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『かなり』

私が感じる「かなり」なことを徒然に。

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料理コンテスト失格翌日 ~おまけ~

あけましておめでとうございます、坂津です。

PFCSの公式イベントに乗っかったお話です。

こちらの企画のSSはこれでラストとなります。

pfcs.hatenadiary.jp

 

このエントリの続きです。

料理コンテスト失格まであと3日

料理コンテスト失格まであと2日

料理コンテスト失格まであと1日

料理コンテスト失格当日

料理コンテスト失格翌日 ~OBBの真価~

 

 

▽登場人物▽

・タオナン

女性料理人。ちょっと成長した。

・テイチョス

万能アルファ(ロボット)。

・ルビネル(友情出演)

黒髪ロングのストレートで女子力高い。タオナンは獲物。

thefool199485.hatenadiary.com

・勇者パラ(友情出演)

発展途上のエルフの少年。やっぱりエロい。

ritostyle.hatenablog.com

・メラーン(料理コンテスト主催者)

栄養学を極めた女性。感情の高ぶりで思考回路が壊れる呪いを受けている。

yaki295han.hatenadiary.jp

 

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

黒い光に包まれたメラーンは、今までの人生を高速で追体験していた。

走馬灯のように、という言葉が当てはまるかもしれない。

嬉しかったこと、悲しかったこと、無意識下に格納されていた記憶と感情、その全てが意識上にブチ撒けられた。

不思議と混乱はしていない。

膨大な情報量であるはずだが、しかしそのひとつひとつに整理タグを付与して整頓することができている。

自分が学んできた栄養学は肉体を構築するための栄養素についての学問だったが、今までの経験やそれに対する感情が、自分の精神を構築していたのだということに気が付いた。

自分にとって何が大切なのか。

自分は何が好きなのか。

自分は何のために生きているのか。

それが分かった気がした。

そして。

 

「ルゥアアアアアアァーメェェェェーンッッッ!!!!」

 

メラーンが奇声を発すると同時に黒い光は消失した。

肩で荒い息をしながら俯いている。

あまりの光景に周囲の人々は絶句して見守ることしかできない。

と、ふいにメラーンが顔を上げた。

 

「ハイそこぉぉーッ!!!」

 

突然通行人のひとりをビシッと指名した。

人差し指を突きつけられた男性がビクッと全身を硬直させる。

 

「好きな食べ物はッ!?」

 

「や・・・焼きそbァァァーッ!!ラーメンです!ラーメンが大好きだぁー!!」

 

気付けば男性の胸に7本の割り箸が刺さっている。

メラーンが投擲したものらしい。

周囲に動揺が走る。

栄養学を極めると言うことは、人体の経絡秘孔についてもマスターするということなのだろうか。

 

「愛拉麺の秘孔を突いたわ!貴方はもう、ラっている(ラーメンしか愛せない状態になっている)」

 

メラーンを取り囲むように出来ていた野次馬の人垣がワッと崩れた。

人々が一斉に逃げ出そうとしているのだ。

しかし今のメラーンから逃げ出すことはできない。

次々と愛拉麺の秘孔に割り箸が刺さっていく。

 

「空ゥゥゥ前ッ絶後のォォォー!超絶怒涛のラーメンマニア!」

「ラーメンを愛し!ラーメンに愛された男ォォーッ!!」

「醤油、味噌、豚骨、すーべてぇの拉麺の生みの親ァァァー!!」

 

ラーメン愛に目覚めた、いや、強制的に目覚めさせられた人々の絶叫が響き渡る。

阿鼻叫喚のラーメン地獄。

何が地獄かと言えば、この場にラーメンが無いことだった。

彼らはラーメンを求め当ても無く彷徨うラーメン難民。

 

「さぁ!どんどんラって(ラーメンしか愛せなくなって)しまいなさい!」

 

「待て!そこまでだ!」

 

手当たり次第に割り箸を投げるメラーンを制したのは、なんとパラだった。

飛来する割り箸をその剣で斬って落とす。

 

「確かにラーメンは美味しい。でも、それは人に強制されるものじゃない!」

 

なんのスイッチが入ったのかよく分からないが、完全に勇者モードである。

覚醒メラーン、いや、覚醒と言う次元を超えているかも知れない。

覚醒を超えた超転生メラーンが放つプレッシャーはもはやラスボスレベルであるが、パラは動じていない。

彼なりの秘策があるようだ。

 

「ふふふ・・・勇者のぼくがこれを食べたら、どうなると思う?」

 

パラの手中にあるのは、OBBだった。

これを食べて一気にレベルアップを図ろうというのである。

 

「させるかッ!!」

 

メラーンが割り箸を放つ。

 

「無駄だ!」

 

