読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『かなり』

私が感じる「かなり」なことを徒然に。

『彼女の疑問』

ショート駄文

彼女との待ち合わせ。

待つこと2時間。

タバコが1箱無くなった。

おなかもすいた。

 

携帯繋がらず。

メールの返事無し。

 

今日こそ!今日こそは彼女にビシッと言ってやる!

 

そう心に誓った時、走ってくる彼女が見えた。

 

「ごめーん!待った?突然宇宙人にさらわれそーになって!」

 

「嘘つけ!」

 

言い訳ならもっとマシな嘘つけよ・・・と思いながら突っ込む。

すると彼女。

 

「それ!前から気になってたんだけどさ、『嘘つけ』ってさ、命令?嘘をつきなさいってこと?おかしくない?だって今のタイミングなら普通『嘘つくな』って言うでしょ?」

 

むぅ・・・確かに・・・。

嘘をつくな、という意味を込めた上で、嘘をつけと言う。

言葉が真反対だ。

彼女は真剣に考え込んでいる。

何か答えを出してやらないと、という気になってくる。

 

「あのさ、ほら、あれじゃない?言葉ってどんどん省略されていくじゃんか。電話出るときの『もしもし』だって『申し上げる申し上げる』が省略されたものらしいし。だから『嘘つけ』ってのもさ、前部分に『どうせつくならもっとマシな』ってのが昔はあったんじゃないかな?」

 

即興にしては我ながら上手いことを言った。

彼女は少し考る。

そして。

 

「それだね!絶対それだよ!君はすごいなぁ!私の疑問にいつも答えてくれる。素敵!大好き!」

 

これが彼女のいつものパターンなんだが、毎回それに流される俺も俺か・・・。

だってあんなにキラキラと目を輝かせて誉めてくれるんだから、もう怒りなんて無くなっちゃうよな。

 

「さて、俺はもうお腹と背中がくっつきそうなんだけど、飯行く前にATM寄るね。手持ち無かった」

 

すると彼女、ちょっと不機嫌そうに

 

「なんで私が来る前に行っとかなかったの?」

 

いや、そんなこと言われても・・・ここに来てから気付いたし・・・

 

「お前がいつ来るかわかんなかったからさぁ」

「だったらメールでもしてくれとけば入れ違いにもならないじゃない」

 

確かにそうだ。

 

「ごめん、気が付かなかったよ」

 

俺が素直に謝ると彼女はにっこり微笑んだ。

 

「肝心なところで抜けてるんだから。ふふふ」

 

なんか理不尽な気もするがこの笑顔には勝てない。

すっかり彼女のペースにハマり、イライラも無くなった俺は彼女を連れて銀行へ。

ATMがかなり混んでたから窓口の方に行った矢先、男の怒鳴り声が響いた。

 

「全員床に伏せろ!一言もしゃべるなよ!動いた奴は撃つからな!」

 

銀行強盗だ!

ヤバいヤバいヤバい・・・とりあえずキョトン顔の彼女を引っ張りながら床に伏せる。

 

こーゆー場合は大人しく言うことを聞いておくもんだ。

強盗は銃を向けながら窓口の女性に怒鳴る。

 

「おらぁ!そこの女!このカバンに詰めれるだけ金詰めろ!妙なマネしやがったらぶっ殺すからな!」

 

窓口の女性は怯えながら震える手でカバンに札束を入れている。

そうそう、逆らわず逆らわず。

ひとまず穏便に済ませてから、後は警察に任せよう。

と思ってチラリと彼女を見ると・・・

 

立ってるーッ!!

 

てか、強盗に向かって歩いてるーッ!!

 

そして彼女は強盗に言い放った。

 

「それ!その『ぶっ殺す』の『ぶ』ってなんだろうね?ただ『殺す』だけで良くない?」

 

ああああ!なにやってんだよマイハニー!

俺はどうしたらいい!?

何ができる!?

教えて神様!

 

「それは、あの、あれだねぇ・・・」

 

俺は震える膝を懸命に抑えながら立ち上がり彼女に言う。

 

「単に『殺す』って言うよりもさ、迫力があるというか、その、強調されるというか、あの、ほら、あれだよあれ・・・」

 

いつものデタラメが出来ない。

 

当然だよな、こんな状況だもんな・・・俺、ここで撃たれて死ぬのかな・・・。

 

すると強盗

 

「なんだお前ぇら!グダグダ言ってんじゃねぇ!大人しく伏せてねぇと鉛弾ブチ込むぞ!」

 

ああ、そうですよね・・・貴方のお仕事は強盗なわけですから、邪魔するやつは皆殺しですよね・・・

 

「それ!その『ブチ込む』の『ブチ』も『ぶっ殺す』の『ぶ』と同じ!?」

 

やめれーッ!!

 

ビシッと強盗に人差し指を突き付ける彼女の肩を掴んで体を入れ替えながら、俺は強盗と彼女の間に入るような位置取りをする。

 

「うん!同じだね!」

 

俺は必死にしゃべった。

俺がうるさくしていれば強盗は彼女ではなく俺を殺すだろう。

そして彼女も俺が殺されれば、さすがに大人しくなるはずだ。

俺は彼女を守る為にマシンガンのようにしゃべる。

 

 

「それは『ぶ』の活用だね!『ブチ』の他にも『ぶん』もあるね!『ぶん取る』とか『ぶん回す』とかね!とんこつラーメンの麺の固さにも『バリカタ』ってあるよね!あの『バリ』も同じだね!共通点は『ば行』ってことじゃないかな?Bから始まるじゃん!俺が思うに、この『ぶ』ってのはさ、色んな動詞を暴力的にする働きのある副詞じゃないかな!元々は『暴力的に殺す』が時を経て、更に経て、経~て!『ぶっ殺す』になったんだよ!だからもしかしたら一時期は『ぼっ殺す』って言ってた時代もあったかもしれないね!」

 

 

息継ぎも忘れて俺は『ぶ』についてデタラメを言い続けた。

強盗も頷きながら聞いてくれた。

俺の必死な演説により警察が踏み込むまでの時間が稼げ、強盗も素直に捕まった。

 

俺は彼女と、ここにいる人たちを守ったんだ!

 

安心と感動で目頭が熱くなっている俺に彼女が言う。

 

「ねぇ、『暴力的に』が『ぶ』って、ちょっと強引すぎない?」

 

「俺もそう思うけど、結果的に俺たち無事だったんだし、良かったじゃん」

 

しかし彼女はくるっとそっぽを向いた。

 

「納得できる答えをくれない君は嫌い!」

 

そしてツカツカと行ってしまった。

 

え、え~・・・

 

誰か『ぶ』の意味を教えてくれ!