも完膚無きまでに木端微塵でしょう。

男の子は帰り際に「今後とも末長くよろしくお願いします」と言いました。

 

しばらくして私もこの会社を辞めてしまったので、上司が今どうしているのかとか、あの男の子がどうなっているのかは分かりません。

私は「もしこの人が◇◇になったら」という妄想をやめることはありません。