『かなり』

干支に入れてよ猫

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オタクの後輩から連絡があった。後編

どうも、坂津です。

下記事の続きです。

前回のあらすじ:ディープなオタクである大学の後輩がそれを隠したまま結婚しようとしているのに苦言を呈した坂津だったが・・・

 

坂津「ん~、でもなシュリP。私はそれ、反対だな。もし仮に本当に脱オタクして過去を捨ててってんなら協力しないでもない。でもさ、どうせ旦那さんに隠して隠れて密かに腐女子は続けるんでしょ?今の友達との関係も続けるんでしょ?だったらこの一時だけ偽って騙し騙しやり過ごしても、良い未来は見えないけどな」

 

少しの沈黙があり、後輩は溜息交じりに話しました。

 

後輩「それは重々承知してるんでスよ・・・。でもね、私のツレ周りでもオタクを隠して結婚して旦那に秘密の同人ライ腐を送ってる奴もいっぱい居るんです。むしろ『生きる糧ともいうべきオタク成分を減らす決断をしてまで選ぶ結婚』という解釈でお願いしたいです。結婚なんかと無縁だと思ってた私が、たまたま好きになった人がドが付く一般人という不運に負けず頑張ろうとしてるのを評価して欲しいッス。ただ私だって永遠に隠し通せるとは思ってませんので、じっくり時間をかけて彼にオタク文化を布教していこうと思ってますよ」

 

なるほど。

私は少々彼女のことを見くびっていたようです。

これほどまでの覚悟があれば私が口を挟む余地はありません。

私は私ができる範囲で彼女の応援をする他ありません。

 

坂津「分かったよ。で、私は何をすれば良い?」

後輩「一般人モドキにしか頼めないことですよ」

坂津「何だよ一般人モドキって。私のことか?」

後輩「先輩は一般人に擬態したオタクでしょ?」

坂津「間違って無いのが腹立たしいが、んで?」

後輩「ズバリ、友達の演技指導をお願いします」

坂津「は?演技指導って・・・一般人として?」

後輩「です。式の間オタク臭を消したいんです」

坂津「そんなの自分でやればいいだろ何で私が」

後輩「自分の準備でそれどころじゃないんです」

坂津「あーそっか。そりゃそうなっちゃうわな」

 

後輩の友人連中は大半が私の後輩ということになるのですが、その彼女ら腐女子ーズが結婚式の間きちんとオタク的な雰囲気を消し去って一般人として振る舞えるようにレクチャーして欲しいというのが依頼の内容でした。

この記事を読まれている一般人の方々は『何をそんな大袈裟に』と思われているかもしれませんが、重度のオタクというものは一挙手一投足がすべてオタクオーラを放っており、立ち昇るオタク臭はすぐにバレてしまうものなのです。

大学時代に長く時間を共にした私だからこそ、後輩が式に呼ぼうとしている彼女らの『ヤバさ』はとても理解しています。

でも、それでも『呼ばない』という選択肢を採らなかった後輩には内心で拍手を送りました。

 

後輩「ちょっとした言葉づかいとかで良いので」

坂津「そだな。あと早口とか視線外しとかもな」

後輩「世間ズレした比喩表現とかも遠慮したい」

坂津「委細承知。出来る限りサポートするぜぃ」

後輩「それと、ここからが本題なんですけどね」

坂津「え?今までが前置きなの?なにそれ怖い」

後輩「実はお願いしたいのはスピーチなんです」

坂津「新婦のスピーチが男はオカシイだろうよ」

後輩「はい。なので原稿の方をちょちょいっと」

坂津「あー・・・なるほどそーゆーことデスカ」

 

話をまとめると、こんな感じでした。

衆人環視のもとマイクで言葉を発することなど、真っ当なオタクにとっては完全に致死量の緊張を伴う処刑行為です。

なので最初は誰もスピーチを引き受けてくれなかったのを、どうにかこうにか『3人で手紙の回し読みスタイル』ということで承諾してもらったんだそうです。

んで、その手紙の内容と読む順番を決めるミーティングの場に私を派遣したい、というのが後輩の目論見だったのです。

その3人というのも私にしてみれば漫画研究会の後輩なワケで、別に何の気兼ねもありません。

原稿の校正をしつつ一般人に擬態する術を伝授するだけの簡単なお仕事です。

 

私は快くこの件を引き受けました。

引き受けた後で我に返り、ものすごく不安になってきました。

重度のオタク3人の中に加わって、果たして私は自分のオタク気質を封じたままでいられるでしょうか?

なんだか逆に彼女らに飲み込まれて、オタク風味満載のスピーチ原稿が出来上がってしまわないでしょうか?

それが心配で夜しか眠れません。