『かなり』

干支に入れてよ猫

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未来話

どうも、坂津です。

昔話はたくさんあって本とかになってて広くみんなに知られているのに、未来話って見聞きしないですよね。

昔話だって『昔々あるところに~』から始まる年代も場所も曖昧な物語なのですから、年代を未来にしちゃったり場所を別の惑星にしたりしても問題無いハズです。

 

 

未来未来、とある居住エリアに、おじいさんとおばあさんが二人で住んでいました。

しかしそこに住んでいるのはおじいさんとおばあさんの実体コアではありませんでした。

おじいさんの実体コアは『惑星ヤマ』のどこかに設置されている電脳分身操作端末パーソナルコフィンの中。

おばあさんの実体コアは『惑星カワ』のどこかに設置されている電脳分身操作端末パーソナルコフィンの中。

おじいさんの仮想分身アバターは筋骨隆々かつ眉目秀麗な青年で烏の濡れ羽色の長髪でした。

おばあさんの仮想分身アバターは均整のとれたプロポーションにピンク髪と金色の瞳でした。

おじいさんの通り名クラウン天をも砕く拳フェイタルフィストでハンドルはギルバルト・ダイン・クラウザー。

おばあさんの通り名クラウン歌って踊れる猫亜人アイドルキャットでハンドルはルゥニー・ファルファーン。

おじいさんもおばあさんも実体コアはとっくに卒寿を越えていましたがそれは秘密です。

お互いに仮想分身アバター同士での婚姻関係に納得しており実体コアに興味はありませんでした。

ある日ギルバルト(おじいさん)はシバという名の猛獣を狩りに惑星ヤマへワープ。

ルゥニー(おばあさん)は惑星カワで仮想分身アバターの最新デザインを選択していました。

ルゥニーがカワで選択をしていると新アイテム『大きな桃』がリリースされました。

ルゥニーは即座に『大きな桃』をポチり、居住エリアの自宅に転送しておきました。

シバ狩りで素材を集めたギルバルトが帰宅する部屋には『大きな桃』がありました。

桃を見たギルバルトは驚きと喜びと嬉しさと気恥ずかしさで胸がドキドキしました。

仮想空間であるこの世界で子供を授かる唯一の手段、それが『大きな桃』なのです。

ギルバルトは時間差で帰宅したルゥニーと一緒に自分の愛剣モラルタを握りました。

二人では「せーのっ!」と声を合わせ『大きな桃』めがけて剣を振り下ろしました。

すると桃から赤ちゃんの疑似人格NPCが発生し『性別を決めてください』と言いました。

ギルバルトは男子、ルゥニーは女子を希望し、協議の結果ギルバルトが折れました。

そうすると次に女の子の赤ちゃんは『名前と容姿を決めてください』と言いました。

ギルバルトはどうしてもドルカスと名付けたかったのですがルゥニーは許しません。

ここもギルバルトが折れ、女の子の名称はマリオン・シィランスと登録されました。

ちなみに、ファミリーネームを揃えるという文化や概念はこの世界に存在しません。

ギルバルトは性別も名前も却下されたのでせめて容姿は設定したと頼み込みました。

結果、ギルバルトの要望である『黒髪』だけが採用されたルゥニー案になりました。

設定後マリオンはしなやかな黒髪ロングストレートを揺らす少女にまで育ちました。

システムが設定した時間経過によりレベルアップしたマリオンは二人に言いました。

「ギルバルト、ルゥニー、私は鬼達の棲む孤島オーガアイランドへ行ってレベル上げをしたいのです」

「増長するなよマリオン。お前はまだレベル18のヒヨッ子。無駄死にするだけだ」

「そうよマリオン。貴女は魔法だって単体対象の回復系の初級しか使えないんだし」

ギルバルトもルゥニーも自分達がオーガアイランドに行ったときのことを話します。

「あれは俺がレベル58、ルゥニーが55の時だ。それでもギリギリの戦闘だった」

「ラスボス戦の直前に回復ポイントが設置されてたからどうにかなったんだけどね」

マリオンは二人の言うことを聞き、とりあえずレベル55を目指すことにしました。

しかし残念ながら疑似人格NPCは狩りなどで意図的にレベルを上げることはできません。

いつまでも少女なマリオンにギルバルトもルゥニーも実体コアの寿命が限界を迎えます。

電脳分身操作端末パーソナルコフィンの延命機能でもあと数日で接続終了ログアウトを余儀なくされる二人の実体コア

お互いに事情を察した二人は話し合い、未だにレベル18のマリオンに言いました。

「なぁマリオン、俺とルゥニーとお前の3人で鬼達の棲む孤島オーガアイランドに行ってみないか?」

