『かなり』

干支に入れてよ猫

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オタクが結婚するということ

あけましておめでとうございます、坂津です。

突然ですが、私の妻は最高に良い奥さんです。

坂津夫婦情報

私は妻の事を「ラブやん」と呼び、妻は私の事を「旦那」と呼びます。

これは二人称、つまり面と向かった時の呼び名です。

第三者に三人称として話すとき、私は妻の事を「私の妻」と呼び、妻は私の事を「坂津くん」と呼びます。

妻は私より3歳年下ですが、精神年齢は完全に年上です。

私は妻に助けてもらってようやく一人前ですが、妻は私を上手に使って二人分の働きをします。

さて、今まで散々「坂津は二次元ラブの変態オタク野郎」という事実を公表してまいりましたが、方々で囁かれる「え?じゃあ奥さんも二次元なの?非存在なの?」という疑問は私の耳にも届いております。

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まずこれについて回答させて頂きたいと思います。

 

まず始めにハッキリさせておきますが、私の妻は三次元に実在します。

液晶画面やPCモニタの向こう側でなく、毎日私の目の前に存在し、触れることも可能です。

また、きちんと人間です。

もちろん検査を行ったことはありませんので、もしかすると容姿が人間に良く似た妖精である可能性はゼロではありませんし、妻に「人間だよね?」と確認したこともありませんが、そこは信じて良いと思います。

つまり私は、三次元に実在する人間の女性と結婚している、というわけです。

私の思い込みではありません。

 

さて、私の既婚が幻や勘違いではないことを私自身が確信した上で、結婚前と結婚後の変化について、記しておきたいと思います。

一億総オタク国に住まう未婚の男性諸君に、オタク男性が三次元女性と結婚するということがどんなものなのか、お知らせしたいと思います。

 

 

■嫁が一人になる

私には今まで幾人もの二次元嫁が居ました。

しかし結婚後、嫁はリアル妻ただ一人になりました。

最近になって過去の恋心が再燃するという事件がありました。

過去の嫁史上、最も私が焦がれた相手と再会してしまったからです。

yourin-chi.hatenablog.com

上記の記事、子育てブロガーのらんさんが、寝る間も惜しんで描いてくださった私の昔の嫁「ヌクヌク」です。

今はもうVHSもCDも処分してしまっていますが、未婚の私であったなら確実に再度買い集めてしまうほどの情熱が湧き起こりました。

しかし私にはリアル妻が居ます。

購入したアイテムを収納する場所も、映像を流すテレビも、購入に必要な金銭も、すべて私と妻の共有物です。

私の一存で決めることはできません。

こういうとき、私は胸に手を当てて深呼吸をし、考えます。

「ヌクヌクとラブやん、どっちが大切だ?」

答えは決まりきっていますね。

 

■ガレキを買わなくなる

今では高品質なフィギュアがたくさん出回っていますが、私の時代(JAF-CON”ジャパン ファンタスティック コンベンション”の頃)は量産物のフィギュアはメジャーな作品のものしかありませんでした。

そこでガレージキット(通称:ガレキ)と呼ばれる小ロット製造品(同人誌の模型版)を大枚はたいて購入しておりました。

愛ゆえに。

また原型師さんからシリコン型を購入し、ポリパテ・エポパテを駆使して盛って削っての生活を送ることもありました。

最近になってその頃の血が騒ぐ事件がありました。

www.coconoodollblog.net

上記の記事、人形師ブロガーの九尾さんが本格的な球体関節人形を制作される過程を公開してくださったものです。

もちろん私が過去に作っていたおもちゃとは比べ物にならないことは重々承知しながらも、やはり良いものを見ると手が疼くのです。

鎮まれ私の右手・・・。

しかしガレージキットは飾ってナンボです。

飾るとなれば当然、自宅ということになります。

美観にこだわりのある妻が美少女フィギュアを自宅に設置することなど到底許されるはずもありません。

こういうとき、私は胸に手を当てて深呼吸をし、考えます。

「ガレキとラブやん、どっちが大切だ?」

答えは決まりきっていますね。

 

