『かなり』

干支に入れてよ猫

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隠しごとは無い方が良いに決まっているが、在る場合はうまく立ち回るスキルが必要

どうも、坂津です。

今週のお題「わたしの本棚」について記事を書こうと思い、自宅の本棚の中身を思い出してみました。

文庫版のジョジョが1部から5部まで揃っていたはず。

完結してて全巻揃っているのは何だったかな。幽遊白書寄生獣は持って来てたはず。

いや、大半は実家に置いてあるんですよね。

ごめんよ両親。

最新刊まで揃っているのは進撃の巨人テラフォーマーズ、俺物語とスキップビート、あと、はんだくんばらかもんもありますね。

あれ、漫画ばっかりだ。

そこそこビジネス書とかも読んでるはずなんですが、思い出せないですね。

まぁいいや、帰ってから確認してみます。

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と思って帰宅した昨夜。

 

不快指数と正比例している湿度のせいで、いつも以上にベタついている体をシャワーで清めた。

冷水のシャワーに中年ボディを晒し、風呂上がりの発汗リスクを回避するあたり、さすがは私である。

 

朝、出勤前に冷蔵庫に入れたフリッツァンテは飲みごろに冷えていた。

キンキンに冷えた微発泡の白ワインを、氷の入ったグラスに注ぎ一気にあおる。

 

さて、本格的に酔っ払ってしまわないうちに本棚を確認しておこう。

 

「ッ!!!」

 

「ようやく気付いたかね」

 

「ファッ!?」

 

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本棚を見て驚愕する私の背後から、ラスボス感たっぷりの妻の声。

 

「今日、お義母さんが来られてね、部屋を片付けたらスペースが空いたから、不要なものがあったら預かるって言ってくださったのよ」

 

「・・・(ごくり)」

 

「それで、お言葉に甘えて、“お預けしても良さそうなもの”だけ選んで渡したの」

 

理由は全て理解した。

目の前にある本棚と、私の記憶の中の本棚が、あまりにも違いすぎている理由。

そして、数冊だけの本が、残っている理由。

 

しかしそれはあまりにも想定外であり、またショッキングであった。

 

本棚に残っていたのは

世棄犬先生の「DOGMAN」

http://www.honyaclub.com/shop/g/g11229404/

・ブラックリリスのゲーム「Monsters Survive」

http://www.lilith-soft.com/black/product58.html

ソルボンヌK子先生の「大猟奇」

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784877286484

 

私は震えた。

チワワよりもプリンよりも西野カナよりも震えた。

 

妻と結婚し、この部屋での共同生活が始まる際、必要最低限のもの以外は実家に置きっぱなしにしてきた。

そもそも現住所と実家は車で15分程度の距離しか離れていないため、何かが緊急で必要になったとしても取りに行けばいいだけの話だった。

この「必要最低限のもの」の中身の大半は漫画であり、段ボール2箱分ほどの荷物のうち80%ほどを占めていたように記憶している。

その中に、これらが紛れていたということか。

 

確かにそう言われれば、段ボール箱から本棚に漫画を移しているときに発見し、焦って後ろの方に封印したような記憶がうっすらと鮮明に思い出された。

 

「なんでこんなの、持ってるの?」

 

先ほどのラスボス感とは打って変わった妻の声は、どこかしら楽しんでいるようだ。

 

「学生の頃に買ったやつだな。ほら、漫画描いてたから、資料だよ」

 

努めて冷静を装いながら、私は妻の「ふーん」を待った。しかし。

 

「ふーん。でもそのゲームは2012年の7月に発売されてるね」

 

私はギョッとした。

さかな君よりもギョッとした。

 

待ち望んだ「ふーん」の後に、死刑宣告の様な言葉が付属していた。

 

私達の同居が始まったのは2012年の4月からなので、このエロゲに関しては結婚後に購入したということがハッキリしているのだ。

確かにそう言われれば、売場に並ぶパッケージを見て「お、新堂エルじゃん」と即買したものの「そういえば結婚してたわ、ヤベェどこに収納しよう」と迷った記憶がぼんやりと明確に思い出された。

 

今回誤って現住所へ混入してしまったものはもちろん氷山の一角である。

実家には私の部屋がそのまま残っており、両親も特にその部屋をどうこうはしない。

クローゼットの中にある「かなり」妖しい箱には私のコレクションが詰まっている。

薄い本や薄い本、あと薄い本なんかが大量に入っている。

 

しかし、私が声を大にして言いたいのは「この坂津佳奈コレクション、略してサカナクションが私の個人的な欲望のために集められているのではない」ということだ。

 

私は妻に問う。

 

アウターゾーンという漫画を知っているかね?」

 

「もちろんだとも。それが何か?」

 

「ではその第87話『禁書』というストーリーを覚えているかね?」

 

「・・・覚えていない」

 

「そうか、では話はそこからだ。これを見たまえ」

 

私はインターネットでニコニコ動画にアクセスし、件の話を妻に見せた。

 

「こ、これは!?」

 

驚きと衝撃を隠せない妻。

 

「これで私の意図を汲んでくれたかね」

 

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

第87話『禁書』

作品や表現物に極端な規制が加えられた、架空の未来が舞台。そこは道徳的な漫画だけが出版を許され、ギャグシーン、お色気シーン、暴力的なシーン、個人の思想が入れられた漫画は悪書とされ、隠し持っているだけで重罪となる世界である。
ある男性イラストレーターは悪書とされる漫画を何冊も隠し持っており、近所の少年にというにそのコレクションや自筆の漫画を見せていた。だがあるとき、少年が内緒で持ち帰った漫画が母親に見つかり、彼は“悪書を所持し他人に公開した容疑”で逮捕され法廷で「汚らわしい書物を見せ、青少年の健全な発育を阻害した」と厳しく糾弾され彼は禁固30年の判決を言い渡され、隠し持っていた漫画はすべて焚書となる。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

そう、私は将来起こるであろう書物への過度の検閲と規制を、めっちゃ先まで見通せるこの先見の明にて察知し、来る不幸な未来に生きる青少年たちにこっそりと過去の偉大な作品を残すべくこうしてコレクションしているのだ!

ということを妻に伝えようとした。

 

アウターゾーン・・・素晴らしい!この時代に於いてすでにここまでの話を世に送り出していようとは・・・是非ほかの話も読みたい!」

 

「え、実家にあるけど?」

 

 

 

そういうわけで、興味の矛先がアウターゾーンに向いたため、私はこれ以上の追及を逃れることができたのである。

 

ありがとう光原伸先生。

ありがとうミザリィ。

 

 

 

これから実家という名の漫画喫茶で、近い将来もしかしたら禁書になるかもしれない漫画たちを読み漁ってきます。