どうも、坂津です。
↑コレは私(夫)視点での
この記事を公開した日の夜、帰宅するといきなり噛み付かれました。
私「ただいま~」
妻「
私「ッ!?」
妻「今日の記事だ!歴史を歪めおって!」
私「私にとってはあれが正史ですがッ!?」
妻「旦那よ、歴史とは常に勝者が残すものだろう?」
私「えっ」
妻「私に勝ったと思っているのか?」
私「滅相もございません!」
妻「では正しい歴史をッ」
私「ははぁーッ!(土下寝)」
妻「それから・・・ッ!」
私「まだあるんスか」
妻「あの頃の私はコンタクトだった!」
私「御意ッ!」
妻「髪はもっとシャリシャリしてた!」
私「シャ、シャリシャリッ!?」
妻「もっとナイフみたいに尖ってた!」
私「どこがアァァァーッ!?」
取材、タイピング:坂津旦那 ⇒ 夫
記憶想起、語り部:ラブやん ⇒ 私
私「坂津さん、今日からよろしくお願いしますね」
夫「おっけーw」
私「(コイツ軽いゾ・・・)じゃあ色々教えますから」
夫「とりあえず一服してくるんで、その後でお願いしますわ」
私「(何だコイツ・・・)早くしてくださいね」
私の職場に配属された新入社員は想像以上にテキトー人間だった。
岩手ラブ、二十歳、春。
彼は私よりも三歳年上ということらしいが、大学生というのは皆こんなものなのだろうか。
もしそうだとしたら大学なんてバカの量産施設じゃないか。
学校と言う制度が社会で生きるための心得を教えないというのなら、そんな形骸化した見栄だらけの抜け殻教育に何の意味があろう・・・。
いや、今はそんな根本的なことよりも、目の前のコイツだ。
社会人として、仕事をするという意識が低すぎる。
給料を貰うってのはそんなに簡単なことじゃないんだぞ。
でも毛嫌いしてても始まらないし、一応、親睦を深めるという意味で昼食を一緒に食べてみようか。
これから一緒に働く仲間だしね。
私「坂津さん、お仕事覚えられそうですか?」
夫「大丈夫大丈夫。こう見えて小器用だから大体のことは出来るし」
私「そ、そうですか(すげぇムカツクなコイツ)」
夫「それよりもさぁ岩手さん、悩みがあるんだけど聞いてくれる?」
私「な、なんでしょう?(初対面で!?)」
夫「いま付き合ってる彼女とさぁ、どうやったら上手に別れられるかなって」
私「・・・は?(なにコイツ馬鹿なの死ぬの?)」
夫「いや、なんかすげぇ束縛してくんのよ」
私「は、はぁ・・・(知らねーよキモイな)」
夫「見てよこの着信履歴。有り得ないでしょ」
私「(秒単位ッ!?)確かに、すごいですね。でも・・・」
夫「でも?」
私「初対面でいきなり話す内容じゃないと思います」
夫「へ?なんで?」
私「私は坂津さんのこと何も知りませんので、何のアドバイスもできません」
夫「岩手さん、真面目だねぇ・・・」
なんなんだ坂津・・・。
ちょっとマジありえないんだけど。
責任感どころか普通に働く気も皆無だし人間性も最悪だしキモい!
職場では「姫」と呼ばれてる私だけど、これからは心を「鬼」にしてアイツを鍛えつつ、仕事は私一人で回すくらいのつもりで頑張らなきゃ!
夫「ひめちゃん、最近ちょっと無理しすぎじゃね?」
私「(誰のせいだと・・・)そう思うならもう少し働いてください」
夫「そーだねー。ひめちゃんのお陰で、なんか最近仕事が面白いんだ~」
私「(え?)そ、そんな風には見えませんけど」
夫「そう?やったらやった分だけ評価されるから、面白いよ」
私「評価に繋がらないことも多いと思いますけどね」
夫「そこはほら、アピールの方法?(笑)」
私「アピール?」
夫「せっかく頑張るんなら、どうやったらそれを評価してもらえるかまでセットで考えたいよね」
私「(考えたことも無かった)別に評価なんて、いずれ付いてくるし・・・」
夫「ダメダメ。それじゃ勿体無いでしょ?