■趣味に時間を割かなくなる

その昔、大学生時代や東京赴任時代は一人暮らしをしておりました。

一人暮らし中は、基本的にお絵描きをして過ごしていました。

学生時代はサークルの機関紙の原稿、社会人になってからは同人誌の原稿。

それら締め切りに追われているときは鬼気迫る勢いでしたし、特に目的の無い落描きはゆるゆると気ままに描いていました。

自宅の机の上には常に原稿用紙とスケッチブックと消しゴムのカスとトーンの破片。

鉛筆とGペンと製図インクとデザインナイフ。

その頃の気持ちがむくむくを大きくなるときがあります。

yaki295han.hatenadiary.jp

上記の記事、アグレッシブお絵描きブロガーのお米ヤローさんが真面目にイラストを描かれているのです。

羨ましい、と正直思います。

日々どんどん小さくなっていくペンだこを見詰めながら、寂しくなります。

しかしお絵描きは、一人で集中して行う業の深いお務めです。

休日に妻を差し置いてお絵描きなど、出来ようはずがありません。

こういうとき、私は胸に手を当てて深呼吸をし、考えます。

「お絵描きとラブやん、どっちが大切だ?」

答えは決まりきっていますね。

 

 

さて、このような変化について恐らく「そうなるのが嫌だから結婚したくない」という尤もなご意見もあると思います。

しかし、誤解を恐れずに言わせて頂くと、それは愚かな選択です。

もし上記の内容で、私が「我慢を強いられている」「抑圧されている」「制限されている」という印象を持たれたのであれば、それは私の表現力に問題があるだけです。

私は現状に何ら不満はありません。

むしろ毎日毎日、喜びに満ち溢れた生活を送っています。

それは、他でもない、妻のおかげです。

 

容易に想像できるデメリットだけに目を向けて安易な拒絶に走るのは、温かい湯船から出ないことに似ています。

冬の寒い中、温かいお湯で満たされた湯船につかるのは至福です。

しかしいつかは寒気の中に裸体を晒す時が来るのです。

それを「寒いから嫌だ」といつまでも入っていては、やがて湯は冷め身体はふやけ、残念な結果しか残らないことになります。

一度寒い思いをしてでもタオルで水気を拭き、新しい下着を身に付けてパジャマを着、さっぱりした気持で温かい布団にもぐった時の幸福を想像してください。

 

これで私の思いが100%伝わったとは思いませんが、しかし少しは結婚の良さがご理解いただけたのではないでしょうか。

 

※個人の感想です。結婚後の人生に対する幸福度には個人差があります。

キャラクターとショートストーリー

あけましておめでとうございます、坂津です。

この記事は『Parallel Factor Cultivate Server パラレルファクター・カルティベイトサーバー』略して【PFCS】関連の記事です。

pfcs.hatenadiary.jp

 

昨日のエントリで建国した「キスビット」ですが、とてもとても残念な事実を目の当たりにして凹んでおります。

何気なくアクセス解析で検索語を見たら、早くも「キスビット」というワードで昨日の記事に来られた方がいらっしゃったのです。

これはちょっとオカシイと思ってgoogle検索してびっくり。

検索結果も画像も何も載せませんけど、お察しください。

 

でも変えませんよ!

思い入れのある名前なんで!

このまま突っ走る所存でっす!

 

さて、こちらの記事で建国したキスビットですが「地図にアルファベットとか使ってんじゃねーよ読みにくいじゃねーか」というお声を頂いたので、カタカナ版を作成致しました。

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これでご容赦いただきたいと思います。

 

各地域の特徴をざっくりと。

 

■人間至上主義 エイ マヨーカ

ほとんど人間しか住んでいません。

めっちゃ人口が多くて武器もいっぱい持ってて強い軍隊があります。

 

■アスラーンの集合都市 ラッシュ ア キキ

アスラーンしか住んでいません。

人間が憎い!今はまだ無理だけどいつかヌッコロしてやるぜ人間ども!

 

奴隷制都市 ジネ

鬼が頂点に君臨する階級差別のピラミッドが構築されています。

アルビダの扱われ方がもっとも酷くて、完全にR18世界です。

 

■マカ アイマス山地

キスビットの原住民、純血のキスビット人が住む地域。

彼らは土を操る魔法が使えるけど、積極的に外界とは関わらないヒッキーです。

 

■タミューサ村

キスビット全体を暗く覆う諸悪の根源、種族差別。

これに対し、どげんかせんといかんと立ち上がった一人の人間が作った村。

キスビットに於いて他種族同士がいがみ合わずに暮らしている唯一の地域。

 

 

~・~・~・~・~・~・~

 

 

