どうも、坂津です。
お題スロットを回して記事を書かれる方は結構いらっしゃると思います。
しかし私は天邪鬼な性格をしており、普通にスロットを回して書くことに少しばかり抵抗があるのです。
昔から、与えられたおもちゃも当然のように魔改造の餌食となっておりましたし、そのもの本来の機能以外のものを求めてしまう悪い癖があります。
さてさてしかし、お題スロットを本来の機能以上に愉しむために何ができるでしょうか?
ポチッと押すとランダムでブログ記事のお題が表示されるだけの簡単な仕組み。
色々考えた結果、あまり良いアイデアが浮かびませんでした。
なのでとりあえずスロットを6回転させ、すべてのお題をまとめて面倒見ることに挑戦しようと思います。
1回転目:昭和
2回転目:好きな肉
3回転目:わたしの黒歴史
4回転目:海派?山派?
5回転目:カメラ
6回転目:夏服
昭和生まれの私にとって、テレビの電源スイッチは本体のツマミを引っ張るものだったし、チャンネルはこれまた本体のツマミをガチャガチャと回すものだった。
リモコン付きのテレビも発売された当時に購入したが、それは有線リモコンであった。
今の若い方々にはとても理解できないものだろう。
小学生のときに初めて「ビデオ」という物に触れ、“巻き戻し”や“早送り”ができることに感動したものだ。
「擦り切れるほど見た」という表現も今では通用しないのだろうが、当時は徐々に画質が悪くなっていくことを気にして視聴を我慢したりもしたものだ。
これが中学生ともなると、どうにも性的な興味が生活の大半を占めることになる。
まだ通学路にアダルトビデオの自動販売機が置かれていた時代、毎日毎日チラチラと自販機を視界に収めながら、悪友どもと「いつか買う」「どこで観る」という話に花を咲かせていたのが懐かしい。
そしてついにチャンスが訪れる。
悪友のひとりが家族旅行を自分だけキャンセルし、私の家に泊まると言いだした。
しかしそれは大人を騙す為の口実。
私を含め、彼以外の全員は彼の家に泊まると家族に告げ、上映会は実行された。
一軒家に中学生男子とアダルトビデオ、これはもう滅多にないチャンス。
ガチャンと大げさな音を立ててVHSのカセットがビデオデッキに飲み込まれ、そして艶めかしい女体がブラウン管に大写しとなった。
家主である彼は音漏れを気にしていたようだが、彼以外の全員が爆音での再生を希望し、彼もしぶしぶ従う形となった。
女優の嬌声が響き渡る中、全員が固唾を飲んで画面を見つめていた。
やがて上映は終了し、ビデオテープの終了を告げるガチャンという音と、新機能であった自動巻き戻しの音がシュルシュルと鳴った。
誰ともなく、感想を述べ始める。
「前に見たやつの方がすごかった」
「兄ちゃんに見せてもらったことがある」
などなど、お決まりの虚勢と虚言を吐きつつ、己の高まりを隠そうとする奴ら。
「いや、これはこれで良いと思う」
「もっとカメラが寄った方が良い」
こちらは別の角度から見ていたよというアピールで平静を装う奴ら。
「もっとおっぱいが大きいのが良かったな」
これには全員が賛同した。
私を除いて。
「は?何言ってんの?おっぱいは小さい方が良いに決まってるだろ?今のでもちょっと大きいくらいだよ!」
私は完全に彼らを敵に回してしまったようだったが、しかし自分の主張を曲げる気は無かった。
「大きいおっぱいが見たいんなら外人のビデオでも見てろよ!俺は小さくて綺麗なおっぱいしか認めない!」
私の人生で最初の巨乳vs貧乳の戦いだった。
私の好きな肉は小ぶりで艶のある奥ゆかしいおっぱいなのだ。
しかし荒ぶる男子中学生はそんな品のある私の趣向を受け入れようとはしない。
「坂津、お前ロリコンかよ!」
当時まだそこまで浸透していなかったロリコンという言葉に最大限の侮蔑を込めたこの発言に私は激怒した。
「俺はロリコンじゃない!ただ小さいおっぱいが好きなだけだ!あと、そんな言いかたしたらロリコンが悪いみたいじゃないか!ロリコンは悪くないぞ!」
この日の出来事が決定的な溝となり、私は悪友どもと手を切った。
そしてアニメに走ることになる。
セーラームーンの放送がある日は絶対なるスケジュールが存在した。
放送が開始される時間には夕飯も入浴も済ませた清い体でテレビの前にスタンバイしなくてはならない。
母親に「どうかしてるぜ」と言われるのも気にせず、セーラーマーズに恋をした。
こんなわたしの黒歴史も、ある出会いで鳴りを潜めることになる。
それは釣りとの出会いである。
中学校の同じクラスで私と同じくセーラーマーズを愛する彼が、もうひとつの趣味として私に共有を強要してきたのだ。
正直なところ、最初は嫌々だった。
なんで朝5時に起きて自転車を2時間も漕いで暑い思いをしてまで海に行かねばならんのかと。
しかしセーラーマーズを愛する男の趣味を馬鹿にすることはできない。
まず1回くらいは付き合っておかねばなるまいと、まだ薄暗い時間から海を目指したのが始まりだった。
最初が良かった。
友人も私の初釣を成功させようと、潮見表とにらめっこをしてこの日を選んでくれたに違いない。
