『かなり』

干支に入れてよ猫

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じいちゃんの超能力

どうも、坂津です。

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」

私のおじいちゃんは大変な変人です。

今までも何度かエピソードを紹介していますが、本当におかしな人でした。

田舎という言葉では言い表せないほどの田舎だったじいちゃん家。

自然いっぱいと言うか自然そのものって感じ。

いつもは、そんなじいちゃん家にこちらから訪ねて行くのが普通でした。

しかしとある夏休み、じいちゃんがウチに来るという逆パターンがありました。

そのときのじいちゃんはとにかく、破天荒だったのです。

なんか色んな出来事があったのですが、中でも一番鮮明に覚えているのが『じいちゃんの超能力』でした。

 

小学生当時の坂津家は幹線道路の近くにあり、夏休み中と言えども交通量はそれなりに多い場所でした。

特に通勤帰宅の時間である朝や夕方は渋滞が発生するほど車が多く、危ないから道路近付いちゃダメという御触れが出ていました。

それなのに。

 

爺「佳奈、今日はあの道路を渡るんじゃ」

私「ダメだよ!車が多いから危ないよ!」

爺「あぶない?ちっとも危なくないぞ?」

私「車にひかれたら死んじゃうんだよ?」

爺「大丈夫じゃ。ワシには超能力がある」

私「えっ!?嘘・・・え!?本当に!?」

爺「今までずっと黙っとったんじゃがな」

私「(ごくり)」

 

じいちゃんは悪戯っぽい笑みを浮かべつつ、私の手を引いて道路へ向かいました。

そして、ビュンビュン自動車が行き交うのを見ながら私に「どんなに車が速く走ろうが、何十台走っていようが、指先ひとつで止めることができるんじゃ」と言いました。

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もう皆さんはじいちゃんの魂胆が分かっちゃいましたよね。

 

でも当時の私は、じいちゃんが一体どんな超能力を見せてくれるんだろうとドキドキしながら見守りました。

じいちゃんは人差し指をピンと立て、そして、歩行者用信号機の押しボタンを押しました。

すぐに車道側の信号機が黄色、そして赤になり、渋滞が発生しました。

私はポカーン。

しかしそのすぐあと『確かに、指先ひとつで、車を止めた』という事実に気が付き、じいちゃんの柔軟な発想に感動しました。

それから何度も、横断歩道を渡るわけでもないのに押しボタンを押しまくりました。

 

爺「ワシは、指先ひとつで車を止めた!」

私「本当だね!じいちゃんすんげぇッ!」

警「こらこらこらちょっと何やってんの」

 

近所の人から警察に通報があったらしく、おまわりさんに怒られました。

それでもじいちゃんは「ワシの里にこんな装置は無くてな、面白くてつい押しまくってしまった。すまんすまん」と豪快に笑いました。

謝ってるのに謝ってない感じがとても格好良く見えたのを覚えています。

今考えたらとんでもないクソジジイですけどね。

 

夏休み、じいちゃん家に行くのは、いつもの日常を抜け出してファンタジー世界に行くような気分で楽しかったのですが、それは田舎だからそう思えたんじゃ無かったようです。

いつも何気なく見て触れていた世界なのに、じいちゃんの角度から眺めると、そこはまるで異世界でした。

見慣れた世界、見飽きた世界、いつもと同じつまらない世界。

自分の身のまわりをそのように変えていたのは、他ならぬ自分自身だったのだと、年寄りなのに腕白なじいちゃんが、教えてくれたのでした。