最初の記憶は、火薬と金属と汗の匂い。

そして官憲が荒々しく突入してくる騒音。

連れ去られる父と母。

僕は地下室に、キスビットの子供と一緒に居た。

酷く怯えている。

夜になって、僕たちは地下室を出た。

でも官憲達はずっと見張っていたんだ。

すぐに捕まってしまった。

ひどく殴られ、蹴られた。

キスビットの子は大丈夫だろうか。

血の匂いがする。

体中が痛くて、思うように動けない。

急に、とても懐かしい匂いがした。

頼れる、信じられる、安心できる匂い。

土の匂いだ。

僕は、死ぬのだろうか。

 

少年が幼心に死を意識したその刹那、官憲の足元の石畳が突然爆ぜた。

更に奇怪なことに、巻き上がった土は倒れた官憲たちに降り積もり、固まってしまった。

ジタバタともがくことしかできない官憲たち、その側に倒れている少年二人を担ぎあげて風のように走り去る人影ひとつ。

身にまとう装束と尖った耳から、キスビット人であることが窺える。

彼は一目散に市外へと走った。

都市の周囲を強固な壁で覆われた王都エイ マヨーカ。

もし脱出するのなら街道を進み関を越えなければならない。

しかしキスビット人はあろうことか壁に向かって走り続ける。

このままでは行き止まりになってしまうことは明白なのに。

壁が近くなるにつれ、彼の視線は壁の頂上に近づいた。

いつの間にか足元の土が盛りあがり、壁の頂点へと続くゆるやかな坂道を形作っていたのだった。

彼が壁の上に立つと同時に、土のスロープはボロボロと崩れ去り、ただの平地になってしまった。

 

次の記憶は木の実のスープの匂い。

僕は全身の痛みで目を覚ました。

体中に見たことの無い葉っぱが貼られている。

ゆっくりと上半身を起こすと、おでこから湿った布が落ちた。

お腹がぐうと鳴り、なぜだか恥ずかしかった。

大人のキスビット人が、テントに入ってきた。

そして僕に、お礼を言った。

「ありがとう。本当に、ありがとう」

シルファンは?どこにいるの?」

僕はキスビットの子がどこに居るのか聞いた。

お父さんとお母さんに言われたんだ。

この子を守ってあげて、と。

「・・・シルファンは、ビットの元へ還ったよ・・・」

意味は分からなかったけど、悲しい匂いがした。

この人が、とても悲しんでいることが分かった。

 

人間という種族はやたらと体裁を気にする。

子供の一人や二人に逃げられたからと言って大勢に何の影響があろうか。

しかし彼らの行動原理の一翼を担う“メンツ”というものが、彼らを突き動かすのだ。

あの日、土に固められた官憲は壁外警護兵を数人引き連れ、後を追ってきたのだ。

単筒式の遠眼鏡でキスビットのテントを確認する。

これ以上に北上されてしまえばもう完全な領外となり、追跡を諦めねばならなくなる。

いまここで、決行せねばならなかった。

壁外警護兵に合図を送り、弩(いしゆみ)を準備させる。

大型のクインクレインクロスボウに火薬爆弾を仕込んだ槍をセットする。

直撃しなくとも、数メートルの距離に落ちれば致命傷を与えることが出来る兵器だ。

風を読み、射角を決め、爆弾槍は放たれた。

 

「おじさんは、シルファンの、お父さん?」

僕が尋ねると、キスビットの男の人は静かに頷いた。

急に、悲しみの塊がお腹から胸に上がってきて、僕は泣きだした。

「おじさん、ごめんね、ごめんね・・・」

お父さんとお母さんが助けようとした。

僕が守らなきゃいけなかった。

おじさんの大事な娘。

おじさんは、僕を抱きしめてくれた。

本当は、もっと早く気付けたはずだった。

こんなにも泣いていなければ。

火薬と、鉄の匂い。

耳を突き破るような爆発音。

 