爆釣も爆釣、友人と私で100匹は釣ったのではないかと思われた。
主にはメバルとアイナメ、セイゴとウミタナゴとベラ、アナゴと鯛も釣れた。
季節感の無い奇跡的な釣果に鼻を鳴らしながら帰宅し、家族に褒められた。
この体験から私は海での五目釣りを趣味のひとつに加えることとなった。
休みの日に出かける先として、海派?山派?と問われれば間違いなく海派と答える。
もちろん泳ぐわけではなく、釣りが目的だ。
さて、一般的には釣場と海水浴は同じ場所にはならない。
釣場で泳ぐのも、海水浴場で釣りをするのもマナー違反である。
同じ海のレジャーであるにも関わらず、お互いが関わり合うことは少ない。
しかし場所によっては海水浴場となっている砂浜の端に磯があり、そこが釣場になっているようなケースもある。
私と友人がメインの釣場にしていたのはそんな場所だった。
この場所は釣果の差が激しかった。
釣れる時は持ち帰るのが困難なほど釣れるのだが、釣れないときは全く釣れない。
しかし、それはそれで良かった。
釣れない時には釣れない時の愉しみ方がある。
なにせすぐ隣は海水浴場なのだ。
私と友人は、今日は釣れないなと判断した場合はすぐに双眼鏡を覗く。
もちろんターゲットは水着のお姉さんだ。
その日も一向に釣れない日だった。
一度のアタリすら無いような悲惨な日だった。
しかし私達はこれを良しとした。
まだ海水浴のシーズンである砂浜には白い肌や小麦色の肌を露わにした不用心なセーラ戦士たちが群雄割拠しているのだから。
さっそく双眼鏡を覗き、各々が好みのセーラーをマーズする。
「おお、あの青と白のパラソルの向こうの白い水着の人!すげぇ!」
「どれどれ?おー、良いな、あの水着けしからんな」
そんなイケナイ遊びをしていると、ふいに友人が声を上げた。
「・・・あ!」
「どうした?」
「あの、あそこ、ほら、ちょっと海から離れた木のところ!」
「ん??」
「あれ、三崎さんじゃね?」
「えっ!?」
私は急いで友人の示す場所へ視野を振る。
間違いなかった。
双眼鏡のレンズ越しに飛び込んできたその顔は、私の想い人である三崎さんであった。
セーラーマーズに良く似た黒いロングヘアが風にゆれていた。
彼女は水着の上にフード付きのパーカーを羽織り、ブルーシートの上にひざを抱えて座っていた。
パーカーからチラリと覗くその肌は、色気というよりも健康的な美しさを纏っていた。
家族と海水浴だろうか?
とするとあれは、お兄さん?
彼女は兄と思われる男性に手を引かれて立ち上がり、そしてパーカーを脱いで海に向かった。
スクール水着ではない、完全にセパレートのビキニだった。
想い人の意外な装いに、私はこれ以上の盗み見を躊躇った。
彼女の周囲には家族と思しき人は見つけられない。
もしあれが年上の彼氏だったら。
学校では見せない大胆な姿を彼氏の前だけで晒しているとしたら。
背徳感が、私の心をジワジワと侵攻する。
ふぅとため息をつき、私は双眼鏡から目を離した。
すると、私の隣で友人は双眼鏡に写ルンですを押し当てていた。
「おい、何やってんだよ!」
「何って、撮影だよ撮影!三崎さんのあんな格好、他のみんなも見たいに決まってるだろ?現像してみんなで見ようぜ」
考えるよりも先に手が出ていた。
私は友人のカメラを叩き落とし、海に蹴り飛ばした。
「な、何するんだよ!」
友人は私を殴った。
私は抵抗しなかった。
磯の岩肌はギザギザに尖り、倒れた私の腕や膝を切り裂いた。
私は無言で起き上がり、友人の前に対峙した。
「カメラ!拾ってこいよ!なんでこんなことするんだよ!」
私は無言だった。
もし仮に、友人のカメラが捉えた写真が三崎さんでなかったとしたら、きっと同調して騒いでいたに違いない。
そう思うと、どれほど自分勝手な行動をしてしまったのかと思うが、しかし後悔は無い。
「もういいよ!帰る!」
友人だった彼は釣り道具を片付け、去って行った。
少し経ち、ようやく気持ちが落ち着いてきた私は、腕や足の傷の痛みを連れて家路についた。
日焼けした肌と傷口にシャワーのぬるま湯がしみた。
胸も、痛かった。
やがて夏休みが終わり、始業式の日。
悪友だった彼らは私を遠巻きにして集団で談話している。
釣りを教えてくれた彼は一人で席についている。
次のセーラーマーズ好きを探しているのだろうか。
そして、三崎さんがいた。
久しぶりに会う級友たちと楽しそうに話している笑顔がまぶしかった。
そのセーラー服の下には、双眼鏡の向こう側に見えたあの肢体がある。
スカートから覗く太腿、夏服の半袖から覗く二の腕。
あの写真が出回らなくて良かったと心底思った。
もしあのとき凶行を止めていなかったら、きっと三崎さんの笑顔は失われることになっただろう。
そう思い込むことで、少し救われた気がした。
夏服の半袖から覗く私の肘の傷を、友人が茶化してくる。
「なんだ、夏休みに熊とでも戦ったのか?」
「戦うかよ。いや、戦ったのかも知れないな」
「なんだよそれ」
「何でも無いさ」
完全にフィクションです。
事実は36%ほどしか含まれておりません。