『かなり』

業界には色々ある

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落語みたいなの考えた

どうも、坂津です。

今日も馬鹿馬鹿しいお話を一席、お付き合い願いたいと思います。

 

しかし物騒な世の中になったもんですなぁ。

いつアッチの方からロケットが飛んでくるかも知れないなんざぁ、平成育ちの我々にとっちゃあんまりにも現実味の無いお話で。

ただこう見えても私ゃ意外と小心者でして、いつ来るか来ないかも分からないロケットにビクビク怯えてたんです。

それに比べてウチの女房は肝っ玉が座ってましてね。

あんた、ロケットがどうのと騒いだって、どうにも出来ゃしないんだ、自分でどうにかできることを考えなさい、ってこう言うんです。

我が女房ながらにね、私ゃ見直しましたよ。

地に足が付いたと言うんですかね。

流言飛語とは言わないが、心配したって始まらないニュースに浮足立つよりも、日々の生活を堅実に、ってのは簡単なようで実はなかなか難しいもんです。

感心の眼差しを向ける私にね、女房が続けて言ったんです。

ロケットが飛んできたなら二人ともいっぺんにお陀仏だけど、事故や病気ならどちらか残る。

だから、アンタには自分のできること。

しっかり保険に入って貰わなきゃ困るんだよ、と。

遺された私が不自由無く暮らせるようにたっぷり保険に入りなさい、と。

なんだい、私が先に逝っちまうってのは決定事項かい。

まぁ、そんな我が家の事情はこっちへ置いときまして、今日の話題は一風変わった保険のオハナシ。

 

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「ん~・・・ぐぬぬぬ・・・」

 

「おいどうしたい、難しい顔して」

 

「ぬぬぬぬ・・・」

 

「人が話し掛けてんのに気付きもしない。これっ(ぺちん)」

 

「うおお!何だお前か、びっくりさせるなぃ」

 

「お前さんが呼んでも応えないからだろう」

 

「そうか、そりゃすまねぇな」

 

「人の呼び掛けにも気付かないほど、何を悩んでいたんだい」

 

「それよ。俺ぁどうしても思い出せねぇんだ。お前ぇさん知らねぇか」

 

「何をだい」

 

「俺が今朝がた思い付いたアイデアだよ」

 

「そんなモン俺が知るわけないだろう」

 

「そりゃそうだ。しかし、う~ん・・・」

 

「どんな思い付きだったんだい」

 

「よくぞ聞いた。『このネタだけで10年は食える』ってぐらいの傑作よ」

 

「ほほう。俄然興味が湧いてきたぜ。してその内容は」

 

「それが思い出せねぇんだってよ」

 

「は。これっぽっちもかい」

 

「そうなんだよ。『なんかすげぇこと思い付いた』ってことだけは覚えてるんだが、どうにもその中身がすっかり抜けっちまってよ」

 

「なんだいそれじゃ一文にもなりゃしないじゃあないか」

 

「だからこうして頭を捻ってるんだろうが」

 

「何かちょっぴりでも覚えてないのか」

 

「それがからっきし。ただの一文字も思い出せねぇのさ」

 

「まぁしかし、そういうことはよくあるよな」

 

「なんだ、お前も忘れっちまうことがあるのかい」

 

「俺だけじゃ無ぇさ。人間は忘れる生き物だからな」

 

「それじゃ今の俺みたいに、一攫千金のアイデアを思い付いたのに、すっかり忘れちまう不幸な輩が他にも大勢居るってことかい」

 

「そりゃそうさ。誰でも一生のうちに、片手で数えられる程には神懸かみがかった思い付きがあるもんさ。それをちゃんと覚えておける奴、メモしておける奴が成功すんのさ」

 

「なんて世知辛ぇ世の中だよ」

 

「ま、忘れちまったもんは仕方無ぇ。きれいさっぱり諦めな」

 

「そうだな。しかしお前ぇのお陰で良いこと思い付いたぜ」

 