大量の砂埃を巻き上げ、テントを吹き飛ばした爆風は、石の礫をしたたかに撒き散らした。

キスビットの男が人間の少年を抱きしめたのは、この爆発から守るためだったのだ。

彼の背中には無数の穴が穿たれ、一目で致命的な傷であることが分かる。

官憲は喜び勇んで駆け出した。

「おじさん!おじさん!」

少年は、自分を抱いたまま動かなくなった男に何度も呼びかける。

「残念だったなぁクソガキ!散々手間かけさせやがって!」

少年の目に怒りと憎しみの炎が宿る。

「・・・してやる・・・殺してやる、殺してやる!」

呪いの言葉も虚しく、少年は怪我の痛みで立ち上がるのが精いっぱいだった。

「そんな体で何ができる?はん!大人しく連行されろ!」

そのとき、キスビットの男の体がぐらりと揺れ、立ち上がった。

いや、立ち上がったように見えた。

実際には周囲の土が彼にまとわりつき、人型を形成しているのだった。

「ゴ、ゴーレム・・・?」

絶望的な恐怖の言葉を漏らし、壁外警護兵たちは王都へ逃げ帰る。

どんな爆弾でも、どんな兵器でも、倒すことはおろか傷を付けることすら困難なキスビットの悪魔、ゴーレム。

人間にはそのように伝承されている。

ゴーレムはずずずと音を立て、一歩、官憲に近づいた。

「ひ、ひぃぃぃぃーッ!!!」

警護兵に遅れて官憲も、王都へ向かって走り出した。

少年は叫ぶ。

「待て!殺してやる!殺してやる!」

 

スン、と、芳ばしい匂いで目が覚めた。

どうやら居眠りをしていたらしい。

子供の頃の夢など、久しく見ていなかった。

この香りは、焼きたてのパンと、ああ、木の実のスープだ。

きっとこの匂いのせいであんな夢を見たのだろう。

「昼食の準備ができましたよ、エウス村長」

「ああ、ありがとう」

あのあと、キスビットの彼は幼い私に言った。

瀕死の状態で、最後の言葉を。

「こんな姿じゃ、シルファンに、会えないな・・・」

後で知ったことだが、キスビット人は土属性の魔法を使う。

能力には個人差があるが、才能のあるものにだけ使える禁呪があるそうだ。

自分の命と引き換えに、土壌神ビットの偉力を身にまとい、ゴーレムとなって戦う。

その力は凄まじく、武装した人間の大隊にも劣らない。

残りの寿命を圧縮して作りだす無敵の活動時間が終われば、さらさらと砂になって消えてしまうのだ。

しかしキスビットの民はこの力を使わない。

なぜなら、ゴーレムになった者は死を迎えられないと考えられているからだ。

無数の砂粒になり、風に舞い、この世に在り続ける。

魂はビットのもとに行けず、先に逝った仲間や先祖にも会えないのだ。

しかし、それをしてまで守ってくれた私の命。

私は人間だが、キスビット人に守られ、育てられた。

この命は、キスビットという国の為に、使いたいのだ。

世界の中でも例を見ない程、種族同士の関係性が悪いこの国。

どうすれば良いのかなんて、今は分からない。

それでも、何が正しいのかは分かる。

父と母の教えが、今も私の中に生きているからだ。

 

 

■名前

【エウスオーファン】

タミューサ村を拓き、仲間を集め、種族差別の無い集団の礎を作った男。

■種族

【人間】

■特化能力

【嗅覚】

■年齢

【56歳】

■特技

【懐柔】

■性格

【のんびり、柔和、隠れ激情家】

■容姿

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だいたいこんな感じ。もうちょっとグレーヘア。

バレンタイン事変

あけましておめでとうございます、坂津です。

今週火曜日はバレンタインでしたね。

3日も前のことを今更って感じですが、これを書いているのはバレンタイン当日なので許して下さい。

予約投稿の時差ってやつですね。

読者の皆様の中には、ちょっと気になってらっしゃる方も居られるのではないかと思い、僭越ながら報告させて頂きます。

彼らのバレンタインを。

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※画像はイメージです。実際の出来事とは一切関係ありません。

 

事の発端は加納くんの何気ない行動でした。

本当に、何の悪気も無い、ごく自然な好意からの行為だったのに。

 

加納「はい、これ。どうぞ」

坂津「え?なにこれチョコ?」

加納「ええ。本命のを作るついでの副産物ですが」

坂津「へー。ありがとう。本間さんにあげるんだよねぇ?」

加納「そうですよ。チョコ大好きって言ってましたから」

坂津「で、この副産物ってのは、もしや社内のみんなにあげるの?」

加納「はい。業務用スーパーで材料買ったら意外と多くて」

坂津「そっか・・・」

 

漠然とした不安を覚えました。

正体不明の不安、俗に言う「嫌な予感」ってやつです。

社員旅行以来ここ2日間、加納くんと本間さんはそれはそれは仲睦まじく微笑ましい状態でした。

お互いに気持ちに余裕が出来たようで、仕事へのモチベーションも高い水準で維持されています。

行って良かった社員旅行。

 

しかし。

 

加納「歩美先輩、これ、チョコです」

桐谷「皆の前で堂々と渡すのがカッコイイね加納くん!」

加納「どうせみんな知ってることですし。みなさんの分もありますよ」

桐谷「やったー!」

本間「あ、ありがとう・・・」

 