「えっ?ギルバルト・・・良いの?だって私はまだレベル18のヒヨッ子で・・・」

「心配しなくて良いのよマリオン。ギルバルトも私もついて行くんだから、ねぇ?」

このときギルバルトはレベル99、ルゥニーは98、ほぼ世界最強クラスであった。

二人は鬼達の棲む孤島オーガアイランドの鬼を紙屑のように蹴散らし無傷でラスボスに到達しました。

そしてラスボスを討伐するギリギリ瀕死の状態まで追い詰めマリオンに言いました。

「さぁ、とどめの一撃はお前が放て。お前の手で鬼達の棲む孤島オーガアイランドをクリアするんだ」

「大丈夫、ただの平手打ちでも倒せるまで弱らせてあるわ。羽交い締めしておくし」

二人に促されたマリオンはラスボスに一撃をお見舞いし見事にとどめを刺しました。

本来ならNPCが敵を倒すことなど有り得ないしレベルアップすることも無い世界。

しかし、空気を読んだ統括制御知能システムが、マリオンをレベルアップさせてくれました。

我が子の成長を見届けたおじいさんとおばあさんは安心して接続終了ログアウトしたのでした。

めでたしめでたし。

 

RPGツクールMV Trinity - Switch

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三人目

どうも、坂津です。

妄想癖のある私ですが、1日のうち最も妄想が捗るのが入浴中です。

特にスカルプシャンプーで頭皮を洗浄しているときは甚だしく妄想してしまいます。

妄想の中身は日替わりで特に何の意味もありませんが、だいたい架空の物語が進行します。

で、通常だと入浴を終えてパジャマを着る頃にはその内容はキレイさっぱり忘れているのです。

ただ、たまに忘れず覚えている妄想劇もあります。

今回はそんな『忘れられなかった物語』を文字にしてみようと思います。

 

 

 

御岐部みきべ おさむは高校1年生。

今日も声を掛けるチャンスを窺っていた。

相手は同じクラスの女子。

委員長の五木いつき 舞莉まりだ。

中学校は別々で、それまで特に面識も無かったこの2人。

しかしおさむは入学式の日、クラス編成が貼り出された掲示板に舞莉まりの名前を見付けてからずっと気になっていたのだ。

とは言え、引っ込み思案で物静かな陰キャおさむにとって、明るく活発で優等生を絵に描いたような舞莉まりは別世界の住人のようで、なかなか話し掛けることができないでいたのだ。

 

しかし、ある日。

まさか夢でも見ているのだろうか。

なんと、舞莉まりの方からおさむに声を掛けてきたではないか。

 

「ねぇ御岐部みきべくん、ちょっと良いかしら?」

 

おさむ舞莉まりに言われるまま従った。

化学準備室にある薬品を授業前に用意するのを手伝って欲しいということだった。

しかし、なぜ自分に?

舞莉まりの為なら喜んで手伝うクラスメイトが大半だろうに。

気になっていたことを伝えるチャンスであるにも関わらず、おさむは降って湧いた好機に戸惑うことしかできずにいた。

先に入るよう促された化学準備室には、棚にたくさんの薬品が並んでいた。

それらをぼーっと見ていると、背後で『カチャッ』と音がした。

施錠された音だ。

慌てて振り返るおさむ

そこには、後ろ手で扉の鍵をかけた舞莉まりの姿があった。

 

「これで、ここには誰も来ないわ」

 

そう言うと舞莉まりは、今まで見せたことも無いような冷徹な目をおさむに向けた。

 

御岐部みきべくん、あなたも気付いてるんでしょう?」

 

抑揚がほとんど無い淡々とした口調で問われた内容に、おさむは首をかしげることしかできない。

 

「な、何のこと?」

 

「とぼけないで。始業式からこっち、毎日ずっと私の方をチラチラ見てたでしょ? ねぇ、あなたも気付いているんでしょう?」

 

ズイと一歩近付く舞莉まりに対し、おさむは反射的に一歩退いてしまう。

まさか、まさか彼女も自分と同じように、自分のことを気にしていたのか?

 

「良い? 絶対に人に言っちゃダメだからね。これはあなたと私だけの秘密よ」

 

おさむは確信し、そして約束した。

自分が彼女を気にしていたように、彼女も自分を気にしていた。

だがそれは絶対に人に知られてはいけない極秘事項。

このことは誰にも気付かれてはいけないのだ。

 

おさむ舞莉まり、お互いが運命共同体であると確認し合ってから数日後、クラスに転校生が来た。

ひょうきんな印象のその男子が黒板に名前を書いたその時、おさむ舞莉まりは息を飲んだ。

 

「どうも~、俺は後基うしろもと 武利たけとしって言います。乙女座のAB型で趣味は映画鑑賞です」

 

