『かなり』

干支に入れてよ猫

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生存率4.17%のアドベンチャー

どうも、坂津です。

今回はちょっと試してみたいことがありまして。

お時間に余裕のある方だけ、もし宜しければこの実験にお付き合いください。

本当に、手探りの実験です。

全く面白くも何ともありませんが、苦情は言わないでね!

 

※グロテスクな表現がありますので、そーゆーのが苦手な方は進まないで戻ってください。

 

 

 

あなたは目覚めた。

かすみがかかったような思考で思い出すのは、何者かに突然おそわれ、口と鼻に何か布のようなものを当てられた記憶。

辺りを見渡すと、屋内であることは確かだ。

ずいぶん埃っぽい。

部屋の至る所に蜘蛛の巣も見える。

どれだけ放置すればこんな状態になるのか見当もつかない。

電球が灯っていることから少なくとも通電していることは分かるが、不気味なことこの上無い。

部屋には無数のたるが置かれてある。

窓は無く、突き当たりの壁に、真鍮しんちゅうのドアノブが鈍く光る扉があった。

 

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1.手近な樽を調べる

2.扉を開ける

3.自分の持ち物を確認する

 

この部屋から脱出する為にあなたが取る行動を、上記の3つから選んでクリック!

『酒の肴』

居酒屋のカウンター。

特に料理が美味いわけでもなく、別に家から近いわけでもなく、すごく値段が安いわけでもなかったこの店。

なぜこんな店に入ってしまったのかと後悔し、すぐに出ようと思った。

しかし、俺は出られなくなってしまった。

 

俺のちょうど真後ろの席には男の二人連れが座っている。

こいつらの会話が耳に入ってきたからだ。

割と大きな声なので、きっと興奮しているんだろう。

 

A「他ならぬお前の誘いだからわざわざ出てきたってのに」

B「そんなこと言うなよ。ほら、まぁ呑めって」

A「仕事に障るから要らん。それよりお前、本気なのか?」

B「本気さ!だからこうして頼んでるんだよ!」

 

俺は背中に耳を作って会話に集中する。

振り向くわけにもいかず、姿は見えない。

声や口調から察するに、30代後半から40代くらいか。

どうやらAは仕事中だったが、Bの誘いで抜けだしてきたようだ。

そしてBはAに、何やら頼みごとをしているらしい。

 

A「話を持ちかけてきた奴のことはちゃんと調べたのか?」

B「あたりまえだろ!信頼できる、良い人だ!」

A「どうやってお前が信頼するに至ったのか説明してみろ」

B「そんなの目を見て話せばすぐ分かるだろ!」

 

中越しでもはっきり分かるほど、Aは深いため息をついた。

Bが詐欺っぽい儲け話に食いついて、それに一枚噛むようAを説得しているってあたりが妥当な推測だろう。

 

A「お前、そうやって今まで何回騙されたと思ってるんだ」

B「今回は今までと全然違うって言っただろ!」

A「その隣に居たっていう銀行員もグルなんじゃないか?」

B「お前はなんでそんなに人を信じないんだ!」

A「逆になんでお前はすぐに他人を信じるのか理解できん」

 

こりゃダメだな。

Aのガードが堅すぎるし、Bに説得の技術が無さ過ぎる。

そもそもなぜこんなに正反対の二人が友人関係でいられるのか不思議だ。

交渉決裂、退店ってパターンか。

これで俺も帰ることができる。

 

B「信じられぬと嘆くよりも人を信じて傷つく方が良い!」

A「騙されず傷つかないのが最良に決まってる」

B「お前には人の情ってもんが無いのかよ!熱くなれよ!」

A「否、熱くなるな。落ち着いて冷静に考えろ」

B「俺を助けると思って、な?頼むよ!この通りだから!」

A「俺はお前を諦めさせることが助けだと思う」

B「こんなに頼んでるのに!一体何が気に入らないんだ!」

A「煙草サイズのキリンなんて居ねぇんだよ!」

B「居るんだ!見たんだ!はっきりこの目で見たんだよ!」

A「ああ見たんだろうともよ!合成写真をな!」

C「お取り込み中に失礼。ちょっとよろしいですか?」

A「ああん?」

B「ああん?」

 

