どうも、坂津です。
私は昔から味の想像ができない子でした。
コレにソレを足すとどんな味になるのか、という想像ができないのです。
よくあるパターンで言えば、サラダにかけるドレッシングや、お寿司につける醤油など、どのくらいの量でどのくらいの味の濃さになるのかサッパリ分からないのです。
なので、濃過ぎて素材の味が分からなかったり、逆に薄過ぎて物足りなかったりするのが日常茶飯事でした。
奇特な例で言えば、お煎餅アイスを作ろうとしたりしました。
アイスクリームやアイスキャンディって、甘いのしか無いじゃないですか。
なので、醤油煎餅味のアイスを食べたければ自分で作るしかないと考えたのです。
そして実行したのが、煎餅を袋の中で粉々に砕いて水の中に入れて凍らせるだけのお手軽レシピ。
美味しいワケが無いんですよね。
こんなの、単に異物が混入した氷ですからね。
かってぇし。
それから、そうめん。
めんつゆの味に飽きてしまった私は「同じような色だから」という理由だけでコーヒーにそうめんを浸けて食べて激しく後悔したり。
とにかく『それ、やる前に分かっただろ?』という間違いを事前に舌の上で察知できない子だったのです。
そんな私ももうすぐ四十路。
味の違いが分かる大人になったつもりです。
私「うわ!なにこれ!コレめっちゃ美味しい!」
妻「そう?良かったぁ。お口に合ってなにより」
私「口に入れたときにフワッと香るゴマの風味」
妻「・・・え?ゴマなんて入れてないんだけど」
私「飲み込んだ後で舌に残るショウガの風味も」
妻「待って待ってショウガなんて入れてないよ」
私「わ!このお肉すんげぇ美味しいんだけど!」
妻「長時間コトコト煮込んだ甲斐があったねぇ」
私「これは間違いなく赤ワインで煮込んだね?」
妻「いいえ、違います。1ミリも入ってません」
私「そうか、でもコンソメは入ってるよねぇ?」
妻「残念ながらコンソメも配合しておりません」
こういうコトが続くと、だんだん妻も私の舌がどのようなレベルなのか理解ってきます。
どんな予想外の解答が返ってくるか楽しみながら出題してきたりします。
妻「さて、これには何が入っているでしょう?」
私「ん~・・・分かった!ハチミツだ!絶対!」
妻「逆になぜそう思ったのか聞きたいが不正解」
私「え~・・・じゃあ黒砂糖でしょ!?絶対!」
妻「なぜ絶対と言えるのか謎だけど入って無い」
私「分かった!メイプルシロップだよ!絶対!」
妻「旦那の舌の構造が面白いのは良く分かった」
でも正直、こんなに馬鹿舌だと奥さんとしてはご飯の作り甲斐が無くて申し訳ないような気持ちにもなるんじゃないかと思います。
私だってその自覚はあるのです。
私「というワケですまないとは思っているんだ」
妻「私は別にそんなマイナスに捉えてないよ?」
私「一生懸命に作っても味が分からないのに?」
妻「何を食べても『美味しい』って言うじゃん」
私「うん。だって本当に全部が美味しいからね」
妻「だったらそれ以上に何を望むと言うのかね」
私は本当に良い奥さんを貰ったなぁと思うのです。
妻の料理は私以外が食べても美味しいと言いますから、やっぱり本当に美味しいのです。
そんな料理上手であるにも関わらず、味の機微が何一つ分からない私に文句を言うこともありません。
私は幸せです。
ただ、私の舌が息子に遺伝しないことだけを切に祈っているのであります。