『かなり』

ハロウィンとクリスマスの移行期

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キモ試しの結果

どうも、坂津です。

 

みなさんはキモ試しってやったことありますか?

そういう言葉があることは知っていても、実際にやってみたことがある方は少ないかもしれませんね。

これは私が大学時代に実際に体験したキモ試しのお話です。

 

私は今もオタクですが、当時は手の施しようが無いオタクでした。

そんな私と比肩する友人、いや、更に輪をかけたオタクたちと共に、キモ試しは行われました。

 

その日、まず私の部屋に集合したオタクどもは、夜になるまでテーブルトークで時間を潰します。

あの頃は毎日のようにファンタジー世界で冒険してましたから、よくよく考えれば隣の住人には頭がオカシイ奴らと思われてたかもしれませんねぇ。

無駄に張った声で「フハハハ!ついに手に入れたぞ!これで我が野望はついに成就する!」とか、野太い野郎の声で「きゃははっ☆あたしの魔法が避けられるもんですかっ」とか、そんな常軌を逸したセリフが一晩中聞こえてくるんですから。

 

さて、しかしこの日のメインはテーブルトークではありません。

あくまでもキモ試し。

日が暮れたのを見計らい私たちは装備を整えました。

 

チェックのシャツは第3ボタンまで開けてズボンにイン。

開いたシャツから垣間見えるTシャツには桃色髪の女の子。

ややサイズの大きいGパンをハイウェスト気味に引き上げる。

生地が見えなくなるほど缶バッヂをつけたデイバッグを背負う。

ペイズリー柄もしくはカモフラ柄のバンダナを頭部に巻き付ける。

謎の紙筒が2~3本はみ出しているトートバッグを両手に装備する。

 

さぁ準備は完了です。

 

この日揃ったのは、私を含めて4人のオタク。

中身は完全なる末期のオタクですが、外見からもそれと分かるようにきちんと正装で出撃です。

 

向かった先は近所のファミレスでした。

 

店員の女の子がお水を持ってきてくれたところから、ミッションは開始されました。

 

先鋒せんぽうガリガリに痩せたA君。

トートバッグからサッと紙筒を取り出すと、これ見よがしに広げて自慢を始めます。

 

「初回限定が入手できるとはデュフフwww」

 

彼が御開帳したのはエロゲのポスターでした。

構図のほぼ大半が『上気して赤みが差した肌色で構成されいる』という目に優しいデザインです。

私は内心「おいおいしょぱなから猛攻だな」と舌を巻きました。

そして店員の女の子の反応をチラ見します。

 

しかし。

 

「ご注文がお決まりになりましたらボタンでお知らせください」

 

あくまで業務的。

淡々とした口調と態度が崩れることはありません。

手強い相手とは思っていましたが、しかしあのポスターを見て眉ひとつ動かさないとは、なんとも豪胆です。

 

次鋒じほうは太ったB君。

彼はデイバッグをもぞもぞと探り、店員の女の子がオーダーを聞きに来るタイミングに合わせて中身を取り出しました。

 

「このディティールwww原型師テラ神www」

 

彼がテーブルの上に鎮座させたのはフィギュアでした。

その躍動感あふれる立体物は、それが硬質樹脂であることを忘れさせるような肌の温かみを感じる塗装で、またその肌を隠す僅かな布地部分も、息を吹きかければめくれてしまいそうな柔らかな質感が再現されています。

私は内心「これはさすがにドン引きだろう?」と思いました。

そして店員の女の子の反応をチラ見します。

 

しかし。

 

「フライドポテトとドリンクバーが4つですね」

 

あくまで事務的。

効率だけを追い求めたテキパキスタイルが崩れることはありません。

正直、フィギュアを持ち上げて下方から覗き見上げているB君の姿にも全く表情を崩さないなんて想定外にも程があります。

 

中堅はロン毛の私。

私は店員の女の子がフライドポテトを持ってくるまでの間に準備を進めていました。

スケッチブックを広げ、そこに推しキャラを描くのです。

 

「73cmだったらこれくらいですぞコポォwww」

 

フライドポテトをテーブルに置く際、邪魔になる位置にスケッチブックがあるわけですから、必ず中身を見るはずです。

私の貧乳に対するこだわりがこれでもかと詰め込まれ描き込まれ刺し穿うがち突き穿うがたれた大自然のおしおき巫女を見るが良い!