Bの見事な騙されっぷりに笑いを堪えるのが大変だったが、突然、第三の男が乱入してきたことによって俺は平常心を取り戻した。

俺と同じく一人で呑んでいたらしい男が、二人の会話に割って入ったようだ。

追加の酒を注文し、俺は続きに耳を澄ませる。

 

C「唐突に申し訳ありません。先ほどのキリンの件で」

B「アンタ、俺達の秘密の会話を盗み聞きしてたってのか」

A「秘密も何もないだろ、あんな大声だったのに」

C「あまりにも好奇心をくすぐられたものですから、つい」

B「お、アンタは小キリンを信じてくれるかい?」

A「待て待て落ち付けよ。その話は秘密なんだろう?」

B「信じる者はみな兄弟って言葉を知らんのか?」

A「今まで聞いたことも無いし金輪際聞かんだろうな」

 

どうやらCは本格的に会話に参入するようだ。

飲み物を持って席を移動し、どっかり椅子に腰かけた気配を感じた。

これは面白くなってきた。

ぬるくなったビールを一気に煽り、新しく運ばれてきた冷たいビールも半分ほど胃に流し込んだ。

 

C「お二人とも冷静に冷静に。私は小キリン、信じますよ」

B「ほら見ろ!やっぱり分かる人は分かるんだ!」

A「あなた、なぜこの突拍子もない話を信じる気に?」

C「実は手乗りゾウでひと儲けしましたことがありまして」

B「何!?キリンだけじゃなくゾウも居るのか!」

A「おい待て、眉唾にもほどがある。アンタ何者だ?」

 

真っ向からBを否定していたAだが、突然現れたCの言動に少なからず動揺しているようだった。

逆にBは水を得た魚のようだ。

しかし一体どういうことだ?

冷凍物であろうスカスカの枝豆と、衣が油分でべとべとな唐揚げを咀嚼しながら三人の関係性を推理してみる。

実はBとCが結託してAを陥れようとしている?

いや、AとBの会話からBを与し易しと考えたCが、Bを相手に詐欺を働こうとしているのか?

そもそもAとBがグルで、会話に興味を持った第三者を狙おうとしている?

残りのビールを飲み干してしまったが、店員が注文を取りに来ない。

 

C「私は何者でもありませんよ。ごく普通の会社員ですよ」

B「その小ゾウの話、詳しく聞かせてください!」

A「いい加減にしろ!そんなもの居る訳がないだろ!」

C「無理にとは言いません。私は小キリンを信じますがね」

B「俺は信じるよ!だから小ゾウの話の詳細を!」

A「絶対後悔することになる!もう止めないからな!」

C「じゃあ、これを見てください・・・」

象「パオ~ン」

A「ッ!!!!?」

B「ッ!!!!?」

 

白熱、そしてクライマックス!

一体どうなってしまうのか!

確かに象の声が聞こえた気がする!

俺も見たい!小ゾウが居るのか!?

ああ!ビールが欲しい!

やっと店員が来やがった!

 

店「そろそろ閉店のお時間です」

俺「えぇっ!?」

店「申し訳ありませんが、お勘定を・・・」

俺「相談がある。営業時間を30分だけで良いから延長してくれないか?」

店「延長は1時間ごとの刻みでしか承っておりません」

俺「じゃあ1時間で!」

店「かしこまりました。それでは1時間、延長させていただきます」

店「1時間の延長、いただきました!」

A「ありがとうございます!」

B「ありがとうございます!」

C「ありがとうございます!」

 

お題「居酒屋で頼むもの」

お題スロットで記事ストックを貯めるシリーズ3回目。

『カード』

俺はなぜ、あんな力を手に入れてしまったのか。

そしてなぜ、その力に溺れてしまったのか・・・。

 

 

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あの日はいつもより仕事が遅くなり、最寄駅の終電はとっくに去っていた。

かと言ってタクシー代の領収証を申請するような度胸も無いし、仮に出したって経理に突き返されるのが落ちだろう。

俺は深くため息をついて椅子から立ち上がり、歩く決心をした。

三駅ほどの距離を歩けば、まだ動いている路線に辿り着ける。

しかしそれもギリギリだ。

急がなければ。

 

いつもより少し早く過ぎ去る地面に、キラリと光るものをみつけた。

プラスティック製のカードだった。

 

「potential card・・・なんだこれ」

 

ポテンシャル、潜在能力・・・?