パラが剣の鞘で打ち落とす。

ノリノリである

バサッとマントを翻し、OBBを口に放り込んだ。

 

ピレパラアアアアアァァァーーーーーッス!!!!」

 

謎の奇声と黄金の光をその口から吐きながら、パラはレベルアップした。

 

てれれれっ てってってー♪

 

光が収まると同時に、パラは剣を鞘に収めた。

実に美しい所作だった。

流れるような見事な動きで、その場に、正座した。

 

「・・・全てが、視える・・・」

 

パラが手にした能力は透視だった。

決して戦闘向きでは無いが、パラは満足していた。

満開の桜が風に吹かれて花弁を散らす、そんな花吹雪の風流を愛でる吟遊詩人のような穏やかな表情と鼻血。

ピントの微調整で服だけを透過できた。

この場には男性客も多く居るが、見たくない物は見ないという歪んだ情報処理能力も備わっているらしい。

 

「ねぇ、どうするのこれ」

 

超展開についていけない、と言うかむしろついていきたくないルビネルがタオナンに尋ねる。

 

「あはは・・・まさかこんなことになるなんて・・・」

 

タオナンにとっても予想外のことだった。

冷や汗を流す以外にできることが何も無い。

 

「恐らくあと数分で特殊効果は消失するだろう。もちろん肉体の回復効果は消失しないはずだ」

 

テイチョスが冷静に言った。

そう、OBBによる各種の奇跡は、ほんの数分だけのものである。

言ってみれば「強い副作用のある超回復剤」のような物なのだ。

それにしてもメラーンの豹変ぶりには解せないものがあるが。

 

「私を止めるんじゃなかったの!?小さな勇者さん!」

 

突然その場で正座し、鼻からの流血を開始するとともに戦闘を終了したパラに対して罵声を浴びせるメラーン。

そして勢い良く割り箸を持った手を振りかざした。

 

「潔くラって(ラーメンしか愛せなくなって)しまえ!!!」

 

しかしパラに割り箸が投擲されることは無かった。

天高く割り箸をかざしたまま、目をパチパチとさせるメラーン。

 

「あ・・・あれ?私は・・・一体・・・?」

 

OBBに付与された特殊効果が消失したようだ。

状況が把握できずに混乱していたメラーンだったが、周囲の状況を見てすぐに動いた。

ラって(ラーメンしか愛せなくなって)いる人たちから次々と割り箸を抜いていく。

 

「私の場合は、恐らく呪いとOBBの効果が競合してしまったのだと思うわ」

 

騒ぎがひと段落したあと、メラーンが話してくれた。

自分自身にはとある呪いが掛けられており、今まで様々な解呪法を試したが、結局のところ全て不首尾に終わったこと。

OBBが回復するのは肉体のみであり、呪いの効果は消えていないであろうこと。

肩こりは楽になったこと。

 

「そうだな。ワタシの見立てでも、OBBには状態異常を改善する効果は無いよ」

 

話を聞いていたテイチョスも同意する。

そして、タオナンが想定していたような、発現する特殊効果をコントロールすることも難しいだろうと付け加えた。

つまりOBBは、不完全料理と言える。

その美味さだけでは帳消しにできないほど大きな副作用をもたらすからだ。

もちろん回復という効果も得られるが、しかし肉体の回復だけが目的であれば、わざわざOBBとして摂取せずともライフル卵だけを食べれば良い。

 

「そっか・・・まだまだだね、アタシ」

 

しょんぼりと俯くタオナン。

その肩にそっと手を置いたのはルビネルだった。

 

「こんなに美味しいのに、ねぇ?」

 

ルビネルの手には空の皿が乗っていた。

いつの間に?

一体いくつ食べたのか?

どうやらすでに特殊効果発動の発光は終えているようである。

目が据わっている。

妖艶な瞳を赤く怪しく光らせて、タオナンだけを見詰めている。

そしてペロリと唇を舐めた。

 

「よいしょ、っと」

 

「え、うわっ!」

 

ごく自然な動作でタオナンに寄り添ったルビネルは、タオナンの首の後ろと膝の裏に腕を回してひょいと抱き上げた。

お姫様だっこの状態である。

 

「あ、あの・・・ルビネル、さん?」

 

なぜ自分がこんな体勢になっているのか状況が飲み込めないタオナンだったが、ルビネルの瞳に見つめられると抵抗できなかった。

体の力が抜けてしまう。

どんな能力を開眼したというのか。

ルビネルはタオナンを抱えたまま平行移動を開始した。

いつの間にか靴底にペンが仕込まれている。

アトマイザーから噴出された緑黄色の霧が呪詛の発動を可能にしていた。

小さくなっていくルビネルの背を目で追跡し、行く先が宿泊している宿屋の方向だと確認したテイチョスは、追わなくても大丈夫だろうと判断した。

 

