『かなり』

干支に入れてよ猫

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分娩室前の廊下にて

どうも、坂津です。

私はこの記事を産科の分娩室前の廊下で書いています。

 

 

陣痛で苦しむ妻の腰に手を当てながら狼狽していると、助産師さんが分娩室に入って来ました。

痛みはどうですかという質問に「ギリギリです」と答える妻。

確かにこんな妻の苦悶の表情など見たことがありません。

相当に痛いのだと思います。

実は今回の出産で、私たちは無痛分娩を選択しています。

なので陣痛が激しくなってきた段階で麻酔を入れて貰わなければなりません。

しかし助産師さんは一旦退室し、すぐまた戻ってきました。

申し訳なさそうな顔をして。

 

「すみません坂津さん、もうちょっと我慢できますか? 実は今、お隣がもうすぐ生まれそうなんです」

 

聞けば今日、なぜかこの産院は大忙しなのだそうで。

満月でも新月でもない日なのに、不思議と集まる臨月の妊婦さんたち。

しかし、それはそれ、これはこれ。

どんなに予想外の出産ラッシュだとしても、妻の麻酔処置を後回しにはされたくありません。

 

「それは大変。是非そちらを優先してあげてください。私はまだまだ大丈夫です」

 

妻の口から出た言葉に驚く私。

だって死にそうな呻き声だったじゃん!?

ギリギリって言ってたじゃん!?

なんやのん!?

そんなん・・・惚れてまうやろぉぉーッ!!!

 

そんなこんなで、ようやく先生が妻のところに来てくれたのは約2時間後。

内診もするというので私は分娩室を追い出されたと言うわけです。

 

確かに院内は騒然としていました。

隣の分娩室からは絶叫が。

そして喚声&拍手。

続いて「おぎゃあ」

 

ナースステーションでは受話器に向かって看護師さんが何やら剣呑な雰囲気。

「え?母子手帳が無い?破水してる?いや、せめて何週目なのか・・・覚えてない?・・・ん~・・・」

 

外から聞こえてくる救急車のサイレンが近付いてきて、どんどん大きくなり、そしてピタッと止まります。

つまりこの病院に到着したということ。

本当に、一体何のカーニバルなのかという状態。

 

さて、そんな中、先生が廊下の私に声を掛けました。

これから分娩室に入ります。