「ほう。また忘れちまわねぇうちに俺に話してみろよ」

 

「保険だよ保険。保険を作るんだよ」

 

「おい、分かるように説明しやがれ」

 

「焦るなよ。まずな、一世一代の思い付きってのは、お前ぇさっき誰にでもあるって言ったよな」

 

「そうだ」

 

「だが、それを忘れる奴の方が多いんだったな」

 

「ああ、確かにそう言った」

 

「てことはつまり『自分のアイデアを思い出したい奴が巨万ごまんと居る』ってことになるだろ」

 

「さっきのお前さんのようにな」

 

「そこで保険よ」

 

「なんで保険になるのかが分からねぇよ」

 

「そうだな、名前は『発想遺失保険』とでもしとこうか」

 

「はっそう、いしつ・・・」

 

「さっきの俺みたいにな、すんげぇアイデアが浮かんだのに、それが思い出せねぇ経験は誰にでもあるんだろ」

 

「ああ、俺にもあるぜ」

 

「その記憶を呼び起こしてやるたぁできないが、せめていくらかの補償をしてやろうってのがこの保険よ」

 

「面白くなってきた。しかしどうやるよ」

 

「まずこの保険の仕組みはこうだ。加入者が何か重大な発想を忘れちまったとするだろ。そしたら保険金を申請すんだ」

 

「そこは普通の保険と同じだな」

 

「で、その加入者にはコレを被ってもらう」

 

「なんだいそのヘンテコな鶴の首みてぇなのは」

 

「こうやって、被るんだ」

 

「まるで鳥人間だな。長ぇクチバシの。で、そりゃ一体何なんだい」

 

「コレな、被ってる奴の記憶がこっちの画面で見えるのよ」

 

「なんと」

 

「で、記憶の中身が分かりゃアイデアの価値がざっと計算できるだろ。だからそのアイデアに相応の補償を払ってやるのよ」

 

「なるほど考えたなぁ」

 

「しかもこの保険の良いところはな、保険金を払っても胴元が損をしないってことよ」

 

「胴元って言い方ぁどうかと思うが、まぁいいや。なんで損をしないんだい」

 

「覗き見たアイデアを使って儲けるからよ」

 

「ほほう。お前さん、悪だねぇ」

 

「悪なもんかよ、忘れっちまった阿呆に金をやるんだ。感謝されたって恨まれる筋合いは無ぇよ」

 

「そりゃそうだ。なんだか飛んでもない儲け話に関わったぞ」

 

「なんだ、お前ぇもひとくち乗りてぇってのかい」

 

「当たり前ぇだ。ここまで聞いといてサヨナラってのは無ぇだろうよ」

 

「違ぇねぇ。分かった。ただひとつ問題があってな」

 

「なんだよ兄弟、水臭ぇことは無しにするが花だぜ。何でも相談してくれよ」

 

「このヘルメットな、まだ未完成なんだ」

 

「なんだと。それが無きゃあ保険の話も絵に描いた餅じゃあねぇか」

 

「まぁそう焦るない。あともう一息で完成するところなのさ」

 

「なんだ驚かしやがって。それじゃどればかり待てば完成するんだい」

 

「そこよ、問題は。時間じゃ無ぇんだなぁ足りないのは」

 

「なんだ・・・もしかして、金か?」

 

「ご明察。どうにもあと100万円ほど、開発費が足りねぇんだ」

 

「それが完成したら億万長者じゃねぇか、100万くらいどうにかならねぇのかい」

 

「俺もそう思っているんだが、精一杯かき集めての足らずが100万だ」

 

「そうか分かった。その足らずは俺がなんとかしてやろう」

 

「恩に着るぜ兄弟。今日からお前は共同経営者だな」

 

「そうか。この鶴ひとつでボロ儲けか。一鶴いっかくで一攫千金とは、シャレが効いてるな」

 

「ああ、そりゃ鶴じゃなくてな、さぎなんだ」