『かなり』

ハロウィンとクリスマスの移行期

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「何でも相談してね」と言って良いのは本当に何でも受け止められる奴だけだ

どうも、坂津です。

むか~しむかし、もう15年くらい昔のことです。

初めて店長という役職に就き、初めて部下という存在を得たときのこと。

 

私は、どちらかと言えばリーダーシップを執るタイプではありません。

褒められて伸びるタイプの、できることなら有能な上司に使ってもらいたい人材なのです。

自分で自分をコントロールするよりも、もっと上手く私を使える人が居るはずだと思っています。

なので、自分だったらこんな上司の下で働きたいなぁという『理想の上司像』というものがありました。

これはいつもの下らない有り得ない意味の無い妄想とはちょっと違っていて、割と現実味のあるちゃんとした『理想像』でした。

 

その像の特徴のひとつに『仕事とプライベートを区別しない。ただし混同はしない』というのがありました。

就業中の自分も、オフの自分も、同じ一人の人間であるはずなのに、そこをあまりにもくっきりハッキリ分けて考えると、色々な不具合が生じてしまうというのが私の持論です。

人間には多面性があり、そのどれもが等しく自分なのです。

どちらかが優先されるだとか、どれかが本当の自分だとか、そんなことはありません。

状況によって不定型に変容する、それが人間であり、私なのだと。

このような『自己の全面容認』を起点にしなければ良い仕事をすることは難しくなるし、良い人生を送ることも困難になると思っています。

 

ですから、私はあの当時、初めて持った部下に対してこう言いました。

 

「仕事上でなくとも、困り事や悩みは何でも相談してくれ」

 

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もちろん解決できる確約はできません。

しかしその問題に対して一緒に悩んで一緒に解決を図ることこそが重要と考えました。

ただ、初対面の人間にいきなり心を開くような人は稀有です。

腹を割った相談というのは、それが出来るようになるまでに時間を要するのです。

私はこの時間をなるべく短縮するため、私の方から色々と部下に相談を持ちかけるように努めました。

 

それは取るに足らない些細なこと。

もちろん仕事に何も関係の無い完全なプライベートのこと。

 

部下は車に興味がある子だったので

「次に買う車はどんなのが良いかな」とか。

 

お菓子作りが得意な子だったので

「チーズケーキが上手く膨らまないんだ」とか。

 

そうこうしてるうちに、部下もだんだんとプライベートについて話してくれるようになりました。

仕事終わりに、一緒にご飯を食べに行ったりするようにもなりました。

 

部下「坂津さん、次の休みの前の夜、麻雀やりません?」

坂津「お、良いね。じゃあ他に2人用意しないとな」

部下「俺が声掛けて集めますんで!」

坂津「んじゃ頼むわ」

 

部下「スノボ行きましょスノボ」

坂津「よし、シフトの調整しよう」

部下「新しいボード買ったんスよ俺」

坂津「マジか~良いな!楽しみだな」

 

もちろん遊びだけじゃありません。

こういう関係ができると、仕事の方も上手くいくようになるんです。

阿吽の呼吸とでも言うべきか、こちらが「こうして欲しい」ということを、指示する前にやってくれるようになるんです。

 

坂津「おお!これやっといてくれたの?ありがとう!」

部下「坂津さんならこうしろって言うと思ったんで」

坂津「うんうん。パーフェクトじゃん」

部下「あざーっス!」

 

そんなある日、仕事終わりに部下から声を掛けられました。

 

部下「お疲れ様です。坂津さん、この後ちょっと時間あります?」

坂津「ん?飯?良いよ~」

部下「いや、軽くドライブでも」

坂津「???かまわんよ」

 

こうして部下が運転する車の助手席に乗り込み、夜の街を走り抜けました。

いつもの軽口を叩き合う雰囲気と違う、なんだか真剣な感じを受けたので、何か相談があるのかと思い私は部下の言葉を待ちました。

しかしいつまで経っても本題は始まらず、二言三言を交わすだけの静かな車内でした。

やがて車は山を越えていつの間にか海が見える道路を走っていました。

 