 

何気なくカードの表面の文字を指でなぞった瞬間。

 

形容し難い違和感に襲われた。

地面が揺れているような、空間が歪むような、高熱にうなされるような。

 

気付けば目の前に「何か」が居た。

それは俺に向かって言った。

 

「そのカードは、運を自由に使えるカードだ」

 

何を言っているのか意味が分からない。

 

「欲しいか?」

 

正体のわからないものを何で欲しがるもんか。

 

「運を、自由に使いたくはないか?」

 

 

 

気が付くと終電の時間は過ぎていた。

俺の手には、例のカードが在った。

裏面には「1000」という数字が印字されている。

 

「へっ・・・、何だよ、運って・・・」

 

恐怖感のようなものも、胸の内には確かに在った。

期待感も、少しは在ったかも知れない。

 

「今のこの状況、どうにかしてみろよ」

 

吐き捨てるように、俺はカードに向かって呟いた。

どうかしてるな、と自嘲気味に口を歪めるのと同時に、車のヘッドライトが俺を照らした。

 

「なんでお前、車なんかで?」

「事務所にスマホ忘れちまってよ、狙ってる子からLINE来てたらヤバいじゃん」

「そりゃ大変なこったな。でもお前、鍵持って無いだろ?」

「そうなんだよ。事務所に行ったは良いけど入れなくてさ」

「じゃあ交渉だ。俺は事務所を開けてやれる。お前は俺を家まで送れる」

 

鍵をチラつかせながら言う俺に奴は苦笑しながらも、条件を飲んだ。

俺は無事に家に帰ることができた。

 

カードの裏面の数字は「980」になっていた。

 

あれから色々と試した。

自動販売機で当たりを出すのは「1」

合コンで好みの子と出会うのは「60」

パチンコで連チャンするのは「80」

それから、1日に「3」ずつ数字が増えることも分かった。

 

分からないこともある。

特に何もしていないのに、気付いたら数字が減っていることがあった。

規則性は無く、「5」経る時もあれば「10」減ることもあった。

しかし増えるときは必ず「3」だった。

 

気付けばいつしかカードの数字は「522」になっていた。

 

良く分からない理由で数字が減らされるのは癪だった。

俺は端数の「22」だけ残して、宝くじを買った。

 

当選の発表を待つまでもなかった。

「500」の運を使った効果がどのくらいの金額なのかが分からなかったが、絶対に当たることは確かなのだ。

 

宝くじ売り場の前で、何気なくカードの数字を確かめる。

 

「22」

 

「0」

 

「えっ・・・?」

 

数字の変化はいつも、気付いたら変わっている感じだった。

目の前で書き変わるのを見たのは初めてだ。

 

次の瞬間、俺の体は宙に舞った。

 

 

ガス爆発があったそうだ。

どうにか一命は取りとめたものの、ベッドの上で指一本動かすことはできない。

俺は残りの「22」で命を拾ったのか?

 

今、カードがどうなっているのか、自分で確認することもできない。

 

毎日「3」ずつ、きっちり溜まっていてくれれば、いつか奇蹟的に全快という使い方もできるはずだ。

今の俺にはそれだけが唯一の希望だった。

 

俺はなぜ、あんな力を手に入れてしまったのか。

そしてなぜ、その力に溺れてしまったのか・・・。

 

毎日「3」ずつしか増えないなら、その範囲内で使っていれば良かったのに。

分不相応な使い方、冷静に考えれば破滅が見えていた使い方。

今度もし、あのカードをくれた「何か」に会うことがあったら言ってやろう。

 

「俺の領分に合った数しか使えないカードをくれ」と。

 

 

 

 

お題その1「VISAデビットをブログで宣伝コンテスト」