どうも、坂津です。
外科医とか内科医とか麻酔医とか、お医者さんってそれぞれ専門がありますよね。
このような専門のお医者さんが言うことを、ふんわりと分かりやすく伝えてくれる役割のお医者さんって居ないんですかね。
皆様は
「大丈夫ですよ、成功率は95%です」
と言われて、安心できますか?
私なら特に気にせず受け入れますが、どうやら母は違ったようです。
医師「坂津さん、この手術はそんなに難しくないから大丈夫ですよ」
母親「あの、でも、5%は失敗するんですよね?」
医師「それは不慮の事態を想定しての数字ですから」
母親「例えば、私の手術中に南海トラフが爆裂したら、とかですか?」
医師「爆裂?・・・そりゃ手術中じゃなくても危険でしょうけどねぇ・・・」
母親「あ、じゃあ先生がくしゃみするとか?」
医師「手を離してからしますので、大丈夫ですよ」
母親「じゃあ何が不慮の事態なんですか?」
医師にとっては面倒な患者なのだろうと思います。
でも、まぁもっともな疑問だとも思います。
坂津「母ちゃん、よく考えてみなよ。車は平気で運転するだろ?」
母親「???・・・うん。する」
坂津「普段はあんまり聞かないけど、交通事故が何件起きてると思う?」
母親「知らんけど」
坂津「確か去年は50万件以上だったかな」
母親「そんなに!?」
坂津「そ。でも車に乗るときはそんなの気にしないだろ?」
母親「うん。気にしない」
坂津「それと比べたら今回の5%なんて全然怖くないだろ?」
母親「うん。怖くない」
交通事故は件数で言うと多いけど、割合で言ったら1%程度くらいでしょうから、本当は比較対象にはなりません。
でも母がそこに気付くはずが無いのでとりあえず安心してもらうために引用しました。
ここで母を説得し、しつこく食い下がることを制しておけば、医師の心象も良くなるだろうし、もちろん母も安心できるという一挙両得を狙いました。
医師としても100%と言いたいところでしょうが、やはり現実には何が起こるか分からない上に、有事の際の責任回避のためにも予防線を張っておくための95%なのでしょう。
基本的には「常に最悪のパターンを想定する職業」である医師から出た95%という数字は、100%だと信じるに足る数字だと思っています。
医師「息子さん、それは違いますね」
坂津「なんですと!?」
医師「交通事故には不注意や危険運転などの原因がありますよね?」
坂津「はい。スピード超過とか飲酒運転とか」
医師「我々医師に、そんなことはありません。万全の状態で手術に臨みます」
坂津「そうですよね。失礼致しました。母ちゃん、先生もこう言って・・・」
医師「にも関わらず100%とは断言できないんです」
坂津「はい?」
医師「常に最高の準備と最高の集中力で臨んでも不測の事態はあります」
坂津「そりゃそうでしょうけど、まぁ・・・はい」
母親「え?それは失敗するってことですか?」
なんと言う振り出し。
せっかく私がサイコロを振ってゴール直前まで進めたのに、そのコマに「スタートに戻る」と書き込んだのが医師だとは。
坂津「母ちゃん、だからその可能性はすごく低いってことだよ。大丈夫」
母親「でも先生が今・・・」
医師「息子さん、お母さんにもリスクは把握しておいて貰わないと」
母親「リスク?やっぱりそういうこともあるの?」
医師「もちろん、可能性はゼロではありません」
坂津「先生、ちょっと。ちょっと良いですか?」
医師「?」
坂津(患者の不安を煽ってどうすんですか!とにかく今は母を安心させて、リスクとかその辺の話は後で私が聞きますから!)
坂津「母ちゃん、カレー食べたいって言ったら作ってくれる?」
母親「うん。作るよ」
坂津「母ちゃん、カレー作ってて焦がしたことある?」
母親「あるねぇ。あるある」
坂津「じゃあ、“作るよ” じゃなくて “作るけど、もしかしたら食べれないのが出来るかも” って言わなきゃな」
母親「いや。食べられないほど焦がしたりしないから大丈夫!」
坂津「でも、ダメにしちゃったこともあるだろ?」
母親「・・・うん」
坂津「先生もそんな感じだよ。普通にしてれば大丈夫だけど、万一の可能性まで丁寧に説明してくれたってこと。だから大丈夫だよ」
母親「そっか。良かった」
もしかしたら手術よりも母親の料理の失敗率の方が高いかもしれませんが、ここはそんな議論をする時でも無いのでとにかく言いくるめます。
そして何か言おうとする医師を目で制し、母を病室まで送ります。
坂津「じゃあ私は可愛い甥っ子の元へ帰るからね」
母親「うん。ありがとう」
坂津「1時間もしないうちに父ちゃんが来るから」
母親「マジで?やった!」
坂津「夕方から処置が始まるけど、お酒以外は飲食OKだってさ」
母親「マジで?ひゃっほい!」
まぁ本当に簡単な手術なので、私としては別に何の心配もしていません。
恐らく父親もそうでしょう。
ただ、当人にしか分からない不安もあることでしょう。
普段は離れて暮らしていても、こういう時に側に居られることを幸せだと感じます。
休もうと思えばいつだって休めるんですよ、会社なんて。
頼もしい部下も居ることですし。
さて、甥っ子と一緒にいる父親もそろそろ限界でしょう。
無制限に動き回る男の子と一緒に居ては体力がどれだけあっても足りません。
早く代わってあげないと。
そう思いながら、ポケットから携帯電話を取り出して確認。
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マジか・・・。
うお。メールも14件入ってる・・・。