『かなり』

干支に入れてよ猫

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ゲリラコント

どうも、坂津です。

高校生の頃、度胸試しという名目で、往来の激しい商店街でコントをやるという苦行がありました。

しかも、事前にわざと『死ぬほど面白くない』ように書いた台本でやるんです。

身ぶり手ぶりと勢い、声色やタイミングだけで、どれだけ戦えるかを実感するためだとかなんだとか。

演劇部時代の黒歴史です。

今までも数々の黒歴史を披露してきました。

演劇部 の検索結果 - 『かなり』

今回のも結構ひどいです。

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人の流れに乗って歩く二人の高校生。

私と、同じく演劇部員の同級生。

延々と続く商店街には、途中で車道と交わる場所に信号がある。

信号に引っ掛かって立ち止ったら、それがコント開始の合図。

視線の先には歩行者信号。

今の歩調でいけば、青信号が点滅しているあの横断歩道で止まることになるだろう。

よし。

一瞬だけ相方と視線を交わし、腹をくくる。

私は右手をスッと上げ、声を出した。

 

「ゲリラコント!『漫才練習!』」

 

「ちょっと漫才の練習に付き合ってくれるか?」

「ええよ」

「いやぁ、何か人多いですねぇ」

「そりゃ日曜日ですから、みんな出掛けますよ」

「でも皆さん平日は学校やお仕事で忙しいわけでしょ?」

「まともな人間ならそらそうでしょうよ」

「ならせっかくの日曜日はゆっくり休みたいんちゃいます?」

「確かにそやね。なんでみんな出掛けるんやろか」

「私ね、考えたんですよ」

「ほう。何を?」

「なぜ人は出掛けるのか」

「それは是非とも聞きたいね」

「可能性そのいち!家に居たくない!」

「いきなりネガティブなん来たなぁ!そんな人おるかぁ?」

「いやいや、あっち側の人4~5人がビクッてなったわ」

「あかん!人を巻き込んだらあかんで!みんな事情があるんやから!」

「んじゃそっとしとこうか」

「そうそう、次行って」

「可能性そのに!出会いを求めてる!」

「直球やなー!でもこんな昼間っからおる?そんな人」

「私らの後ろから『バレた』って小さく聞こえましたよ」

「あかんあかん!それバラしたら可哀相!」

「可能性そのさん!無理やり連れて来られた!」

「いや、そんな人もおるかも知れんけどね」

「たぶん視界に入るお父さん方はたいてい当てはまると」

「やめ!それ言っちゃダメなやつ!」

「本当は家でゆっくりしてたいけど家族サービスせな言うて・・・」

 

ここで信号が青になり、急にコントを中断します。

何事も無かったように真顔になり、普通に歩き出します。

これを何度か繰り返すんです。

 

最初からすでに「漫才」なのか「コント」なのか分からないし、ネタ自体も究極に面白くない。

そもそも客いじりなんて相当温まった会場で有名な人がやるから成立するようなテクニックを、どこの誰でも無いただの高校生がやるんですよ。

地獄絵図です。

もちろん奇異の目で見られますし、冷やかな視線が刺さりますし。

 

でも、3回目くらいからちょっとずつ変わるんです。

 

こちら側が。

 

セリフは固定されたままです。

でも話すスピードや声の強弱などを相方と打ち合わせして、さっきよりこうしてみよう、もっとこうしよう、みたいな改善をしていくんです。

そしたら4回目、ついに笑ってくれる人が現れました。

んで一人が笑いだすと、連鎖するんですね。

クスクス・・・アハハハ・・・

 

で、5回目。

波に乗ったというか何と言うか。

掛け合いの始めからもう何人か笑ってて、最終的には拍手まで起こる始末です。

 

私はこれで、まったく同じ言葉でも、タイミングやスピード、強弱や口調などで相手に与える印象が全く変わるんだということを学べば良かった。