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『かなり』

私が感じる「かなり」なことを徒然に。

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『カード』

俺はなぜ、あんな力を手に入れてしまったのか。

そしてなぜ、その力に溺れてしまったのか・・・。

 

 

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あの日はいつもより仕事が遅くなり、最寄駅の終電はとっくに去っていた。

かと言ってタクシー代の領収証を申請するような度胸も無いし、仮に出したって経理に突き返されるのが落ちだろう。

俺は深くため息をついて椅子から立ち上がり、歩く決心をした。

三駅ほどの距離を歩けば、まだ動いている路線に辿り着ける。

しかしそれもギリギリだ。

急がなければ。

 

いつもより少し早く過ぎ去る地面に、キラリと光るものをみつけた。

プラスティック製のカードだった。

 

「potential card・・・なんだこれ」

 

ポテンシャル、潜在能力・・・?

 

何気なくカードの表面の文字を指でなぞった瞬間。

 

形容し難い違和感に襲われた。

地面が揺れているような、空間が歪むような、高熱にうなされるような。

 

気付けば目の前に「何か」が居た。

それは俺に向かって言った。

 

「そのカードは、運を自由に使えるカードだ」

 

何を言っているのか意味が分からない。

 

「欲しいか?」

 

正体のわからないものを何で欲しがるもんか。

 

「運を、自由に使いたくはないか?」

 

 

 

気が付くと終電の時間は過ぎていた。

俺の手には、例のカードが在った。

裏面には「1000」という数字が印字されている。

 

「へっ・・・、何だよ、運って・・・」

 

恐怖感のようなものも、胸の内には確かに在った。

期待感も、少しは在ったかも知れない。

 

「今のこの状況、どうにかしてみろよ」

 

吐き捨てるように、俺はカードに向かって呟いた。

どうかしてるな、と自嘲気味に口を歪めるのと同時に、車のヘッドライトが俺を照らした。

 

「なんでお前、車なんかで?」

「事務所にスマホ忘れちまってよ、狙ってる子からLINE来てたらヤバいじゃん」

「そりゃ大変なこったな。でもお前、鍵持って無いだろ?」

「そうなんだよ。事務所に行ったは良いけど入れなくてさ」

「じゃあ交渉だ。俺は事務所を開けてやれる。お前は俺を家まで送れる」

 

鍵をチラつかせながら言う俺に奴は苦笑しながらも、条件を飲んだ。

俺は無事に家に帰ることができた。

 

カードの裏面の数字は「980」になっていた。

 

あれから色々と試した。

自動販売機で当たりを出すのは「1」

合コンで好みの子と出会うのは「60」

パチンコで連チャンするのは「80」

それから、1日に「3」ずつ数字が増えることも分かった。

 

分からないこともある。

特に何もしていないのに、気付いたら数字が減っていることがあった。

規則性は無く、「5」経る時もあれば「10」減ることもあった。

しかし増えるときは必ず「3」だった。

 

気付けばいつしかカードの数字は「522」になっていた。

 

良く分からない理由で数字が減らされるのは癪だった。

俺は端数の「22」だけ残して、宝くじを買った。

 

当選の発表を待つまでもなかった。

「500」の運を使った効果がどのくらいの金額なのかが分からなかったが、絶対に当たることは確かなのだ。

 

宝くじ売り場の前で、何気なくカードの数字を確かめる。

 

「22」

 

「0」

 

「えっ・・・?」

 

数字の変化はいつも、気付いたら変わっている感じだった。

目の前で書き変わるのを見たのは初めてだ。

 

次の瞬間、俺の体は宙に舞った。

 

 

ガス爆発があったそうだ。

どうにか一命は取りとめたものの、ベッドの上で指一本動かすことはできない。

俺は残りの「22」で命を拾ったのか?

 

今、カードがどうなっているのか、自分で確認することもできない。

 

毎日「3」ずつ、きっちり溜まっていてくれれば、いつか奇蹟的に全快という使い方もできるはずだ。

今の俺にはそれだけが唯一の希望だった。

 

俺はなぜ、あんな力を手に入れてしまったのか。

そしてなぜ、その力に溺れてしまったのか・・・。

 

毎日「3」ずつしか増えないなら、その範囲内で使っていれば良かったのに。

分不相応な使い方、冷静に考えれば破滅が見えていた使い方。

今度もし、あのカードをくれた「何か」に会うことがあったら言ってやろう。

 

「俺の領分に合った数しか使えないカードをくれ」と。

 

 

 

 

お題その1「VISAデビットをブログで宣伝コンテスト」