私「う、うん・・・」
最初の印象が最悪だった影響か、少しずつ坂津さんがマトモになってきた気がする。
普通に仕事してるだけなのに、それが「成長した」と思えるのはきっと、あの、アレだ。
雨の日に不良が子猫を拾ってたりすると急激に好評価に転じるあの現象だ。
心底ズルい。
夫「あ、ひめちゃん、それ私がやっとくから置いといて」
私「ええ、じゃあお願いします」
夫「今日はそんな忙しくないから休憩長めでも良いよ(笑)」
私「・・・じゃあお言葉に甘えて」
なんだろう。
坂津さんが仕事にやりがいを感じてるのは分かる。
仕事を楽しんでいるのも分かる。
責任感も出てきたし、新しい仕事を覚えるのも早い。
でも、彼の成長に反比例して私自身のモチベーションが・・・。
夫「どーしたのひめちゃん!?すっげぇ顔色悪いよ!?」
私「ちょっと体調悪いだけだから」
夫「いやいや、それちょっとじゃないでしょ!帰りな?」
私「でも仕事が・・・」
夫「気にしない気にしない!そんなの私がやっとくからさ」
私「・・・じゃあ・・・」
唐突に理解した。
私はなんだかんだ言いながら、坂津さんに自分の居場所を取られたって思っていたんだ。
もうここに私は居なくても大丈夫・・・自分がそう思うこと、人にそう思われることが怖かったんだ。
私には、彼みたいに自分の価値を相手に飲ませるようなことはできないし。
私「辞めたい・・・」
夫「ッ!?」
私「しんどい・・・」
夫「ひ、ひめちゃんはちょっと頑張りすぎだからねぇ」
私「もうやだ・・・」
夫「わ、分かった。何か美味しい物でも食べに行こう?」
もうこの職場に私なんて必要ないはずなのに、なぜこの人は私を引き止めるんだろう?
毎日毎日仕事が終わって遅くまで。
私の尽きること無い愚痴を、ただ黙って聞いてくれる。
ウチの会社には仕事に対してテキトーな奴が多過ぎだ、とか。
もっとプロ意識を持ってお客様のために誠心誠意まじめに真剣に臨むべきだ、とか。
私「だから、商品の勉強会はもっと頻繁にすべきです」
夫「私もそう思ってたところだよ」
私「せめて私たちの周囲だけでも、やりませんか?」
夫「ああ。企画してみよう」
私「自分が心から良いと思える商品じゃないとお客様におすすめできません」
夫「まったく同感だ!」
しかし、よくぞここまで成長したなぁ坂津さん。
入社当初はどうなることかと思ったけど、今や私の思想を立派に理解し受け継いでいるじゃあないか。
やっぱり、もうこの職場に私の居場所は無いな・・・。
この人が居ればもう大丈夫。
この人が居れば・・・え?
ちょっ!
車っ!
左っ!
ブレーキ!!
ああああああああッッッ!!!
私「・・・(運転が荒いなとは思ってたけども)」
夫「いやぁ、ごめんねひめちゃん」
私「・・・(まさかこんな事故を起こすとは)」
夫「怖かったよねぇ。ごめんごめん」
私「・・・(コイツ、放っとくとコロリと死ぬんじゃなかろうか)」
夫「じ、じゃあ、帰ろっか・・・」
私「・・・帰りたくない(このまま帰すと危ない気がする)」
夫「ッ!?」
私「・・・怖かった・・・(この事故で平然としてるアンタが怖い)」
夫「そうだよね、ごめんね」
夫「どう?少しは落ち着いた?」
私「・・・坂津さん」
夫「は、はい」
私「私が隣に乗ってるとき、ちゃんと安全運転を心掛けてます?」
夫「モチのロンさッ!!」
私「・・・じゃあ一人の時は?」
夫「そ、それは・・・ほどほどに・・・?」
私「ダメ!あなたが怪我でもしたら(職場が)困ります!」
夫「ッ!!」
私「これからも、私が隣に乗っててあげますから、安全運転してください」
夫「ひめちゃん・・・ありがとう」
私「でも、ただの同僚がいつも助手席に乗るっておかしいですよね」
夫「そうかな?」
私「完全におかしいです」
夫「え?じゃあ、どうすれば良いの?」
私「そうですねぇ、いつも助手席に乗っててもおかしくない関係に・・・」
夫「それって、付き合うってこと?」
私「坂津さんの安全運転のためには、それも仕方ないですね」
夫「・・・え?」
私「嫌なんですか?」
夫「滅相もない!そりゃもう願ったり叶ったりでございます!」
え?これが正史なの?