『かなり』

すっかり夏。

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自分が悪くないときほど謝罪は効果的

どうも、坂津です。

とても不条理で理不尽な怒りをぶつけられたことがあります。

仕事上でお付き合いのあるお客様なのですが、経緯はこんな感じです。

 

01.『こんなイメージのものを作りたい』という相談を受ける。

02.製造可能であることを確認し、見積りを提出。

03.『実はいつまでに欲しいんだけど間に合うかな』と相談される。

04.かなり厳しい納期だけど頑張るので正式な発注が欲しいと返答。

05.応答無し。

06.納期的にもうギリギリなので製造用のデータ入稿を催促。

07.応答無し。

08.メールじゃ埒が明かないと思い電話。

09.折り返しますと言われたまま折り返されず。

10.念のため携帯にショートメールも送っておく。

11.念のためSkypeのチャットも送っておく。

12.音信不通。

 

で、しばらくしてメールチェックをしていたら、そのお客様からメールが入っていました。

受信は前日の夜中、つまり、わずか数時間前。

 

件名:例の件の進捗を教えてください

本文:かなり納期がタイトな案件ですので定期的に進捗報告をください!

 

狐に包まれ・・・じゃない、つままれたような気持ちをぐっと抑え、考えます。

 

私としては進捗も何も、始ってすらいない案件です。

しかしこのメールから想像するに、お客様の中では進行中ということになっています。

さらに本文の語尾に『!』が付いていることから察するに、若干の怒気が含まれているようにも思えます。

 

ですが、私にはひとつの有力な仮説がありました。

 

複数の会社に見積り依頼をしていて、ウチより安いところが出てきたからそっちで進めているんだろうと。

お互いに商売でやっていることですから、そりゃそーゆーコトも日常茶飯事です。

それは別に良いんです。

ただ、ウチに発注しないという意思表示はして欲しかったなぁとは思いますが。

 

なのでこのメールは恐らく、別の会社の方に送ろうとしたものを間違えて私のアドレスに送っちゃったんじゃないかと考えたのです。

しかしそうなると、本来届くべき相手にメールが届いていない可能性が大きくなります。

「さっきのメール間違えちゃったテヘ☆」みたいなメールは届いていませんし、送信先を間違えていることに気付いていないような気がします。

間違えてますよ、と返信するだけでも良かったのですが、なんだか切羽詰まっているような感じもしましたので、とりあえず電話をしてみることにしました。

 

そこで私は自分の耳を疑うのでした。

聞き間違いの容疑で現行犯逮捕された耳は「違う俺じゃない」と繰り返しましたが、それでも耳を疑わざるを得ないような言葉でした。

 

坂津「昨夜私のアドレスにメールが届いておりまして」

お客「あの案件どうなってます!?間に合います!?」

坂津「おや?結局別の業者さんに発注されたのでは?」

お客「何言ってんの坂津さんにお願いしたでしょ!?」

坂津「ッ!・・・いいえ、ご発注は頂いておりません」

 

何かがおかしい。

とりあえず無実だった耳を保釈しつつ脳をフル回転させます。

 

お客「はっ?なにそれ!じゃあ作って無いってこと?」

坂津「左様です。製造用データも頂いておりませんし」

お客「ちょっと待って納期は?今からで間に合うの?」

坂津「当初ご希望されていた期日は到底無理でしょう」

お客「ふざけんなよマジで俺ちゃんと発注したでしょ」

坂津「えっ・・・いいえ、頂いておりませんが・・・」

 

会話と同時に急きょ行われた脳内坂津会議(小さな坂津が多方面から色々と意見を言い合って状況を整理し結論を出すための会議)の結果、恐らくこのお客様は自分の過失を私に転嫁しようとしているのではないかと推理しました。

発注自体を忘れていたとか、別の業者に依頼したものの不備があったとか、何らかのミスによって窮地に立たされているのだろうと忖度したのです。

 

