『かなり』

干支に入れてよ猫

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毒虫

どうも、坂津です。

熱帯雨林の大秘境、前人未到の未開拓エリアにわざわざ足を踏み入れた冒険者が居たとします。

運の悪いことにその冒険者はそのジャングルで毒虫に噛まれてしまいました。

しかしその毒は全ての人類に対して毒性を発揮するというわけではありませんでした。

毒の影響には個人差があり、重篤な状態になる人はごく僅か。

大半の人には軽微な症状しか発生しません。

それどころか、ある特殊な病気の人には逆にこの毒が薬になって効果を発揮することも稀にありました。

しかし冒険者は叫びます。

「ここに毒虫が居る! 駆除しなければ!」

たまたま冒険者は、この毒によって重い症状が出るタイプの人だったのです。

冒険者は苦しみ、怒り、毒虫を憎みました。

今までそのジャングルにも、毒虫にも、その毒そのものにも、全く興味が無かった人たちに向けて叫びます。

「みんな気をつけろ! 噛まれて死ぬぞ!」

人々は恐怖します。

そんな毒虫が居るなんて、毒こわい、噛まれたくない。

「皆で森を焼き払い毒虫を駆除するんだ!」

そう、悪い毒虫は死滅せねば、これは良いことなんだ、正義なんだ。

 

大きなうねりとなった毒虫駆除のムーヴメント、その中に、小さな声がありました。

「重症化するのはごく一部の人だよ」

「それが薬になる人たちも居るんだ」

「わざわざ密林に行かなきゃ良いよ」

しかし一気に加熱した社会気運は留まることを知らず、これらの小さな声を押し潰しながら肥大化していきました。

 

やがて、誰もがあの毒虫のことなど忘れたころ。

まだ虫は全滅していませんでした。

あの毒が薬として効果を発揮する病気の人たち、そして彼らを支える人達の手によって、密かに隔離、保護されていたのです。

人里離れた僻地の地下深くに建設された極秘のシェルターの最奥に位置する隠し部屋。

 

その部屋に設置され厳重に施錠された金庫の中の毒虫たち。

 

ガチャン。

 

金庫の扉が開く。

 

冒険者「見つけた。こんなところに毒虫が。駆除しなきゃ」