「まぁ、これ以上OBBを作るのはやめることね」

 

メラーンにそう言われ、テイチョスも頷いて同意した。

どんなに美味であっても、制御できない大きな副作用があるのでは料理として未完成だ。

 

「視えなくなったッ!?なぜだぁーッ!!!」

 

どうやらパラの透視能力が消え失せたらしい。

石畳の上に正座していたことが祟り痺れてしまった足をプルプルと震わせながら嘆いている。

そして産まれたての小鹿のような歩みで屋台に近付いてきた。

 

「テイチョスさん、OBBは!?OBBをください!」

 

「残念だが少年、もう残ってはいない」

 

本当はまだ十数個の球体が鉄板の上に残されていたが、しかしこれもすぐに破棄するつもりだったテイチョス。

だがパラの執念はテイチョスの計算を超えた。

 

「見ィィィつけたぁぁぁぁー(☆Д☆)ーッ!!!」

 

さっきまでのプルプル脚が嘘のように超スピードで鉄板上のOBBを目指すパラ。

特に止めることもしないテイチョス。

何が起こったとしても害は無いはずだし、別に害があっても構わない。

 

「おまわりさん、ぼくを逮捕してください」

 

発光が終わった後のパラは泣きながら懺悔した。 

聞くに堪えない暴露が始まった。

攫われてしまった姫を助けるために勇者として冒険の旅に出るための支度金を王様から貰ったのに、それをエロ本購入に充ててしまい所持金が無くなったこと。

その本のタイトルが『わがままロリータ』であること。

冒険の仲間を探すときの条件で、ふざけて適当な冗談を言ったら偶然にもそっくりそのままな人が居たこと。

ヘソで茶を沸かせるけど実はそれはエルフの力でもなんでも無いこと。

ノリで勇者になったけど魔王の居場所(姫の居場所)もよく分からなかったこと。

入手した賢者の石板で姫の居場所より先にエロ画像を見てしまったこと。

どちらかと言えばロリータ趣味だったのに最近は年上もアリだと思っていること。

誰得なのか。

 

その後、テイチョスとタオナンは、キスビットへ帰った。

もちろん途中までルビネルも一緒だ。

カルマポリスまで送らねばならない。

ちなみにパラはライスランドのレカー城塞都市警察により、グランピレパに強制送還されたと言う。

 

「じゃあね、タオナン」

 

「ルビネルさん、お元気で・・・」

 

船を降りたルビネルは、少しだけ罪悪感を持っていた。

別れ際のタオナンの表情、視線、態度。

 

「まぁ、予感はあったけど・・・あんなに懐かれるなんてね」

 

ふふっと笑う。

今はまだ一人に決めるより、色んな娘で遊びたいルビネルだった。

 

それからしばらく。

 

「ちょっとアンタ!ふざけてンならとっとと帰って!」

 

タオナンの怒声が響く店内。

サッと静かになる客たち。

皆が耳をそばだてている。

 

「そんなこと言うなよタオナン、俺は本気なんだ。な?」

 

怒鳴られてもへこたれず、なおもアプローチを続ける男。

手には花束を持っている。

 

「ココは食事をする場所よ!?注文しないんなら、帰った帰った!」

 

タオナンとテイチョスの店『ベル・エキップ』には、今日もタオナン目当ての優男が求愛にやってきていた。

最近はその頻度が増しているようである。

テイチョスがこっそり排除しても後から後から湧いてくる男たち。

このドタバタを楽しみに来店する客も居るほどだ。

 

「これだから男なんて嫌いなんだ!もう!」

 

すがりつく男にひざ蹴りを食わせ、厨房に戻ってきたタオナン。

その姿に苦笑いを浮かべつつ、メインの皿に添えるソースの味見をするテイチョス。

しかしそのソースを掬い取った指は、テイチョスが自分で舐めるよりも先にタオナンの口に含まれた。

 

「ん!おっけー!さっすがアタシの助手ね!」

 

「ワタシの指まで喰われるかと思ったよ、シェフ」

 

軽口を叩きつつ、デザートを冷すための氷水をガブ飲みした。

急速に高まる内部機構の温度を、冷まさねばならないからだ。

二人の距離は、変わらない。

 

 

~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

おーわーりーまーしーたー!

お借りしているキャラクターの皆さんは、私が独断で動かしている部分が大きいので、生みの親御様方におかれましては「ウチの子はこんなことする子じゃありませんことよ!」とか思われていらっしゃるかも知れません。ごめんなさい。

読者の皆様におかれましても、私の悪ふざけを鵜呑みにせず、本家様でも活躍を以ってしっかりと記憶の上書きをお願い致します。