私は内心「これって通報されてもおかしくないんじゃ?」と若干の後悔を覚えました。

そして店員の女の子の反応をチラ見します。

 

しかし。

 

「お待たせしました」

 

あくまで無反応。

まるでそこに私たちなど居ないかのような自然な振る舞い。

これなら嫌がってくれた方が何倍もマシだと思ってしまうほど激しい無視。

どれだけの修行を積めばあんな精神力を得られるのでしょうか。

 

大将は天然パーマのC君。

彼はとうとうやってしまいました。

呼び出しボタンを押した後、夏の戦利品である薄い本を、テーブルに並べたのです。

しかもそのジャンルの偏りは目を覆うこと必至のアブノーマルさ。

 

「この夏は大収穫でフォカヌポウwww」

 

この世ならざる軟体生物の触手触腕が無力なに巻き付き、締め上げ吊るし上げ乱れ絡まりくんずほぐれつしているのです。

てかこのジャンルでこんなに冊数が集まるのか。

私は内心「あぁ、やっちまったな。これはさすがに終わった」と思いました。

そして店員の女の子の反応をチラ見します。

 

しかし。

 

「お待たせしました。お呼びでしょうか」

 

無の境地。

完全なる無感情、無表情。

科学工学の粋を集結した精巧なロボットなんじゃないかと思ってしまうほど、店員の女の子は業務に徹していました。

私たちは完敗したのです。

 

キモ試しを終え、注文したメニューを完食した私たちはそそくさと退店します。

席を立つ私たちの姿を見ると、店員の女の子がレジに向かって歩き出しました。

彼女の名前は上林かんばやしさん。

サークルの後輩です。

 

坂津「上林さん、強いね」

上林「先輩たちが普通すぎただけでしょ」

A君「じゃあ実験は失敗かな?」

B君「俺らなりに頑張ったんだけどなぁ」

C君「僕のコレクションまで炸裂したのに」

上林「いいえ、助かりました。坂津さんが一番キモかったです」

坂津「はっ?」

 

実はこのキモ試し、誰の行動が一番キモいかを調べるものでした。

キモさを試すからキモ試しね。

きちんと表現するなら『どんな行動が他人に不快感を与えるのか』を調べるというものでした。

社会心理学のレポートを提出するため、上林さんが私たちに協力を求めてきたのがコトの始まりだったのです。

 

坂津「買ったものじゃなくて自分で描いてるのがキモいってこと?」

上林「いえいえ、そういうことじゃないです。私も絵描きですし」

A君「だよね?だって程度で言えば坂津氏のが一番ライトだし」

B君「俺のなんて立体だし」

C君「僕のは倒錯も甚だしいし」

A君「あ、自覚はあるのか」

坂津「それで、私の何がキモかったって言うんだい?」

上林「私の表情をめっちゃ見てきましたよね。アレがヤバかったです」

坂津「ん?」

 

上林さんが言うには、私の『表情を覗き込むチラ見』が最悪だったようです。

私たちが披露したキモエロいアイテムの数々は、それはそれとして『そーゆー世界もある』と納得することはできるんだそうで。

もちろん上林さん自身がオタクであり、そーゆー世界に元からある程度の理解があるという前提はありますがね。

しかしその視線、意識、興味のベクトルがいざ自分に向けられていると思った瞬間、とんでもないキモさを覚えたんだそうです。

 

「つまり、誰が何をどうしていようが、自分とは別世界だと思える状況ならそこまで不快感を覚えることは無いんですけど、それが自分の領域テリトリーに1mmでも侵入してきたら、それはもう不快とか恐怖とかの対象になるんだということが分かりました」

 

なるほどな、と思いながらも、無自覚でやっていた自分の行動が、周囲の変態どもを押さえて最もキモかったという事実に、私は心で泣き崩れたのでした。