『かなり』

干支に入れてよ猫

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『狂科学者』

ついに…ついに完成したぞ!

 

ふははははハハハハッッ!

 

天才の私にしか成し得ない悪魔の所業!

まさに悪魔!

なぜ神でなく悪魔かって?

それは私が作り上げたこれを、私はためらうことなく使うからさ!

 

殺人ウィルス、その名も『18菌』!

 

これを世界中にバラまけば、18歳以下の者以外、つまり19歳以上の人間は例外なく死んでしまうという恐怖の病原菌だ!

 

おお、神よ!

私は自分の頭脳と才能が恐ろしい!

 

この、このボタンを押せば…この世界は18歳以下の若者だけの世界になる!

 

これで…これで…この世は、若くてピチピチした女の子だけの世界だッ!!

 

 

ポチッ!

 

 

は、博士!?

なんてことを!

そのウィルスには男女の区別は出来ませんよ!?

女の子だけの世界は無理です!

 

しかも、あぁ…博士…『18菌』の最初の犠牲者は、あなたです。

『尻拭い』

「・・・と、以上の様な理由から、えぇー、我々人類は、その・・・存亡の危機に、えぇー、直面することと、まぁ、こうなったワケであります・・・」


記者会見会場で僕は、なるべく他人事の様に事態を報告した。

 

「あなたねぇ、ちょっと、そんな他人事みたいに!責任を感じないんですか?」

 

僕よりも少し若い記者が、僕に非難の声を浴びせる。

それに賛同する他の記者たちも口々に僕を責めたてる。

 

「いや、そう言われましても・・・僕もたまたま事態の原因を知る立場にあっただけですから・・・」

 

本当に、これ以外に言葉が無い。
確かにたった3ヶ月で、今この世界中の人口の62%が死滅してしまったのだ。

その原因を知る僕が彼らの攻撃の的になることは当然と言えた。

 

「それで、あなたはそれを阻止できなかった責任を、どう取るつもりですか?」

 

さっきの記者よりもっと若い記者が僕に冷たい視線を向ける。

 

「そうだ!対策は!?何か対策は無いんですかッ!?」

 

僕と同い年くらいの記者が悲痛な顔で問い掛ける。
僕は溜め息混じりに、できるだけ冷静に答えた。

 

「ですから、さっきも言いましたが、現在世界中で猛威を奮っているウィルスに対抗しうるワクチンは存在しません。僕も必死で研究所の中をくまなく探しましたよ。でも・・・」

 

「あなたは!あなたは死ぬのが怖くないんですかッ!?あなただって私と同じくらいの年でしょうッ!?何か!何か対策があるはずじゃないですか!あのマッドサイエンティストと一緒に研究をしていたあなたなら!」


僕の言葉を遮って叫んだ記者は、会見の会場ということも忘れて、泣き顔になっている。

 

「僕もね、そりゃ死にたくないですよ。でもね、無理なんです。確かに博士は狂ってましたが、間違いなく天才なんです。その博士が作った『18菌』に、対策なんか存在しないんですよ・・・」