『かなり』

干支に入れてよ猫

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大掃除をするハズだった

あけましておめでとうございます、坂津です。

年末にとても不思議な体験をしました。

今思い起こしても謎です。

なぜあんなことになったのか、記憶の限りなるべく詳細に書き残したいと思います。

 

年末でした。

年内最後の出勤日。

対外的には休業日でした。

従業員総出での大掃除が恒例です。

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さてさて、今年の掃除場所はどこかな?

掃除する場所と人は毎年変わります。

総務課から配布された当番表を確認しました。

 

坂津、加納・・・>自転車置場(終日)

 

おや?

自転車置場の掃除に丸一日もかからないし、まして二人も要らないぞ?

 

坂津「加納くん、コレおかしいよね?」

加納「そうですね。このままだと楽すぎますね」

坂津「黙っとく?」

加納「そのぶん他の場所が大変になりますから、申告しましょう」

坂津「そう言うと思ったよ」

 

私と加納くんは掃除当番表を持って総務課へ行きました。

 

坂津「ねぇねぇ、コレ、ほらココ」

総務「はい。何か?」

加納「自転車置場の掃除ならどれだけ丁寧にやっても1人で2時間程度あれば完了できますので、人員配置の意図をお伺いしたいと思いまして」

総務「ああ、なるほど、それ掃除じゃ無いんですよ」

加納「と、言いますと?」

総務「作ってください」

坂津「え?」

加納「え?」

総務「ですから、作ってください。自転車置場」

 

要約すると、我社の社屋と駐車場には徒歩5分程度の距離があるのですが、その距離を歩くのを嫌がる方々が駐車場に自転車を置いているのだそうで。

しかもその台数は日に日に増えて、今では10台ほどになっているとか。

で、今は野晒しになっている各自の自転車を、仮でも良いので置場を作ってまとめられるようにしたいという要望があったのだそうです。

 

総務「というわけです」

加納「でも、仮とは言え自転車置場ですよ?」

総務「予算は5万円です」

加納「それが多いのか少ないのかも分かりません」

総務「横幅は5mくらい無いと全部入りません」

加納「どうしますか、課長」

坂津「とりあえずホームセンターに行ってみようか」

 

私は、大掃除をするために出社したはずだった。

それがなぜか加納くんを乗せてトラックを運転している。

行き先はホームセンター。

おかしい。

何かがおかしい。

 

加納「既製の物で使えそうな物は見当たりませんね」

坂津「だろうなぁ。有ったとしても5m級が5万円なんてことは無いだろうし」

加納「どうします?」

坂津「鋼管を組んでみようか」

加納「こうかん?」

坂津「工事現場なんかで足場を組んでるの見たこと無い?」

加納「あの、鉄パイプみたいなやつですか?」

坂津「そうそう。ほらこれ」

加納「あ、意外と安いんですね」

坂津「2mのが950円でしょ、1mのが450円、直交クランプが238円ね」

加納「なんでそんなに詳しいんですか?」

坂津「演劇部の大道具ってのは何でも自分で作るんだよ」

加納「な、なるほど」

坂津「自在クランプも238円か。あと垂木クランプとスレートと木材ね」

 

なんとかぴったり予算内で(おつり400円ほど)材料が揃いました。

寒風吹き荒ぶ駐車場の、その横の空き地で組み立て作業を開始です。

今日は大掃除のはずだったのに。

 

坂津「じゃあ支柱の場所を決めて、1mの鋼管を打ち込もうか」

加納「え?組み立てて置くだけじゃないんですか?」

坂津「それじゃ強風で動いちゃうからね」

加納「なるほど。勉強になります」

坂津「もう二度と使うことの無い知識だと思うよ」

 

ご近所さんに響き渡る カーンッ カーンッ という金属音。

やがて50cmほど地中に埋まった鋼管に、支柱用の鋼管を直交クランプで固定していきます。

これ文章で打ってもまるで状況が分からないですね。

まぁアレですよ。

重量感のあるレゴみたいなもんですよ。

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こんな感じで組み上がりました。

写真ではちょっと頼り無さ気に見えますが、すごく頑丈です。

一番奥の柱から手前の柱まで、5mもあるんですよ。

 

あとは垂木クランプで鋼管に固定した木材にスレートを打ち付けて屋根を作ります。

これも文字だけじゃ何が何やら分からないですね。

とりあえずそんな作業をして、組んだ鋼管に屋根を乗せます。

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ショボイですが、素人が低予算で作ればこんなものでしょう。

私的には大満足です。

本来なら付ける必要も無かった屋根まで装備したのですから。

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充分充分。

単管キャップ(鋼管の先に付いてる黄色いやつ)を忘れず付けるあたりが私っぽい。

うん。満足。

 

しかし、不満足。

 

今日は大掃除をするハズだったのです。

 

加納「いやぁ、できるもんですね」

坂津「プロならちょちょいと1時間くらいで組んじゃうんだろうけど」

加納「でも僕、こんなの作ったことないんで、なんだかちょっと感動です」

坂津「だけど・・・だけどね加納くん」

加納「はい?」

坂津「私たちの大掃除は何も終わって無いんだよ」

 

全社的な大掃除は当番表の通りに割り当てられた箇所を各自が掃除します。

それを定時の1時間前までに終わらせて、あとは自分の机の周辺を掃除してから定時を迎え、1年の終わりとなるのが恒例です。

しかし私たちは夕方までたっぷり時間をかけて自転車置場を組み立てたので、これから会社に帰ってまだ自分の大掃除をしなくてはならないのです。

 

坂津「きっともうみんなは掃除を終えて、すっきりした気分なんだろうね」

加納「大丈夫ですよ、課長」

坂津「さすがに若いねぇ。おっちゃんはもう腰が痛くて大変だよ」

加納「まぁ、帰りましょう」

 

事務所へ帰ると加納くんが加納くんらしからぬ一面を見せました。

まるで少年のように目を輝かせてはしゃいでいます。

 

加納「これ、見てください。ほら、僕と課長で組み立てたんですよ」

桐谷「へー。思ったより丈夫そうじゃん」

加納「丈夫なんてもんじゃないですよ。ビクともしません」

本間「そうなんだ。あ、屋根もついてる」

加納「そうなんです。すごく重かったんですけど、頑張りました」

桐谷「偉かったねぇ。よしよし」

加納「あとは周囲に壁でも付けたいですけどね」

本間「あら、加納くん何かスイッチ入ってる?(笑)」

 

スマホで撮影した写真を見せながら嬉々とする加納くん。

私は軍手を外しながらやれやれだぜとばかりにため息をつく。

 

坂津「加納くん、じゃあ我々は自分の掃除に取り掛かろうかね」

加納「ああ、大丈夫ですよ。ね?」

桐谷「そりゃもう」

本間「トーゼン」

坂津「・・・? ま、まさか・・・!」

 

たまには大掃除をしない年末も、良いものでした。