『かなり』

干支に入れてよ猫

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ラーメン屋にて

どうも、坂津です。

ラーメン屋さんで『ミニチャーシュー丼セット』を注文しました。

ミソラーメンに、お茶碗サイズのチャーシュー丼がついてきました。

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こんな感じです。

メインであるラーメンの方にもたっぷりとチャーシューが乗っていました。

私は特に何か思うところがあったわけでも無く、ただ単純に何も考えず、ラーメンのチャーシューを丼の方へ乗せました。

なぜそうしたのかは自分でも分かりません。

敢えて理由をつけるとしたら、麺は麺として楽しみ、ご飯はたっぷりチャーシューで豪勢に食べたかったとか、そんな取るに足らない理由でしょうか。

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ともかく、私の前にあるどんぶりと茶碗はこんな感じになりました。

チャーシューを移動したあと、私はラーメンから食べ始めました。

そしていざ、ちょっと豪勢になったミニチャーシュー丼に手を付けようかと思った矢先のことでした。

 

私が座っていたテーブルの隣の席のお客さんが、メニューをサーブした店員さんに文句を言いだしたのです。

 

お客「え?これマジ?ちょっと少ないんじゃない?」

店員「えっと・・・これがウチの通常ですが・・・」

お客「いやいや、だってアレみてよ隣の席のやつ!」

 

そう言うと隣のお客さんは私が手に持っている茶碗を指さしました。

店員さんは示された先に視線を移し、私のチャーシュー丼を視認し、目を見開きました。

 

店員「あっ・・・あれ!?・・・えっ?おかしいな」

お客「ほら比べてみてよ。こっちの分、少ないよね」

 

私はほぼ無意識にチャーシューを移動していたので、お隣さんのゴタゴタの原因がすぐにピンと来ませんでした。

 

店員「ウチはチャーシューの数は決めてるんですが」

お客「でも明らかにあっちの丼は山盛りになってる」

 

ここでようやく私は事態の全貌に気付き、そして同時に決断を迫られたのです。

 

A.気付かないフリのまま完食してさっさと店を出る。

B.ラーメンからチャーシューを移動したと自白する。

 

反射的にBを選択しようとした私ですが、ある可能性に気付いて逡巡しました。

それは、ここで私が経緯を説明することで、言いがかりをつけてしまったお客さんの立場が悪くなるということです。

今の状態で真実を知ったところで、お客さんの気まずさは相当なものになるでしょう。

きっとプライドがズタズタになってしまう。

お店側としては狐につままれたような気持ちでしょうが、お客さんの要望通りチャーシューを増量して事無きを得る方が、丸く収まるんじゃないだろうか?

そう考え、私は無言を貫こうとしました。

が、すぐまた別の考えが浮上しました。

ここでお店側がチャーシューを増やした場合、次にこのお客さんが再来店して同じメニューを注文したときはどうなるのだろうか。

やはりここは素直に自分の『チャーシューを移動させた犯行の全て』を洗いざらいぶちまけた方が良いのでは。

そうだ。

お隣のお客さんには悪いけど、チャーシューの量くらいで文句を言ったことを後悔しつつ後味の悪いラーメンを食べるのが貴様に相応しい罪の償いだ。

そのプライド、打ち砕いてくれるわフハハハ。

私は視線をお客さんに向け、そして店員さんに移し、このちょっと豪勢なミニチャーシュー丼の詳細について説明しようと口を開きかけました。

いや、待て。

そもそもお隣さんが、私がチャーシューを移動したことを知った上でこの交渉に及んでいたと考えることもできないか?

真相を知った上で、それを利用し、お店から不当にチャーシューを多くせしめようとしていたとしたら?

もちろん悪事は暴かれるべきであり、私は私の知る真実を激白することによってこの陰謀を打ち破ることができるわけだが、しかしそれには相応のリスクもある。

正しい行いをしたと胸を張って悠々とラーメン店を出たあと「よくも俺の『チャーシューたんまりゲット大作戦』の邪魔してくれたな」とか何とか言って路地裏に連れ込まれフルボッコにされてしまうのだ。

常に正しく、常に真っ直ぐ生きられるほど、私は強くない。

自分の身可愛さで沈黙を選択してしまう程度の、小さな人間なのだ。

 

時間にして恐らく1秒。

私の葛藤、逡巡、躊躇、悩み、戸惑い・・・それらは、給仕をしていたアルバイト君の一言によって吹き飛ばされました。

 

バイト「いや、それラーメンのチャーシューでしょ」

バイト「だってそれチャーシューの色が違いますよ」

バイト「丼用とラーメン用、種類が違いますもんね」

バイト「丼用の方がちょっと色が濃いんですよほら」

バイト「でしょう?ラーメンから移しましたよね?」

わたし「(無言で頷き、チャーシューをみつめる)」

お客「そうなの?なんだ、じゃあいいやごめんね?」

店員「いえ、とんでもありません。大丈夫ですよ~」

 

気まずい思いをして後味の悪いご飯を食べたのは私の方でした。

私は何だかんだと妄想するだけして、自分が関係者であるにも関わらず何の行動も起こさなかったチキン野郎です。

ちょっと豪勢なミニチャーシュー丼を手早くかっ込み、私はレジに向かいました。

さっきのバイト君が会計をしてくれました。

 

わたし「チャーシュー2種類あるの知らなかったよ」

バイト「ええ、本当は1種類しかありませんからね」

わたし「はっ?だってさっきあのお客さんに・・・」

バイト「そう言っときゃ丸く収まるかなって思って」

 

将来が楽しみな若者に出会いました。