我が社では数年前から「社内での義理チョコ配布という不毛なイベントを廃止しましょう」という運動があり、特にバレンタインだからと言って机に義理チョコが山盛りなんてことは無くなっていました。

部署内の小さな輪の中で、日頃からお世話になっている上司にこっそり、みたいなのは継続されていましたけどね。

 

本間「ねぇ加納くん、これもしかして手作り?」

加納「ええ。溶かして再形成しただけですけどね」

本間「加納くん、男の子なのに・・・」

加納「え?ああ、海外では普通みたいですけど、日本でも逆チョコとか言われて、そんなに珍しいことでもなくなってますよ」

本間「違う違う。こんなクオリティで手作りなんかされたら、私のが渡しづらいなーって」

 

あー・・・そう来たかー・・・。

いや、そうなるわなぁ。

本間さんはお世辞にも料理が出来る方ではありません。

ひきかえ加納くんは器用にそこそこの腕前です。

さっき貰ったチョコも、溶かして再形成しただけと言いながらトリュフでした。

単に溶かすだけでなく生クリームやバターを入れてるはずですし、表面の仕上げは丁寧にココアパウダー仕様とクランチチョコ仕様の2パターンが用意されています。

これが「ついで」なら、本間さんがもらう本命はどんな様相を呈しているのでしょうか。

 

しかも。

 

加納「ああ、そんなこと気にしなくていいですよ」

本間「気にするよぉ~!私だって女子なんだから!」

加納「大丈夫ですよ。歩美先輩に手作りとか期待してないですから」

本間「ッ!?」

 

加納くん加納くん、それはちょっと語弊が在りすぎること山の如し。

桐谷さんも露骨なまでに「アチャー」な表情。

加納くんにしてみれば「期待してない」=「プレッシャーを感じる必要は無い」という意味の言葉だったんだと思います。

しかし言い方と表現とタイミングの全てが最悪です。

「たとえ買ったものでも、歩美先輩から貰えるなら嬉しいです」

みたいな対応がベターじゃないでしょうか。

 

カップル内でよくある感情のうち、相手に対して覚える「怒り」「疑い」「軽蔑」「失望」などは、その感情を向けられた側が努力によってそれを払拭できる可能性があります。

感情をぶつけられた側が挽回できるってことです。

しかし、どちらか片方が自身に向ける「劣等感」は、それを抱く対象から何を言われてもなかなか取り除くことができません。

劣等感は自己否定に繋がります。

劣等感は解毒が極めて難しい進行性の中毒です。

最初は他者との比較による自己嫌悪ぐらいから始まり、最終的には自分のやることなすこと、過去や未来にまで悲観的になってしまいます。

 

私は恋愛についてとやかく言える人間ではありませんが、お互いが対等と思えないような関係は長続きしないと思っています。

恋だ愛だも人間関係の一種であるという論点から言わせてもらえば、理想的な人間関係というのは、相互に信頼されていて、お互いにその信頼を自覚し、それに足る人物で在るよう高め合う関係です。

本来ならば「相手が自分に好意的である」という事実は「それに応えるために頑張る」という働きを促して然るべきなのです。

それなのに劣等感という毒は「自分はそれに相応しくない」というマイナスな受け取り方を助長してしまうのです。

 

そもそも本間さんは自分が年上であることで、加納くんをリードせねばという妙な使命感を持っている部分があります。

 

あの加納くんの言葉に対しては、本間さんは怒っても良い場面でした。

しかし反応は「しょぼーん」でした。

良い傾向ではありません。

怒ってくれた方がまだ取扱いが簡単です。

 

仕事中はこれ以上、特に何もありませんでしたが、明らかにテンションが下がっている本間さん。

無自覚であったが故に事態が飲み込めずオロオロする加納くん。

 

あとで桐谷さんから聞いたのですが、本間さん、初めて手作りのチョコを用意してたそうです。

桐谷さんはとりあえず「今日中に絶対それを渡すように」というアドバイスだけしたのだそうで。

定時きっかりで退勤の本間さん。

足取りがトボトボしています。

 

坂津「加納くん、さっきのはマズったねぇ」

加納「よく考えたら、誤解されそうな言い方をしてしまったと思います」

坂津「自覚があるなら大丈夫だね。今日はもう上がりな」

加納「はい、ありがとうございます」

 

あまり周りがとやかく口出しをするのは良くないような気もしますが、歳を取ると若人の一挙手一投足が気になって気になって仕方ありません。

余計なことをしないように、見守るだけに徹したいと思います。