どうも、坂津です。
お昼ご飯を食べに行った定食屋さんで、隣のテーブルからすごい会話が聞こえてきました。
女「それでね、お隣の奥さんが私に言ったのよ」
男「なんて?」
女「『この絵を貰ってくれませんか』って」
男「は?だってその絵、100万円とかするんでしょ?」
女「そうなのよ。それで私もびっくりしちゃって」
別に聞き耳を立てていた訳ではないのですが、自然と聞こえるくらいの音量で会話をされていたのでついつい内容を追ってしまいます。
この会話に登場するのは話し手の女性と、近所に住むご夫婦の三人でした。
近所の奥さんが最近、とても高価な絵を衝動買いしちゃったのだそうで。
でもそれを自宅に飾ると旦那さんにバレちゃう。
自分としては購入したことで物欲が満たされたので、手放すのは惜しくない。
ただ、身近に在れば観に行くことができるので、話し手の女性に「できれば貰って欲しい」と依頼してきたと、そんな話でした。
男「でもそんな高価な買い物、現物が無くたってすぐバレちゃうだろうに」
女「それは大丈夫らしいわよ?あそこのお宅すごいお金持ちだから」
男「だったら逆に、何で旦那さんにバレちゃダメなんだろうな?」
女「旦那さん、芸術にはまるで理解が無いんですってよ」
男「なるほど。自分が価値を理解してるものには寛容だけど、許容外の物への出費には厳しいってことか」
女「たぶんね」
男「それで、どうするの?貰うの?」
女「それがね・・・どうやって断ったら良いかと思ってるの」
男「でも高価な絵なんでしょ?貰っても損は無いんじゃない?」
女「私も話を聞いただけだったらそう思ってかたかも知れないんだけど・・・」
男「ん?」
女「どんな絵か、スマホで撮った写真を見せてもらったのよ」
男「ほうほう」
女「すっごい気持ち悪い絵なの」
この場にその画像は無いようで、女性は男性に、その絵がいかに気持ち悪いものであるかを言葉を尽くして説明しました。
まとめると、こんな感じのことを言われていました。
・全体的に暗い青でぼんやりしてる
・中央に青白い人影
・人影は女性のように見える
・手をあげている
・見上げているように見える
・井戸の底に居る感じ
・表情が無い
これらの情報を元に私が妄想したのがコチラ。
うん、確かに気持ち悪い。
男「じゃあ飾らずに貰うだけ貰っとけば?」
女「家に置いとくのも嫌なのよ」
男「そう?勿体無い気がするけど」
女「あなたもあの絵を見たら絶対嫌だって言うわ」
男「そっか。まぁ、断るしかないね」
女「そうよね。はぁ・・・何て言えば良いのかしら」
男「気に入って買った人に向かって『気持ち悪いから』とは言えないしなぁ」
女「うん。絶対言えない。困ったわ・・・」
男「あ、じゃあ猫が引っ掻いて破ったら悪いから、とかどう?」
女「素晴らしい名案だけど、ウチに猫は居ないわね」
男「じゃあ、熱帯植物を育ててるから部屋が高温多湿で絵の保管に向かないとか?」
女「よくもまぁそんな案が出てくるって感心するけど、熱帯植物も無いわ」
男「ん~・・・困ったねぇ。貰ってすぐ売れるんなら良いのにね」
女「そうなのよ・・・ああ、本当にそうしちゃおうかしら」
男「でも遊びに来た時に絵が無いのは問題だよね」
女「そうね。何か良い言い訳があれば良いけど」
と、ここで私の食事が終了。
休日で一人ならば良かったのですが、生憎と仕事の昼休み中、上司と一緒に行った店でした。
私は後ろ髪を引きちぎられる思いで席を立ち、退店しました。
結局どうやって断ることにしたのでしょうか。
気になって仕方ありません。
私は帰りの車内、上司に会話を振ってみました。
私「さっきの隣の会話、聞こえてました?」
上「ああ、絵のやつだろ?」
私「あれ、どうやって断るんですかね?」
上「てゆーかあれ、女の方がたぶん詐欺師だろ」
私「はっ!?」
上「絵を貰ってしばらくしたら売るから、それを山分けしようって話になるんだよ」
私「どうやってそんな流れになるんです?」
上「まず、あの二人今日が初対面だったはず。最初に女が名刺渡してたからな。でも会話が妙にフランクだったから、たぶんSNSとかで何度か交流があったんだろう。で、あの絵の話は『男が絵を預かる』って流れになると思うよ。だけど万が一傷でもついてしまったら売るときに価値が下がってしまうから、美術品保険に入ろうとか言い出すんだよ。私も半分出すとか言ってね。そんで5万とか10万とかふっかけて、でも絵が売れれば30万とか40万とか手に入るわけだからってその気にさせるんだ。最終的に男の方は、待てど暮らせど絵は届かないし連絡も無いって感じかな」
私「アンタ何者なんだよ」
上「若い頃に引っ掛かったことがある」
私「マジすか」