武利たけとしはいかにも軽薄そうな口調で自己紹介を始めた。

そして、おさむ舞莉まりが最も恐れていたことを、いとも平然と言ってのけた。

蒼白になるおさむ

悲嘆に暮れる舞莉まり

今まで友人達にバレないように気付かれないように生きてきたというのに。

武利たけとしの発言によって芋づる式に発見されるのは時間の問題と思われた。

彼はこう言ったのだ。

 

「俺の名前、音読みすると“ゴキブリ”になるけど、それでイジるのは勘弁してね」

 

こんな話が好き

どうも、坂津です。

世にも奇妙な物語2018春の特別編を観てちょっぴりがっかりした私は「じゃあ結局どんなものを望んでいるのか」と自問自答してみました。

そして『こんな感じ』というモノに辿り着きました。

『そんなこと絶対にあり得ない』と潜在的に信じているけど現実的に起こってもおかしくないような、戦慄の中に含蓄があるような、SFと呼ぶには現実味が強く、ホラーと呼ぶほど恐怖に特化していない。

こういうジャンルって何と呼ばれるんでしょうね。

ショートショートSFなんてのが、もしかしたら当てはまるんでしょうか。

 

とは言えこんな説明じゃ伝わらないと思いますので、実際にイメージしやすい例題を書いてみましょう。

 

 

【1】 

最近は企業の吸収合併、M&A、業務資本提携などにより、大手はより強く巨大になっていますよね。

どこに行っても同じ店があり、同じ商品が買える。

違う店だと思ってたのに並んでる商品が同じだったりする。

そんなことが日常茶飯事になっています。

 

【2】

昨今の市場において最も大きな課題は、輸送コストです。

それこそSF的な『物質転送装置』などという夢物語が現実化しない限り、物理的な距離を解消することはできません。

そこで企業各社が考えるのは『如何にして一度に大量に効率的に運ぶか』です。

そのため商品、製品のみならず、農産物にまで規格サイズが適用され、隙間無くきっちりぴったり箱詰めできることが最良という考えが一般化しています。

 

【3】

私たち人間は食事をし、その食糧を消化吸収してエネルギーや体組成とし、生命活動を維持しています。

つまり私たちの肉体は、食べたものを元に構築されているのです。

昔の日本人は小さかったのに、食の欧米化が進むにつれどんどん大きくなっていったのはよく聞く話ですよね。

 

【4】

現代は個性の時代です。

多様性を認め、個人ごとに人それぞれの主義主張があることを容認しています。

一方で、社会や世間と呼ばれるコミュニティを形成して生きる私たちは『個性vs社会』という図式の問題にしばしば直面します。

これはどちらか一方に寄り過ぎると、もう一方は完全に機能しなくなるという性質のもので、個性と社会が両立することはありません。

合理的に考えるならばどちらかを採り、どちらかを捨てることが良いのかもしれませんが、中間地点でバランスを取っているのが現状です。

 

【5】

会社の統合が進み、やがてひとつの巨大企業が誕生します。

あらゆる業種業態に手を伸ばし、原材料から精製、加工、企画、製品化、物流、販売など市場に存在する全てのポイントを網羅した企業です。

食事で言えば粉ミルクや離乳食から介護食までその企業が提供している。

当然ながら街に居並ぶ飲食店も軒並みその企業のもの。

走る車も、その燃料も、走行している道路そのものも、その企業が作っている。

住んでいる家もその建築材料も、建築機械も、全てその企業のもの。

日本だけでなく世界中で、その企業が提供する快適な暮らしが享受できるようになる。

 

【6】

やがて地球上すべての人類は同じ環境、同じ食事、同じ教育を受けるのが当たり前となる。

多様性の時代は終焉を迎え、皆が『同じである』ことに喜びを感じる世の中になる。

国籍、人種、思想はパン生地のように混ぜて伸ばして均等分配され、人々の同一化は加速して行く。

いつしか店頭に並ぶ衣類にサイズ表記は無くなり、代わりに『○歳 男性用』などという年齢と性別のみが記載されるようになる。

同じ年齢、同じ性別であれば誰もが同じサイズだから何の問題も無い。

 

【7】

個性が完全に排除された人類は、無駄なスペースの無い合理的で効率的な積載の宇宙船に乗り込む。

そして異星に出荷される。

 

 

この書き方だとたぶん早くて【3】、ないし【4】か【5】あたりではオチが読めてしまうと思います。

その辺を上手に視聴者をミスリードしながら最後に『うっわマジか!こう来たかぁー!』と思わせるような感じの物語が好きです。

 

普通にホラーも好きなんですけどね。

心霊物や怪物物、スプラッターなのも好きですが、ただそーゆーのは『それを望んで』観たいのです。

上記のような『私の好きなやつ』だと思って観始めたのに、急に『なぜか部屋から出られない』とか『理由は分からないけど解除できない』みたいな展開になると興醒めしてしまいます。

単に私がワガママってだけなんでしょうけどね。