お客「『間に合わない』が許される案件じゃねーぞ!」

坂津「分かりました。ともかく今すぐ御社に伺います」

 

私はそれだけ言うと、をまとめて先方の会社へ向かいました。

 

会社に着くと破裂寸前の水風船のようなお客様が待ち構えていました。

商談室に通される前に、私はある提案をしました。

 

それは『こちらの非を認め、正式に謝罪がしたいので、貴方の上司にも同席してもらいたい』というものでした。

 

お客様はそれを了承し、この件に関わりのある上司を呼んでくれました。

自分の首を絞めることになるとも知らず。

 

坂津「このたびは、誠に申し訳ございませんでした!」

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上司「ちょっと坂津さん!?頭を上げてください!!」

 

私の『必殺☆慇懃無礼土下座フェイクごめんネ』が炸裂しました。

予想通り、上司は慌てています。

 

恐らくお客様は現状の緊急事態をまだ誰にも報告していないだろうと推理し、同席させられている上司も詳細を知らずに呼ばれたに違いないと仮定。

つまり上司には怒る理由も謝られる理由も無い状態なので、そこでいきなりインパクトのある態度を見せると『え?何?とりあえず詳細が知りたいんだけど?』となること請け合い。

 

上司「とにかく頭を上げて、詳しく聞かせてください」

お客「坂津さん、納期が間に合わないって言うんです」

上司「え?それは困るな・・・どういうことですか?」

お客「発注したのに製造を始めてなかったんですって」

上司「君は黙っていなさい。坂津さん、本当ですか?」

 

計画通り。

上司は私の口から説明を求めました。

土下座には『まぁ何もそこまで・・・とにかく、何があったか話してごらん?』という気持ちにさせる効果があるのです。

今回のように事態の全容を知らない第三者の場合は特にです。

 

坂津「では、失礼して。まずお客様からこの件についてのを頂いたのが○月○日で、ご希望の納期が○日でした。すぐにでもご発注を頂かなければ難しい状況でしたのでそのようにお伝えしたのですが、恐らくは私の伝え方に問題があったのでしょうか、ご注文ということにはなりませんでした。しかし納期に間に合わないことだけは避けようと再三に渡りご連絡を差し上げたのですがお客様には伝わらず。そこで私がお客様では無く、御社の別のどなたかにご連絡を差し上げていればこのような事態は避けられたかも知れないものを、その手段を講じなかった私の責任は大きいと思っています。とにかく、まずはこのような事態になってしまったこと、改めてお詫び申し上げます。しかし、この案件の納期が間に合わないということは弊社でも御社でもなく、御社のお客様に多大なご迷惑がかかってしまうことになります。それだけは何としても避けなければなりませんので、あらゆる手段を使って納期は必ず間に合わせます。当然ながら製造各方面に無理を言いますので、当初のお見積り通りの金額では到底収まらないでしょうが、それは今は度外視してとにかく、製品を納期までに納品することだけを最優先に考えましょう。事態は急を要しますので、まずは取り急ぎ製造用のデータを頂けませんか?」

 

私は私がお客様に送ったメールやチャットなどをプリントアウトしたものと、裏技を使って納期を間に合わせた場合の概算金額を記した書面を机に並べながら話しました。

 

製品の製造に必須であるデータすら送っていなかった事実が判明し、彼は青ざめていましたが、そんなこと私には関係ありません。

上司の方とその場で話を進め、結果的に余分にかかってしまう金額は全て先方が負担することになりました。

もちろん『いえ、ご説明させて頂いた通り私にも落ち度がありましたので、出来る限り弊社の方でもギリギリの金額を』と付け加えたのは言うまでもありません。

 

自身に非があるときに謝罪するのは当然ですが、まるで非が無いと自分で思っている場合でも、どこかに何かの落ち度が無かったかを無理やり探し、そこを謝罪することで自分に有利な状況を作ることもできるんですよというお話でした。