どうも、坂津です。
起こったことをありのまま話すぜ。
対向二車線の細い道で、私の前を走る車がいきなりセンターラインを超え、対向車と接触しました。
二台の車両はお互いに90度回頭し、道路を塞ぐように停車しました。
私は幸いにも充分な車間距離を保って走行しており、前の車がセンターラインを出たあたりで減速を開始。
衝突したときには余裕を持って停車することができました。
対向側の後続車も同じような感じだったらしく、二次追突の被害はありませんでした。
図にするとこんな感じ。
私の前を走っていたのを、仮にA子としましょう。
そしてそのA子にアタックされたのを、B男とします。
A子とB男の車両によって道は完全に塞がれてしまい、通行することはできません。
生憎と脇道や店舗の駐車場のような『逃げ場』もありませんでした。
事故車と後続車に挟まれてしまえば、もうじっとしているしかありません。
幸いなことに私は特に急いでいることもなく、この現場が片付くまでお付き合いすることが可能な状況でした。
とりあえずパトカーや救急車などが到着できるよう、可能な限り車を歩道側に寄せ、私は成り行きを見守りました。
会話が聞こえるようにちょっとだけ窓を開けて。
A子「ごごごごごごめんなさいぃぃぃぃ」
B男「いや、あの、怪我とか無いスか?」
A子「わたわたわたしは大丈夫ですぅぅ」
B男「俺も、大丈夫なんで、大丈夫ッス」
A子「あの私事故とか初めてなんですぅ」
B男「そッスね、俺もッス。大丈夫スか」
A子「わ、私は大丈夫なんで!大丈夫!」
B男「俺大丈夫なんで落ち着きましょう」
坂津「あの、警察に電話しませんかね?」
我慢できませんでした。
私の個人的な望みを言えば、もっと傍観していたかった。
しかし私の後方には長い長い車列が形成され、恐らく10台より後ろの人たちは何が起きているのかも分からずに停車させられているのです。
それを想像したら、先頭でこの不毛なやりとりを愉しんでいることに罪悪感を覚えてしまい、ついつい口を出してしまったのです。
A子「あっ、そうですね、警察に電話を」
坂津「それからお互い保険屋さんに連絡」
B男「分かりました。えっと電話番号は」
これで片付くはずです。
私は暖房の効いた温かい車内に戻り、また事の展開を見守ります。
A子がスマホで電話を始めました。
警察に連絡しているのでしょう。
と、困った表情で私の車の方へ歩いてきました。
そして窓の隙間から私に問い掛けます。
A子「すみません、ここ、どこですか?」
坂津「CD町です。EF跨線橋の北です」
警察に事故の連絡をすると必ず現在地を尋ねられます。
それが初めての土地だったりすると場所の説明ができなくて慌てますよね。
調べるツールは電話として使っちゃってるし。
と思っていたら、今度はB男が私の方へやってきました。
B男「あの、衝突の瞬間て見てました?」
坂津「そりゃしっかりと。災難でしたね」
B男「良かったぁ。どんな感じでした?」
坂津「ん?どんな感じと言うと、何が?」
B男「俺、どうやってぶつかりました?」
坂津「えっ、いや、ガシャーンて・・・」
B男「いやそうじゃないです。状況的に」
なるほど。
私は急に理解しました。
私の視点だと、私の前を走行するA子が一方的にセンターラインをハミ出してぶつかったように見えましたが、実はB男も全く前を見ていなかったのでしょう。
今思えば、確かに両者ともノーブレーキで衝突しました。
いくら急に対向車がハミ出して来たからって、ハンドルを切ったりブレーキを踏んだりはできるはずです。
それが、真っ直ぐに衝突している時点でおかしかったんですね。
だから明らかに被害者に見えたB男が、車から降りた時点で全くオラついていなかったのは、自分に非がある可能性を排除できていなかったからでしょう。
恐らくA子も自分がセンターラインを超えた自覚は無いでしょう。
スマホを操作していたのか脇見なのか居眠りなのか、とにかくボーッとしてた両者が衝突したということです。
さて、これはもしや『A子の後続車である私と、B男の後続車の運転手の発言によって状況が変わる』という場面じゃないですかね。
とりあえず私は車を降り、B男の後続車の運転手さんと話をしようと試みました。
坂津「すみませんちょっと良いですか?」
後続「えっ、何ですか?あんた誰です?」
坂津「あっち側の先頭の者なんですけど」
後続「ふーん、それが?なに?何の用?」
後続さんはなんだかものすごくソワソワしています。
若干イライラも入っているようです。
運転席で貧乏ゆすりをしています。
坂津「この事故どんな風に見えました?」
後続「よく分かんないな。どうでも良い」
私は後続さんとのコンタクトを諦めました。
やがて警察が来て現場の状況を確認して、事故車両の移動が行われました。
で、その次の瞬間、後続さんがモノスゴイ勢いで車を発進させました。
その場の全員が引くくらいの勢いで。
ここで私は「ああ、もしかしてトイレ我慢してたのかな?」という発想に至りました。
しかし警察はそうは思わなかったようです。
一人の警察官が慌ただしくパトカーに戻り、何やら無線で話しています。
そしてもう一人の警察官が私の窓ガラスをノックしました。
警察「ちょっとすみません、良いです?」
坂津「待ってました。かくかくしかじか」
警察「ご協力感謝します。実に効率的だ」
坂津「これ名刺です。何かあれば連絡を」
警察「はい!ありがとうございました!」
念のため後続さんの話もしておきました。
たぶん我慢の限界だっただけで、何かやましいことがあって逃げたとかじゃないと思いますよ、と。
ちなみに、私の車はドラレコ非登載車です。
あの日以来。