坂津「おお、海か。ちょっと停めて歩かないか?」

部下「いいですね」

坂津「真っ暗だけどな」

部下「花火とか買ってくりゃ良かったですかね」

坂津「いいよガキじゃあるまいし」

部下「ですね」

 

沈黙。

星がよく見える晴れた夜でしたが月は糸のように細く、灯りとしては頼り無いものでした。

視覚情報が不足すると代わりに聴覚が冴えわたります。

波の音が、昼間とは全く違う印象に聴こえてきたりします。

そんな中。

 

部下「坂津さん、別に相談ってワケじゃないんですけどね」

坂津「おお」

部下「ちょっとお伝えしたい事がありまして」

坂津「ふむ。なに?」

部下「あのですね・・・」

 

沈黙。

波の音が2回。

ザザーン ザザーン。

 

そして。

 

部下「俺、ゲイなんですよ」

 

ザザーン ザザーン。

 

坂津「うん。知ってた」

部下「マジでッ!?」

 

本当は知りませんでした。

召されてもおかしくないほど驚いていました。

真っ暗だったことが幸いして、私の驚愕の表情は部下にバレていません。

口から半分ほど魂が抜け出た状態で、私は「知ってた」と言いました。

特に何か策があったわけではありません。

とにかく「驚いた反応をしちゃいけない」という強迫観念めいたものがあり、極めて平静を装おうとした結果の「知ってた」でした。

そしてその魂をチュルリと吸い込み、気を取り直して頭をフル回転させました。

 

この暴露の意味は?

なぜこれを私に告白する?

それはともかく「知ってた」ことの辻褄を合せなければ。

こいつとの思い出を可能な限り思い出せ!

それらしい素振り、行動、言動は無かったか?

このあとこいつは絶対に「いつから気付いてた」「なぜ分かった」と聞いてくるッ!

 

部下「いつから、気付いてたんですか?」

坂津「(キターッ!!!)・・・割と最近だけどな・・・」

部下「なんで分かったんです?」

坂津「(キターッ!!!)・・・ほら、お前すげぇ女好きアピールしてたじゃん」

 

この子、とにかく女の子大好きみたいな会話をよくしていたのです。

しかし私はZ軸のある女性リアルガールが大の苦手でしたので、その手の話が発展することは無かったのですが、それでも事あるごとに「今の子めっちゃ可愛い」とか「ちょとナンパしてこようか」とか言ってました。

さっきの告白を聞いた後ならあれがカムフラージュだったとも、思えたのです。

 

坂津「どちらかと言えば私は、結構何でも深いところまで自分のことを話しちゃうタイプなんだけど、それは実は『本当に隠したい部分』を隠す為ってのも大いにあるんだわ。んでお前の女好き発言も、もしかして何かを隠す為なのかもって思ってな」

↓この発言みたいな記事を以前にも書きました。

 

このとき話した内容は全て後付けのアドリブでした。

それが気付かれなかったのか、気付いたけど飲み込んでくれたのかは分かりません。

しかし、結果的に部下の顔は晴れやかでした。

 

部下「あー、これでもう隠し事ねぇッスわ~」

坂津「心苦しかったの?」

部下「そりゃまぁね、やっぱ後ろめたいモンがありますよ」

坂津「ま、よく話してくれたよ。ありがとう」

部下「ちなみに、坂津さんは完全に対象外なので悪しからず」

坂津「なにそれ。残念なのか喜ぶべきか分かんねぇよ」

 

このときは本当にラッキーだったと思っています。

私は自分の器も考えずに気軽に「何でも相談してね」と言っていたのだと思い知らされました。

これ以降、誰の何でもなるべく受け止められるようになりたいという目標が、私の中に生まれたのでした。