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『かなり』

私が感じる「かなり」なことを徒然に。

新人の女の子を、好きなゲームキャラクターだと思い込むことで乗り切ろうと企む

桐谷さん

「どうも、坂津です」

 

「はい!霧雨と申します!よろしくお願いします!」

 

「・・・えっと、今日から研修がスタートするわけですが、もう社会人経験がおありのようですので、社会人基礎研修は割愛しますね」

 

「はい!お願いします!」

 

なんだ、良い感じの娘じゃないか。

 

しかし小さいな。150cm無いくらいかな?

 

まぁ、営業に必要なのは元気とやる気だ。

この娘なら大丈夫かな。

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・・・

 

「社長、その新入社員の子は私の部署に配属というわけでは無いんですよね?」

 

「そうだよ」

 

「私は一体、何の研修をすれば良いのでしょうか?」

 

「霧雨君には我社初の女性営業マンになってもらおうと思っとる」

 

「と、おっしゃいますと、営業マンとしての研修を、私が・・・?」

 

「営業ウーマンだな」

 

(さっき自分で営業マンっつったろうがよダボがぁぁぁぁぁぁ!!!!)

「おっしゃる通り、営業ウーマンですね。それで、営業スキルの研修を私が?」

 

「そうだよ。坂津君ならできるだろ」

 

「いや、私は事務職ですので営業的なことはあまり・・・」

 

「大丈夫大丈夫。霧雨さん、坂津君に似てるところあるし」

 

(似てたら何じゃボケ意味分からんぞハゲぇぇぇぇぇぇ!!!!)

「そうですか。ではまず、出来る限り我社の取扱商品の知識を・・・」

 

「いいよそんなの。そういうのはやってりゃ勝手に覚えるから」

 

(なぁんじゃそりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!)

「・・・では、私はどんな研修を?」

 

「なんか、仕事が楽しくなるように洗脳しといて」

 

(ああああああああああああああああああああああああああ!)

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・・・

 

 

 

「というわけで、霧雨さんには立派な営業ウーマンに・・・」

 

「ちょっと待ってください、私、営業なんですか?」

 

「えっ?」

 

「あの、面接では簡単なルート配送って聞いていたんですけど・・・」

 

「ごめん、ちょっと待っててくれるかな?」

 

 

『・・・もしもし、お疲れ様です坂津です』

 

【ん?なに?】

 

『社長、例の霧雨さんですが、営業職への配属を本人が知らないような口ぶりなのでちょっと気になり、確認の連絡をと思いまして・・・』

 

【うん、言ってないからね】

 

『(んぶっ!!!)え、あの、営業マンにするんですよね?』

 

【営業ウーマンね】

 

『(そのくだりはもうええわ!!!)しかし本人には話していない、と・・・』

 

【良い感じに伝えといてくれる?ブツッ・・・】

 

『ッ!?』

 

 

 「・・・霧雨さん」

 

「はい?」

 

「貴女のやる気スイッチはどこにありますか?」

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・・・

 

疲れました。

もうね、三次元の女性が目の前に居るってのに、大丈夫でしたよ。

そんなことよりも重大な事案が発生していると、自分の苦手意識とかそんなのどうでもよくなりますね。

 

そして目の前の霧雨さんが可哀相で仕方ない気持ちになるんです。

 

中途とは言え入社初日にいきなり配属先が変更されてて、しかも担当課でも何でもない人間から研修を受けさせられるなんて。

 

とにかく不安感だけは持たれないように、彼女のモチベーションが上がるポイントを探りつつ、それを仕事に織り交ぜて会話を進めようと努力しました。

 

・・・

 

「ところで霧雨さん、趣味は?休日は何やってるの?」

 

「ゴルフですかね」

 

「そっかー(私の守備範囲を大きく逸脱しているな・・・)」

 

「坂津さんは、休日は何をされていらっしゃるんですか?」

 

「色々してるね。私は広く浅く人間なんで、継続的に何かをってことはあまりないかな」

 

「そうなんですか。最近のマイブームとかは?」

 

「(なんだかこっちがヒアリングされてるぞ)そうだね、ゲームセンターCXを初回から見直してるかな。先週ようやくマイティボンジャックの回が終わったよ」

 

「そ、そうですか」

 

「(しまった!)あ、分からないよね、ごめんごめん」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

・・・

 

世代、性別、立場、価値観、趣味、種族、違うものが多過ぎて、私の心から「ポキン」と音が聞こえました。

 

もう取り繕えない。

 

全てを正直に話そう。

 

そう思い、私は霧雨さんに順を追って説明し始めました。

 

私が過去に勤めていた会社のこと、辞めた理由、今の会社に入ったばかりの頃のこと、今の立場になるまでのこと、しんどいけど面白いと思える仕事ができていること、そんな私に社長が命じたこと、霧雨さんに是非とも営業ウーマンとして頑張って欲しいということ、無茶苦茶な社長だけど人を見る目だけは確かだということ、でもあまり負担に思わず楽しんで欲しいということ。

 

「というわけで、君には期待をしているんだけど、それはこちらの勝手な都合なので、まずは霧雨さん自身が仕事に楽しみを見出せるようになって欲しいんだ」

 

私は言えるだけのことを言ったつもりです。

 

本当なら四の五の言わずにやれ的な指導の方が良いのかもしれません。

しかし私にそんなことが出来ないのは社長も承知のはず。

さぁ、吉と出るか凶と出るか・・・

 

霧雨さんはそっと私の顔から視線をそらしました。

 

そして。

 

 

「あ、定時なんで帰っていいですか?保育園に子供迎えに行くんですよ」

 

(あぁ、時計を見たのか)

「え、あれ?お子さんが居るの?」

 

「はい。来月ようやく1歳です」

 

「そっか。じゃあ、残業とか絶対無理だよね」

 

「そうですね」

 

「うん、分かった。早くお帰り」

 

「おつかれさまでーす」

 

 

彼女のキャラが初対面の頃と変わってきたのは、きっと素が出てきたのでしょう。

 

 

社長、育児中の女性に営業はキツイですよ。

あー、どうしよう。。。